凡人の雑記① [曲][挿絵]
■Friends/Gandharva
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オリジナルの劇中曲をUPしています。良かったら聴いてください。
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音楽なんて所詮、どれだけ本気でやっていようが、金にならなければただのお遊びだ。
斜に構えてかっこつけた奴が嫌いだった。「俺はそういう奴らとは違うんだ」と言い聞かせ、わかったふりをして音楽に縋り付いていた。結局自分自身も斜に構えたかっこつけだった。
歳を取る度、感覚ばかりが肥えて本当に嫌になる。良いものと悪いものの判別は昔よりつくようになったが、自分自身が「良いもの」になれたかといえば、全くそんなことはないからだ。
浅くて軽薄でチャラチャラしていて、そのくせ実力もないのに講釈を垂れるような音楽は、若い頃から嫌いだった。でもそれを超えるだけの求心力を自分が持てたのかといえば、とてもじゃないが無理だろう。少し前まではそれさえ「凡人には理解できない深い趣向」だなんて誇らしくすら思っていた。
自分の経験や感性がどれほど矮小なのか、歳を重ねる毎に段々と自覚してきてしまったのだ。今では「こんなはずじゃなかった」と日々思いながらその日暮らしをする、ただの社会の底辺だが、「成り下がった」のではなく、元からその程度の人材であったことに、やっと気付けただけなのだろう。
歳を取るのが嫌なのはそれだけではない。世間では次々と若い才能人たちが名を馳せてゆく。所謂「毒親」と言うんだろうが、自分と同年代の有名人を引き合いに出され「この子はこんなに頑張っているのにお前ときたら」なんて身内にチクチク言われる度、子どもの頃に誰もが持っているような全能感や「特別な自分」の魔法は、忽ち解けてしまった。
割と早熟な子どもだったので、小さい頃はある程度秀才側に居られた。だが早熟なだけで人より才能があったわけでもなく、さりとて努力家でもなかったので、誰もがすぐに俺を追い抜いていった。
それでも若さを盾に「俺はまだ成長途中なんだ」と、根拠のないプライドだけは捨てることができなかった。そしてそのプライドは音楽へ打ち込むことで宥めることができたが、やがてモラトリアムが終わった頃、果たしてどれだけ人を驚かせることのできるスキルになったのか。
いわずもがな、大したことなかったからこそ、こうして底辺の生活を送っているわけだ。地に足をつけて手に職つけるわけでもなく、いい歳をしてまだ色気を出そうとしている。
だがなまじ考えることはできるので、それが無謀だともわかっている。だから何か行動を起こそうともしない。どんな生き方を選ぶにしても、今の自分が正しくないことをしているのは明らかだった。
*
ある日、何となく出先の暇な時間に本屋へ立ち寄った。とくに用があるわけでもなかった。マンガは昔好きだったが、もう暫く何も読んでいないから、いまの流行りもよくわからない。文学なんて心の底から興味もないし、週刊誌のゴシップなんて尚更どうでもいい。
まるで消去法のように、俺は音楽雑誌のコーナーに立ち止まった。しかし本気で音楽に打ち込んでいた頃も、メディアへ頻りに出てくるようなものは毛嫌いしていたので、こういった雑誌もそこまで熱心に読んだことはない。
ふと目に留まった邦楽系の雑誌を手にとった。表紙には自分よりいくつか年下の人気ガールズバンドが載っていた。この手のジャンルではかなり人気のバンドだったので予々名前は知っていたが、とうとうワンマンで数万人規模の彩京ニューアリーナまで埋められるほどになったらしい。
最近リリースされた新譜情報と、そのライブのレポートやら何やらがつらつらと書かれている。
彼女たちはかなり早咲きで、中高生の頃から既に全国規模の人気を得ていたほどのカリスマだった。自分が音楽に興味をもって楽器なんぞに手を出し始めたのも、ちょうど彼女たちが世に出てきた頃だったから、よく覚えている。
というよりは、「大して実力もないくせに、見て呉れが良いからって簡単に成功しやがって」と嫉妬心剥き出しで、作品をよく聴きもせずに食わず嫌いしていた。
周囲で彼女たちのコピーバンドをよく目にしたが、悉く下手だったために、余計にそういうイメージになってしまっていたのかもしれない。後で思い至って作品をちゃんと聴いてみたところ、意外と良い曲だなと思ってしまった(というよりは夢敗れてからマニアックな音楽はほとほと食傷気味だったのもある)。
帰宅後、ネットで彼女たちのことを今一度調べてみた。その原動力は単純な暇つぶしと、曲も良かったのでかつて自分の食わず嫌いで知ろうとしなかったことを勿体無く感じてしまったのが大きいが、ぶっちゃけやっぱりメンバーが皆可愛かったので興味が湧いた部分もある。
アイドルなんて昔は死ぬほど嫌いだったが、如何せんこの業界、ルックスの良さは商業的には必須の要素なのだろう。
もし彼女たちの見た目がイマイチだったなら、それほど興味はそそられなかったかもしれない。俺の音楽への熱なんて所詮こんなものか、と自分で自分が嫌になる。
それから俺は食い入るように彼女たちのことを調べていた。眉唾なことも多いだろうが、ネットを探せばあらゆる情報が手に入る。便利な時代だ。とくに彼女たち自身も一部ネットで話題になったところから人気に火が点いた経緯があったし、自らブログなどでデビュー前から情報発信をよくしていた。今や当たり前に行われている広報活動だが、先見の明もあったのかもしれない。
羨望と知的好奇心と、それから可愛いもの見たさという不純な動機で、俺はアーティスト活動の変遷だけでなく、彼女たちの人となりもわかるようなエピソードを探しに、情報の海へと潜るのだった。




