マリとマリン 2in1 お買い物は続く
よろしくお願いします
「翔のヒトデナシ」
茉琳が大勢の人がいる中で声を上げている。床にしゃがみ込んで、側にいる友人の日向翔を怒っている。
「ポンポコたぬきさんなんて、酷いこと言うなしー」
「事実、そうじゃないか。。茉琳が自分で見せてきたんだよ。ボッコリお腹」
翔の指摘に茉琳は顔を真っ赤にして、シオシオッと体を縮こませてしまう。
「わざとじゃないなし。あれは翔に言われて、気が動転してしまったなりよ」
服の上から、自分の腹を手で押さえて言い訳がましく,茉琳は口籠る。
「翔が段々腹なんていうなしから」
「それだって、茉琳がフライドチキンを食べすぎた所為なんでしよ」
2人が言い合いをしているのは,翔の下宿先の近くにあるスーパーノベリスタの食品売り場。
彼が食材の買いものに出かけた折に、茉琳が無理やり押しかけた。そこでの会話の中で自分のスタイルを自慢しようと翔にお腹を触らせてしまう。
ところが茉琳自身、誤解をして間違った食べ方をしたため、ぜい肉がお腹についてしまった。それを彼に指摘されて困惑してしまっている次第。
「でもぅ、どうしたらいいなりか? 食べるのを止めるのはダメならどうするなし」
「ちょっと待ってて」
翔は、スマホのブラウザを開き、ポチポチと入力をして検索を始めた。
「茉琳は,鳥肉が好きなんでしょ?」
「せや」
「なら、その線で行こうよ」
「でも、翔。鳥さんはあかんって言ってたナシ」
「違うよ。油で揚げたフライドチキンのカロリーが高いってだけ。鳥肉の料理は,それだけじゃないよ」
「でも、ウチ、料理なんて,ようしませんさかい。コンビニで済ませたんねん。どないするねん」
「………この、お嬢様め」
茉琳は、以前、自分のことを何処ぞのお嬢様と言ったことがある。
「なんか言いや?」
「べっ、別にぃ。空耳でしょ。兎に角、お湯ぐらい沸かせるよね」
「せやな」
「レタスとか千切って洗うくらいもどう」
「そや」
「レンジもチンできるよね」
「翔! ウチをアホゥっや思うてる? そんくらい、当たり前や」
「ハハっ、それなら、ちょっと一緒に来て」
翔は、茶化されて不服そうな茉琳を連れて鶏肉がが置かれているコーナーへ移る。
そこには鶏のむね肉、もも肉、ササミがブロックとか、唐揚げ用や鍋料理に使いやすいように一口サイズに切られていたり、手羽先もパックされている。その中で加工肉が置かれるところから一品を取り上げる。
「翔、これは何なん?」
「サラダチキン。肉に火も通っているし、下味もついてる。このままでもいいんだけど、解して千切ったレタスの上に乗せてドレッシングをかけて簡単サラダとか」
「そればかりじゃ、飽きへんか?」
「茉琳、棒棒鶏って知ってるでしょ」
「結構、好きやで」
「きゅうりを千切りにして、サラダチキンを乗せて、その上からゴマだれをかけるんだ。タレも、ここで買えばいいし、ごま油に醤油と砂糖を混ぜてかけてもいいんだよ」
「ウチ、包丁、よう使えんわ」
「えっ?」
「違っ。それぐらいならできるよ。バリエーションを増やせばいいんだね」
「そう、コチジャンをかけても良いんだって」
翔は、話に夢中になって茉琳の口調が変わっているのを気づかずいた。
茉琳の中にはもう1人、別の魂が入っている。名は茉莉。少し前まで翔のクラスメートだった。とある時から、茉琳と同じ体に同居することになってしまった。今は、その茉莉が翔の会話をしている。
「コチジャンなんて辛そう。マヨネーズじゃダメかな?」
「かけ過ぎなきゃいいんじゃない。ハーフとかもあるしね。他にもあるか、ネットで調べてみようよ」
「だね。ありがとう。翔くん」
「ん? 茉琳」
「しまった………なぁに、翔。何なり」
「喋りが?」
「ウチ,なんか言ったえ?」
茉琳は誤魔化すように翔に笑いかける。
「あれっ? ………別に何でもないかな」
そして、早速、サラダチキンをバスケットにそそくさと入れていく。
「ところでおかずは、これで良いなしね。でも、ご飯は? 止めた方がいいなり? パンの方がいいなしな。
「ご飯ねえ、確かニュースで、パンより米がいいって言ってたね」
「どうしてなり?」
「なんかね。パンて挽いた小麦を使っているでしょ。小麦の繊維が粉々になって良くないらしいよ。米だとそうじゃないから、腹持ちが良くて腸の奥まで栄養が届くし、お通じにもいいっ言ってたかな」
「昔は、お米は良くない。パンにしなさいって言われたような気がするえ」
「パンだって、栄養価は高いんだよ。ダイエットには少しだけ、ご飯がいいってぐらい。まあ、兎に角、食べ過ぎないことだね」
「そうなりな」
「それと、ダイエットには朝と昼はしっかり食べて、夜は控えめにするのがいいとものってる」
翔は、スマホの検索結果を追って茉琳に話を続けていく。
「何で? 夕飯を沢山食べるもんちゃう?」
「どれどれ。食べてから栄養が体に吸収するまで時間がかかるから」
「かかるから?」
「夜に食べたのは、吸収しきれずに中性脂肪になって体に溜まるって」
「そりゃ,いかんわぁ。早よ,やってみんと」
「俺も、調べるから色々とやってみようよ」
「はいなし! 絶対にみんなが、あこがれる理想のスタイルになってやるなり」
茉琳は鼻息荒く、拳を握りしめた。
「でもね。茉琳、食事だけじゃなくて運動もしないとダメだからね」
「えっ?」
「えっ、じゃないよ。体に溜まった脂肪を燃やさないとダメだよ。痩せないよ。それともまん丸子豚さんにでもなるか?」
「それは絶対嫌なりよ。頑張るなし」
「そうそう,その意気だよ」
しかし、茉琳の顔が曇り出す。
「でも、ウチ。いつ気を失うか分からないえ。運動って走るなりえ、最中に、そうなったら転んじゃうえ。どうしようなしー」
「うーん。仕方ない。朝早いのは辛いけど茉琳様にお付き合いさせて頂きますよ。それに走らなくても、ウォーキングって手もあるよ」
「そうなりか。嬉しいえ。これはなんかお返ししないといけないなり。キスでもいいなしか?」
茉琳は唇を窄めて翔に近づこうとする。
「茉琳、俺が過呼吸になるの知ってるくせに、そんな事しなくていいから」
しかし、翔は彼女の肩に手を置いて阻止する。
「そんな事って、酷いなり。ウチの溢れる気持ちを是非に伝えたいなしよ」
「兎に角,いいから。別の形にしてお願い」
「ヴうー、ウチの気持ちの行き先ガァ」
「頼むよ。それでお嬢様、この後、お時間ありますか?」
「ない!」
茉琳は即答する。元々、時間を持て余して翔の買い物に押しかけたのだ。
「どっか,いくえ?。もしかして、このままホテルなしか。そっ、それはウチも心の準備が」
「違うって、その線から離れて」
「じゃあ、何処なり?」
「スポーツ用品店」
「なして?」
「ネットで検索してたら、良さそうなの見つけたの。見に行こうよ」
「いいなり! なら、その後、ランチ奢るなり。それなら良いなしね」
「俺も昼飯代浮くから,それでいいよ。でもね………」
「でも、何なり?」
「フライドチキンは止めようね」
「もちのろんなし。中華のお店に行くなり。まず棒棒鶏の味見なしね。そんならいいえ」
「うん、そうしよう。じゃあ,さっそくレジを済ませて行こ」
「はいなり!」
2人は,茉琳のスリムアップに必要なドレッシングなんかを物色しつつレジへ向かった。
☆☆
「ねえ、翔。さっき言ってた、いい物って何なし?」
「トレッキングポールって言って、両手に持つ杖だよ。これなら転び辛いはずだよ」
「翔、優しい! 気遣ってくれてありがとうえ」
茉琳は再び、抱きつこうとする。翔はそれを押し留めようとする。側から見て戯れあっているようにしか見えなかった。
ありがとうございました