マリとマリン 2in1 お買い物
マリマリントイボックス2025-3-1
買い物
「お前も物好きだよな」
「えっ、なんかいったなし? 翔」
日曜日の午前中、翔は1週間分の食材を買うために近所のスーパーマーケットに向かった。側にはニコニコとした茉琳が側を歩いている。
「いやね、俺のスーパーの買い出しについてくるなんで酔狂だなって」
朝、窓の外に青空がみえ、車の走行音やら、小さい子たちの声が聞こえ出した頃、スマホから着信音が鳴り出した。画面をタップすると、
「おっはよぅ、翔。何してるなりい? 今日、どっかいくえ?』
スピーカーから茉琳の溌剌とした声が響いてきた。
「……お前なぁ。休日の朝からテンション高いのな。折角、まったりと過ごせる貴重な朝の時間帯に電話してくるなんて」
「そうなりな。学校の授業ないからのんびりできるしー。だからこそなり。有意義に過ごさないといけないなしな」
「俺は1週間分の食料の仕入れと普段の溜まりごとを捌かないといけなんだよ。時間が無いから切るよ」
「えー、それじゃつまんないっえ。どっか行こうなし、遊びに行こうなり』
「そういうのは、彼氏とか友達と行けば良いだろ。じゃあ…」
通話を切ろうとするとスピーカーから鼻を啜る音が溢れ,
「ヒーくんいないしー、友達いなくなったしー」
「あー、わかったから、泣かなくていいから、なっ」
「ぐすん、ありがと。翔のこと好きやしー」
「あーぁ、どういたしまして。て、いうか。食材の買い出しぐらいしか、外に出ないけどいいの』
茉琳は、しばらくの逡巡のあと、
「行くなり。どこに行くえ?」
「近くのノベリスタだけど」
「何時ぐらいにいくなり?」
「10時ぐらい」
「ラジャー。現地で………、ブツッ」
一方的に通話を切られて翔はスマホの画面をじっと見て絶句する。
支度を整えて、翔は最寄りのスーパーまで徒歩で行く。近隣で10店舗ほどを展開するスーパーノベリスタ。食材の豊富さと肉類の種類の多さで集客も多い。
見ると、そこの入り口に茉琳が立っていた。ブリーチして黄色に染めた髪は疲れたようによれ、染めのない地毛の部分のプリンも増えている。グレーのフリースのパーカーにパンツの装いに、足元はピンクのレジンサンダルを履いている。
「茉琳、頼むからその服の組み合わせで外に出るのは考えてくれるか」
「えーなんで、あったかくて楽なのに」
翔は慌てて、翔は茉琳に近づくと耳打ちする。彼女はくすぐったそうにそれを聞いていたのだが、
「えーそうなりぃ。じゃあ、ピンクでもえ」
「そっ、ピンクも」
「ゔー」
ヴーヴーと文句を垂れ流す茉琳を引き連れて翔はスーパーマーケットへ入っていく。バスケットを載せるショッピングカートは茉琳に押してもらった。
まず最初の生鮮野菜置き場から覗いて行った。途端に茉琳の野菜を見る目つきが鋭くなり獲物を捉える目になっている。
「県が違うと銘柄もちがうんだ」
「トマト、アスパラ、ブロッコリーなんかは、こっちの方が安いかな」
「キャベツが安すぎ、大根は半分でこんな値段なの」
「レタス、サニーレタス」
「あっ海外産、値段も安いや」
「ちょっと、ちょっと茉琳さんや」
茉琳はブツブツと呟きながら、選んだ野菜や果物をポイっと買い物籠へ入れていく。
「誰が食べる分買うの? なんかキャラもかわってるような」
翔は、あまりにも違う茉琳の態度に首を捻っている。
「えっ! あっ、しまった。……ごめんなっしー、もどすなりぃ」
「もう,いいよ。丁度買う予定だって。でも茉琳凄いね」
「何が?」
「野菜を見る目が鋭いし、猟師かと思ったよ、確かに良さそうな物を選んでる」
「見間違いだしー、そんな怖い顔できないよーだ」
2人でそんな話しをしながら、魚コーナーを抜けて肉のコーナーへ移動して行った。
コーナーの目玉になっているのがステーキや焼肉用のオープンショーケース。その中を見ながら、
「ねえ、翔。ココに書いてある'ハラミ' はどの部分なり?、字からすると内臓のお肉? ホルモンのひとつなしか?」
「それはねえ、横隔膜についている筋肉」
「筋肉!」
「そう、筋肉。赤いところは筋肉なんだ」
「じゃあ、白いところは?」
「それ、脂肪」
「じゃあ、この塩がついたみたいなのは」
「霜降りって言うんだよ。美味しいらしいけど脂肪だからほどほどにしないとお腹が大変だことになるよ」
「ポッコリにってしまうなし』
「そう、ちなみに鶏肉は、脂肪が少ないんだって」
「ウチ、鶏肉好きなしな。だからお腹がスッキリ滑らかなりよ。ほらほら」
茉琳は翔の手を取ると自分のパーカーの下に差し込み、わざわざ、お腹の肉をさわらせた。
「茉琳、こんな人混みの中で何やってるの!」
翔は慌てた。彼自身、女性恐怖症により過呼吸になるという障害を持っている。しかし、彼は発作が起きないかと身構えたが、起こる節がなかった。安堵したのはいいものの、自分の指先が感じる違和感に、
「あれ? 指が肉に埋もれたよ。それに腹が段々になってる」
「えっ、うそなり!」
茉琳は自分の腹を見ようとしたのか、パーカーを前身ごろを上に引っ張りあげた。裾がが捲り上がり、スウェットのワイドパンツ、ポッコリしたお腹、ミニキャミ、ブラカップまで翔の目の前に、ご開帳してしまった。
「茉琳ん!」
翔は慌ててパーカーの前見頃を下げた。首を回して周りを見る顔は紅く染まっている。そして茉琳に耳打ち、
「おい、お腹の肉がパンツに載っかっていたぞ」
「ぎゃあー 乙女のピンチなり」
両手をあげて茉琳は悲鳴をあげる。パーカーを引っ張り襟元から内側を除く。そして翔へ向けた顔が蒼白になってしまった。
「鏡で見てくるなしー。トイレはどこなりぃ?」
「あっち」
翔が指差した方向へ、踵を返したところで茉琳の顔から表情が消えた。目が空になり、口も緩む。膝に力が入らず体が下に落ちた。そのまま、ひら座りになってしまう。
翔もしゃがみ込んで茉琳の肩を支えた。
「かはっ」
程なくして意識を取り戻したのだが彼女の表情が暗い。眉も下がり気味。
「ウチ、また………」
ガックリと肩を落としてしまう。彼女自身、前触れもなく気を失うという障害を持っていた。以前、一酸化炭素中毒になってしまい後遺症が残ってしまった。
「気にしない。それより痛いところはないかい」
翔の励ましに茉琳は無言で首肯する。
「よかったなあ、立てるかな」
再び首肯しつつ茉琳は立ちあがって翔に嘆きをぶつけていく。
「なしてお腹ポッコリなり。お肉も牛さんや豚さん減らして鳥さんメインなのにー」
「ちなみにどうやって食べてるのかな?」
「お店やコンビニでフライドチキンを食べてるなしな』
「それだね。肉を揚げる油ががぽっこりの元だよ。結構、カロリー高いんだよ」
「えー」
「鶏肉って脂肪が少ない肉なんだ。タンパク質も多いしね。でも油がね。茉琳は脂塗れの鳥肉を食べて,お腹の贅肉にしたんだよ』
「わぁー」
両手で顔を覆い、しゃがみ込んでしまった茉琳。
「ダイエットしないと、でもいやぁー」
小さい声でつぶやいていた。
「しょうがないなあ。手伝ってあげるからダイエットしようよ」
「でも、絶食しなきゃいけないなし。お腹が空くのは嫌なりよ」
「食べないのは、絶対やっちゃいけないことなんだってネットに載ってなよ
。いい方法あるから探そう」
「ほんに?」
「本当」
「翔! お願いしていいなりか?。ウチも頑張るえ」
「そうそう、茉琳がポンポコたぬきさんになってしまう前に何とかしないとね」
「うん………、えっ⁈………、翔のヒトデナシー!」