婚約破棄された令嬢はスキル【インターネット】の男の力を借りて王子様に『ざまぁ』する編
年内にもう一本短編書きたかったけど無理そうなので、ストックの中から……。
「マリア! お前との婚約を破棄する!」
「ええ!?」
学園の卒業パーティーというおめでたい場で誰もが見惚れる程の美しいお顔のこの国の第一王子、ナルシス様が私に向かって冷たく言い放ちました。
私は、マリア=クロフォード。クロフォード家という大貴族の家に生まれたいわゆる令嬢。
そして、ナルシス様の婚約者、だったはずなのですが……。
「何故、私との婚約を破棄するなどとおっしゃるのです!?」
「何故だと? お前は自分のその肌を見てまだそんな事が言えるのか!?」
ナルシス王子が指さす私の肌は確かに荒れていました。
ですが、これはこの国の為に一生懸命働いた結果、疲れやストレスで……。
「それは私がやるべき仕事を全うした証であって……」
「黙れ!! もういい……皆も聞いてくれ!!」
会場に居る全ての人がこちらを見ています。
中には、心配そうに見つめている方々もいらっしゃいますが、殆どの方がニヤニヤと笑っていらっしゃいます。
「自分を美しく保つ努力も出来ない女が国を美しく保つことなど出来ようか!それに、俺は自分の隣に立つ女性は自分が心から愛する人が良いのだ! だから……お前との婚約は破棄だ!」
「そ、そんな……」
私の今までやってきたことは何だったのでしょうか。
しかし、それを今言ってしまえばそれこそナルシス様の不興を買うでしょう。
「……分かりましたわ。では、失礼いたします」
こうして、私は婚約破棄されることになりました。
ナルシス様の横には、新しく異世界からやってきた聖女様が微笑んでいらっしゃいます。
ああ、そういうことだったのですね……。
ナルシス様は、私を捨てて、あの聖女様を……。
「くっ……ふふふっ……」
悔しくて、悲しくて涙が出ると思ったのですが、何故か笑いが込み上げてきます。
今の私の表情は誰にも見せられない程醜いものでしょう。
涙を拭こうと触れた肌さえも心と同じく荒れていてひどいものでした。
「あははは……うっ……くっ……!」
「ねえ、大丈夫?」
泣いて崩れ落ちている私に声を掛けてくれたのは、聖女様と一緒に来て、才能なしと蔑まれていた黒髪の男性でした。
彼は聖女様と一緒に召喚された異世界の方らしいのですが、ステータスが低く、全く戦う力がない為、ほとんど放置状態だったように思います。
私は、何度かお話した事はあったのですが……。
「あぁ……ありがとうございます」
彼に手を借りて立ち上がると、私は一刻も早くその場から離れたかったので急いで歩き始めました。
「ねぇ待ってよ!」
「……なんですか?」
「あんた、悔しくないのかよ! あんなこと言われて」
「聞いて、いたんですか?」
先ほどのやり取りを聞かれていたなんて恥ずかしい……。
でも、どうして彼がこんなことを言ってくるのか理解できませんでした。
だって、貴方は戦う力がないのに。私に戦えと?
「見返したくないのか?」
「見返したい! 見返したいですわ! でも……私、肌荒れを治すために色々やってみたんですの! でも、治らないんです!」
「なるほど……ちょっと待って。あ、俺の名前カズトね」
そう言ってカズト様は何か魔法を使われて、生みだしたのは……。
「なんですか? これ?」
「塗るタイプのポーション、かな? まあ、騙されたと思って使ってみて」
そう言われて私は家にそのポーションを持ち帰っていました。
「匂いはとってもいい匂い……うん、大丈夫そう。どうせ、もう婚約破棄は覆らないし」
ダメもとで塗り込んでみて数日後、あれだけ荒れていた肌は見る影もなく綺麗になりました。
「わあ~、あれだけ荒れていたのにすっかり……」
本当に凄いです!
肌が綺麗になった事で自信の湧いてきた私は今日も街にお出かけです。
道行く人たちも私を好意的に見て下さっている気がします。
「うまくいったみたいだな」
「カズト様!」
街中で声を掛けて下さったカズト様は自分の事のように喜んでいるようで私も嬉しくなってしまいます。
「見違えるほど綺麗になったな」
「はい! この恩は忘れません! 私、一生をかけてお返しさせていただきますわ!!」
「い、いや! 別にそんな、一生なんて、男に言うもんじゃないぞ……」
「あ……」
つい勢いでプロポーズみたいなことしてしまいました。
顔が熱いです……。
でも、カズト様は頬を掻きながら照れ臭そうな顔をしています。
きっと、私と同じように……。
その後、二人でしばらく笑い合いました。
なんだかとても幸せな気持ちです。
そして、私は疑問をカズト様にぶつけます。
「でも、どうしてあんなに荒れていた肌が?」
「それはね、今、異世界で注目の成分が大量に含まれているからなんだよ」
そう言ってカズト様は聞いたこともないよく分からない成分とやらをいっぱい話して下さいましたが、なんとなくすごそうだなあと思いました!
「うーん、実はね、あれは僕のスキル【インターネット】で異世界から取り寄せたものなんだ」
と衝撃的な事実を話してくれました。
「【インターネット】?」
聞いたこともない名前のスキルです。
「そう、【インターネット】。これは僕が知っている物ならお金さえ払えば何でも手元に持ってこられるんだ」
なんでも……という事は、まさか……。
「この世界には無いものも持ってくることが出来るということですか?」
「そうだね。ネットで買えるものなら。今回はマリアの為に、肌荒れの薬を取り寄せたんだ」
「でも、何故そんなに私の為に?」
「マリアは知らないかもしれないけれど、僕がここで頑張れたのはマリアのおかげなんだ」
「ええ!?」
どういうことでしょう!? 私、何もした覚えはないのですが。
聞けば、カズト様は前々から私の頑張りを見ていたそうで、自分の身を粉にして働いている私を見て、勇気づけられたそうです。
「それに、マリアは、僕と会う度に、優しく挨拶してくれた。話をしてくれた。君が魅力的な女の子だっていうことはすぐに分かったんだ」
そう言いながら、カズト様は私に近付いてきます。
え、何? ちょっと、近いですよ!
「だから、僕は君が好きなんだよ。マリア」
そっと私の手を握り締めて下さったカズト様の顔は真っ赤になっていました。その表情を見た私は、胸の奥がきゅっとなって、ドキドキと鼓動が激しくなりました。
「私も、貴方が好きです。カズト様……」
「嬉しいよ」
そして、私はカズト様と結婚することになり……
「ああー! マリアー! 私とやりなおしてくれー! この聖女、実はとんでもなくズボラで家事なんて一切出来ないのだ!! 頼む! 結婚前に知っておきたかった!!」
王子の悲鳴が聞こえますが、もう無視です。
今、とっても幸せですから。
「マリア、今日も綺麗だよ」
「ありがとう、でも、カズト様。私、貴方の為にずっとずっと綺麗でいたいのだけど、あの、ポーションってやっぱり高いのかしら?」
「そうだね、あれは異世界の俺のいた国公認のものだから、高いよ。でも、今このものがたりを見ている君達なら! 格安で買えるんだ!」
「予約殺到のポーションらしいので、この機会を逃すともう次はないかもしれませんよ。私とカズト様の出会いのように!」
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なんで、アレって衝撃の結末が見れないんですかね……?
リスペクトエンドにしましたけど……毎回、気になってます。