ムキムキのマッチョが世界平和の為にバーベルを持ちあげる話。
『ピースマーク』の刻まれた700キロの鉄球を持ち上げる事で戦争反対。世界平和を主張するイベントが今日行われる。
81才のニコラスはまだ19才の天才筋肉少年アルチョムの筋肉を見て思わず口笛を拭いた。
「ヒュー。アルチョム。人間とは思えない身体だね」
アルチョムの腕は平均的な成人男性のウエストよりも太い。
材木を運び熊とも日常的に戦うような雪国で育った彼は500キロのバーベルを軽く持ち上げるベリーマッチョスーパーマンだ。
そんな彼のボディーをニコラスは同じ男として羨望の目で見ていた。
「アルチョム。君なら自信はあるかい?」
「うーん。700キロの鉄球だろ?難しいだろ。人間技じゃないよ」
ニコラスは不安になってきた。そんな弱気な事を言われては不安になる。世界平和を望むアピールの為の放送でもしもチャレンジに失敗したら多くの人たちが悲しむだろう。
「アルチョム。君の話をもっと聞かせてくれ」
「いいよ」
話を聞くとアルチョムはまさに天才だった。生まれてすぐに腹筋。五才で懸垂100回。小学生になるころにはトラクターをロープで引いて運んでいた。
アルチョムも話をしている内に興奮してきたのか自信に溢れる顔となった。
「羨ましいよ。僕は君とは反対で何をやっても人より劣った子供だったし今もそうさ。ADHDで同じことを何度も何度もやらないと覚えられなかった」
自分を下げて相手を上げる巧みなニコラスのトークにアルチョムも満更でもないようだ。
ニコラスも気持ちが昂ってきた。
「よし!じゃあチャレンジと行こうじゃないか!」
「うん!」
ニコラスとアルチョム。両国の国歌が流れいよいよチャレンジの時が来た。
アルチョムはハンディーカメラを持ってレンズをニコラスに向けた。
ニコラス。81才。毎日トレーニングを休まなかった世界一のムキムキマッチョ。アルチョムよりも全ての筋肉が一回り大きい。
「NO・WAR!」
ニコラスは700キロの鉄球を軽く持ち上げ天に掲げた。
「人はいつでも変われるんだ!」