不手際
あの女の子が自分の顔を覚えていることを想像した。「どうすればいいって?」「川にお金を投げればいいの?」思わず聞いていた。「こいつ誰なん?」誰かが言った。最近引っ越してきたことをもう一度話して夏休み明けに通う学校を教えた。「まじか」。顔を覚えられると忠告してきたやつが驚いていた。そいつは堀といった。「明日川で挨拶の仕方教えてやるよ」。急に気持ちが前向きになってくるのを感じた。助かりそうなのとたぶん新しい学校の人と友達になれそうだったので安心したんだと思う。「自分のお金じゃないとダメなの」最初に声をかけてくれた佐藤という子が言った。みんなそうだと言いながら互いに話している。みんなと連絡先を交換して帰った。今日は悪い日かと思ったが不安が一つ減った気がして前向きだった。川で起こったこともただ変わった人がいただけなのかもとも考えられた。次の日親に友達ができたことを伝え、少しお金を貰って川に向かった。早く着いてしまった。一人でこの川にいるのは怖い。ただ川にお金を投げ入れればいいのだろうか。ふと振り返った。女の子がいた。小柄で大人しそうな、昨日友達になった佐藤だった。「おはよー」、「おはよう」ただのあいさつだったが何となく嬉しかった。片手で持てるくらいの木の筒を持っていた。「おみくじを引いて出た棒と一緒に流せばいいの」。みんな新年にやるらしい。夏におみくじか。凶。いつにも増してこの結果が不吉に感じた。「何が出たかは関係ないよ」。佐藤が励ましてくれる。堀たちが丁度きて笑われた。そんなに凶は入ってないらしい。持ってきた1000円札を凶と書かれた棒に結んで川に流した。川底には流れきらなかった棒が何本か見えた。なんとなくみんなでほっとした。みんなと遊んで仲良くなった。「お前んちって○○らへん?」田舎だと引っ越しのトラックなどですぐ分かるらしい。「お前んち妹いんの?明日連れてくれば?」「いないよ?」「うちのかーちゃんが昨日家入るの見たって」「まじでいないよ」まじでいない。