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知らぬ間の選択

俺は走り出していた。さっき川に来る途中で歩いた道を走りまくった。走った。振り返る勇気はない。ただ頭にこびりついていた。あれはなんだ。俺の知っている何でもない。やっと人通りのあるところまでこれて振り返った。ただ通行人がいるだけだった。このまままっすぐ家には帰りたくない。何か悪いものを家に呼び込んでしまうような気がした。お金はないので店には入れない。気持に反するが何となく家のある方に歩く。ただまっすぐではなくわざと遠回りした。すると住宅街だったのが急に林になった。林を避けたくてまた走った。あの顔を思い出して一人で萎縮した。思い出すな。思い出すな。歩いていると人だかりがあった。年は同じくらい。夏休みという雰囲気ではなかった。「あいつ挨拶いってなかったのかよ」。何か話し合っていた。かなり神妙な雰囲気が今の自分の気持ちとあっていた。同い年の集団の脇を通るのを何となく緊張しながら通りすぎた。通り過ぎたが何かを感じる。ふと振り返ると全員こっちを見ていた。じっと見ていた。神妙な雰囲気もあってなぜかこちらも見返してしまった。声をかけてはこない。こそこそ話しはじめた。おそらく俺が誰かという話だ。気まずい間が流れる。「最近引っ越して来たんです。」一応敬語。それでも聞こえたのか聞こえないのかこそこそ話していた。「挨拶に行ったほうがいいよ」。一人が声をかけてくれた。「挨拶?」なるべく丁寧な口調で聞き返した。「誰に?」。少し間が流れる。「弁天様」。何かが。頭の中で何かが繋がった気がした。しかし考えたくなかった。相手もこちらに変だと思われているかもと感じているようだった。そんなこと感じていない素振りで聞いた。「よくわかんないけどどうやるの?」。「川にお金を払うの。」もうダメだ。「払わないとむしりとられちゃうの。」終わった。挨拶の前にしてしまったことがある気がした。半分諦めた気持ちでぽろっと言ってしまった。「さっき川に行ったんだけど」。全員こっちを見ている。「誰かがいて」。最悪だ。「川に何か投げてた」。「目は合ってないよな」。別なやつが始めて喋った。「合った」。「けど逃げちゃった」。なぜか子供っぽい言い方をしている。しーんとしている。その場の全員が緊張して納得したころにそいつがまた喋った。「お前顔覚えられるぞ」。

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