〇〇系わんこと作る雪だるま。
「先輩。せっかくですし、一緒に作りませんか? 雪だるま!」
近年稀に見る大雪に見舞われた我が町。夕焼けのオレンジが綺麗に反映した地面を指さし、柚樹くんは目を輝かせながら言った。
「う……、いいよ」
こちとらお家では、元気にみのむしコーデを着こなすインドア派だ。少々ためらったけれど、彼の甘えるような、あるいはすがるような空気に押されてしまう。
なぜかしら。目の前の美男子に、犬耳と激しく振られたしっぽが付属して見えるのよ……。
柚樹くんは文芸部の後輩で、私の人生初彼氏でもある。
先ほど触れたが、彼は相当な美男子……というかどちらかというと美少女顔をしていて、大きな瞳に、うるうるの唇。髪は軽く染め、コートの着こなしもマフラーの巻きかたもあざとく決まっていた。
私も外では身なりに気を遣うタイプだけれど、どんなに清潔感を漂わせてみてもやはり、ずっと本にかじりついている人間は絡みづらいのだろう。絶賛一匹狼満喫中だ。
柚樹くんはそんな私に歩みよってくれたばかりか、お付き合いの申しこみまでしてくれたありがたいひと。
うん、彼の思いは無碍にできない! と私は改めて、雪だるま作りに向けて気合を入れなおした。
ふたりで邪魔にならないところへ移動し、それぞれ頭と胴体部分、手分けして作ってゆく。少しずつ雪玉が大きくなってゆくのって、努力が報われている感があるな。
……ハッ、うっかり無言になってしまった! なにか気の利いた一言をば……!
あせった私はぐるん、と彼のほうへ向きなおる。
「こ、これって、初めての共同作業だね!」
――ウッアァー!! まるで結婚をにおわせるがごとき発言をしてしまったぁあ!!
こんなの引かれちゃう、と恐る恐る彼をうかがうと、当の柚樹くんは……真顔だった。
「なに言ってるんですか……?」
「ご、ごごごごめんね! 恐ろしかったよね――」
「僕と先輩の初めての共同作業は入学式の日に目が合ったことなのに。体育館に入場したあのとき、凛とした美しさを持つ、艶やかな黒髪の先輩は一瞬……正しくは0.86秒ほど僕に目を向けましたよね?」
「エ? 柚樹くん瞳孔が開ききって」
「その見つめ合いは永遠のようであり運命の作業と言っても過言ではなくそもそもふたりはきっと前世で」
……私の彼氏くんの属性はわんこのみならず。ヤンデレもおまけでくっついていたらしい――。
あたたかくもお読みいただきまして、本当にどうもありがとうございました!