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宿場町に夜が

作者: 瀬川なつこ

宿場町で、ぶらり。

小鬼が桜の枝を抱えて、タップダンスを踊っている。

アメフラシが人の魂を集めて大きな袋を背中に抱えている。

影法師が「お前死ぬよ」と声をかけてきて、

ドッペルゲンガーが私そっくりの顔で奇妙な微笑みをこちらにむけている。

のっぺらぼうが彼岸花を道端のお地蔵さんにあげている。

ぽっと灯りが点いて宿場町に夜が来ます。

わおんわおんと犬の遠吠え。

不思議なモノも家に帰ってきます。

軒の下、天井裏、家族の一家団欒を眺めながらいいなあと指を咥えております。

彼ら闇の者には家族はおりません。

せいぜい、道端で、誰かを驚かすくらい。

道端の白熱球の下で、雨の中しくしく泣いております。


二階の戸棚の中には、頭が猿、身体が狒々、足が魚の、キメラの干物が密かに隠してある。一階の戸棚にはなぜか、私のお爺さんの髑髏がかくしてあって、箪笥の中の着物の上には私の乳歯が隠してある。

夏になると戸棚や箪笥はがたがた鳴ってここから出せと訴えている。

お盆やお彼岸の頃。

線香のくゆる頃。


久遠の懐かしき夏。

かき氷、ビー玉、おはじき、金魚鉢、夏祭り、

あの日のすべてが、遠き日の眼差しが、

懐かしく、甦ってきます。

通りには、打ち水、通りがかる自転車がちりりんと鈴を鳴らします。

旅の雲水さんが、錫杖を手に、しゃんしゃんと歩いています。

道端にはくたびれた向日葵。

夏の凡て。


夢の中で、人魚に抱き着かれた。

は、と目が覚めてみると、櫻が庭に咲いています。

蔵の裏の川にも、櫻が咲いていて、玉砂利の川に棲む人魚も、嬉しそうに花筏を掬って遊んでいる。

春の宵だなあ…と、夜桜を楽しんでいると

鬼がやってきて、片腕を持って行ってしまった。

次の日、元に戻ってました。

賽子を振って一の目が出ました。

凶です。

かたかたと部屋の中の日本人形の箱が鳴ります。

しかし凶は吉。

聖と邪は入れ替わり、鬼が湧いて出てくるのも吉兆。

だって、鬼に会いたいですもん。

私が死んだら、天国じゃなくて地獄に行くね、

だって天国なんて詰まらない。

地獄で鬼どもと賭け事をするのだ

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