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◆王都アハト 王城
>>Side:アルベルツ王国 国王オービル=アルベルツ
王都アハトにある王城。
その一室は喧騒に包まれていた。
「此度の戦争の責任はどうとるおつもりか!?騎士団長!!」
アルカディア国との戦争。
それに負けた私たちは多くの騎士と物資、そして従軍していた貴族を失った。
その中には総大将を務めていたイラリド=ハタド伯爵も含まれる。
総大将が戦死したとあって責任追及の矛先は騎士たちをまとめる立場にあるリオネル=バルダ騎士団長に向けられている。
「そうだ!!騎士団が5分の1も参加したというのに負けるとはどういうことだ!?」
バルダ騎士団長を責める声には2種類ある。
利権を得ようとしてバルダ騎士団長の失脚を望む貴族と先の戦争で家族を失った貴族だ。
前者も後者も現状を理解をできていないのは変わらないが後者は家族を失ったことを思えば声を荒げ誰かを責めたいという気持ちが湧くことも理解できる。
しかし、今ここで責任追及をしても始まらない。
私たちは戦争に負け多くの賠償金を支払ったのだ。
今後、国の運営に支障が出るレベルで私たちは血を流したのだ。
それを理解して前に進まなければいけないのだ。
「何とか言ったらどうだ!!」
戦争に従軍した息子が帰らぬ人となった貴族が顔を赤くしながら声を上げた。
バルダ騎士団長は静かに目を伏せてそれを聞き流している。
見かねてバルダ騎士団長を擁護する貴族が口を開いた。
「少しは落ち着いたらどうだ?此度の戦争で家族を失ったのは貴殿だけではないのだぞ。」
「そうだ!私だけではないのだ!その者たちに駆ける言葉ないのかと私は問うているのだ!どうなんだ?リオネル=バルダ騎士団長!」
なおも続く貴族の声にバルダ騎士団長は目を開き静かに話始めた。
「確かに戦争に負けたのは従軍した騎士の………そして騎士をまとめる私の責と言えるだろう。」
「ならば!!」
「死した者にかける言葉はあれど、残された家族に送る言葉は持ち合わせはいない。」
「な!?」
バルダ騎士団長がはっきりと口にした言葉を前に彼を責める貴族は絶句した。
それもそのはずである。
バルダ騎士団長の言葉はともすれば責任逃れともとれる言葉なのだから。
しかし、そんなことは無視してバルダ騎士団長の言葉は続いた。
「騎士団に従軍した以上戦争で死ぬ覚悟は十分あったと思う。彼らの仕事は戦うことなのだから当然だ。ならばその死を悼むことはあっても死を不条理とは私は思わない。」
毅然とした態度でそう口にするバルダ騎士団長を前にしてヒートアップしていた貴族たちは落ち着きを取り戻した。
未だ言いたいことは多くあるといった表情をしているものの言葉とならないようだ。
そんな中冷静に1人の貴族が口を開いた。
「ならば騎士団長は自分に責任は無いというのか?」
「先にも申し上げた通り戦争に負けた責任は私にあると捉えてもらって構わない。しかし、従軍した兵が死んだことに対する責任は持ち合わせてはいない。それをしてしまえば、勇気をもって従軍した兵たちに申し訳が立たない。」
バルダ騎士団長の言葉を聞いて家族を失った貴族たちは顔を伏せた。
冷静なバルダ騎士団長を見て彼らも冷静になってくれることを祈ろう。
しかし、一方で利権争いに必死な貴族はそうではなった。
彼らはバルダ騎士団長が責任を認めたことをいいことに笑みを浮かべて口を開く。
「ならばこの度の敗戦の責任はどうとられるおつもりか?」
「それは私が決めるべきことではない。すべては国王陛下に委ねます。しかし、願わくば敗戦の雪辱を雪ぐ機会を望む係です。」
バルダ騎士団長は私に向き直りそう口にした。
貴族たちの視線が私に集まる。
私は彼らを見回して口を開く。
「此度の敗戦の責をバルダ騎士団長にだけ負わせるつもりはない。此度の戦争を推し進めたのは私なのだからだ。」
私の言葉を聞いて貴族たちは静まり返った。
私は続けて言葉を口にする。
「戦死した兵たちはかける言葉もない。遺族には相応の見舞金を用意しよう。それでどうか気持ちを落ち着かせてほしい。」
私のその言葉を聞いて嗚咽のような声が室内に響く。
私はそれを聞きながらなおも言葉を続けた。
「そして騎士団長については先に述べた通り責任を問うつもりはない。」
「しかし、王よ!!っつ!!」
私のその言葉に声を荒げる貴族がいた。
私はそれを視線で制する。
「私たちは敗戦を乗り越えていかなければならない。皆それを念頭に置いて今後の国の方針について話し合ってほしい。」
私はそこで言葉を終わらせた。
私の思いが届いたのか貴族たちは先ほどと一転して冷静な口調で話し始めた。
「今後の国の方針とあるがどうするべきか?」
「先ほど騎士団長も仰っていた様に雪辱を晴らすしかないのでは?」
「そうだ!こうなれば総力戦だ!全軍をもってゼクスの奪還に打って出るべきだ!」
「いや、それは少々暴論ではないか?現状の備蓄を考えるとすぐに戦争をするのは難しいだろう。」
「ならば、ゼクスの町を奴らにくれてやると言うのか?」
「そうは言っていない。戦争をするにも色々と準備が必要だろうと言っているのだ。」
「その、資源を集めるためにもゼクスが必要なのではないか?忘れたのか?ゼクスはアルベルツ王国内でも屈指の生産町であることを。」
ようやく会議の様相を呈してきた。
現状では意見は大きく分けて2分されている。
1方はすぐにでも戦争を起こしゼクスを奪還するというもの。
もう、1方は今は準備に留め戦争はしかるべき後に行うというものだ。
どちらも間違ってはいないのだろう。
「どちらの意見も最終的には戦争を行うということに相違はないのだろう?ならば、戦争で勝つために何が必要となるか整理するところから始めてはどうか?」
「なるほど一理あるな。」
「先の戦争での敗因は敵の大魔法とされているがその点は相違ないか?」
冷静な貴族のその言葉に会議に参加している皆は首を縦に振って肯定を示した。
それを見て貴族は言葉を続ける。
「何分魔法には疎いので宮廷魔術師長の意見を聞きたいのだが。話に上がった大魔法の弱点などはあるのか?」
急に話を振られた宮廷魔術師長は慌てながらその質問に対して回答を口にした。
「は、はい。話を聞いた限りそれほどの大魔法は通常数十人の魔術師が数日かけて魔法を使わなければなりません。そのため、弱点として考えられるのは連続して使用できないというくらいですね。」
「まて。大魔法を使うには数日の時間が必要なのか?」
「はい。前線を吹き飛ばすほどに巨大な魔法となりますとそうなります。」
「敵はそれほど前から準備していたということか?」
「分かりません。魔法の使用を短縮する手立てがあるのであれば弱点は無いに等しくなります。」
宮廷魔術師長の話を聞いて貴族たちは黙り込んでしまう。
それも、そのはず。
まさか敵の使ってきた魔法がそれほどのものとは思ってもいなかったのだから。
「これは調査が必要ですね。密偵を放って敵の魔法について調査させましょう。少なくともその調査結果がくるまでは戦争は保留でどうでしょうか?」
1人の貴族のその意見に皆は口々に「異議なし。」と言葉にした。
「さて、話を先に進めさせていただきます。他の敗因として考えられる点は敵主力の戦力を見誤っていたことです。生き残った騎士の話では大魔法を受けた後に敵主力の強襲があったと聞いています。これは間違いありませんか?」
「ああ、間違いない。1000人程の敵後方部隊が足止めに出てきた後に数名の主力が本陣を強襲したと聞いている。」
貴族からきた質問にバルダ騎士団長が答えた。
私もその報告は受けている。
ゼクスを落とした敵の主力が本陣に吶喊してきたと聞いている。
「敵主力メンバーには対策をとっていたはずです。私はそれが効果を発揮できなかったと考えています。」
「確かにハタド伯爵は戦争前に敵主力への対策を十分にしたと言っていたな。」
「はい。おそらくはハタド伯爵の想像よりも敵の主力が強かったのでしょう。ならば次の戦争ではそれも含めて考えなくてはいけません。こちらも要調査となるでしょう。」
「敵の大魔法に主力の戦力。知らなければいけないことが山ほどあるな。」
「はい。しかし、それを怠れば先の戦争の二の舞となるかと思います。」
その貴族の意見に反論する声は無かった。
皆も同じように考えているのだ。
私自身も同じである。
しかし、本当にそれだけで戦争に勝てるのだろうか?
私は一抹の不安を感じていた。
>>Side:アルベルツ王国 国王オービル=アルベルツ End
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