表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/115

7-11


◆ゼクス


ホムンクルスとオートマタの作成、アンデッドと悪魔の召喚をし始めてから2週間がたちました。

私たちは多くの素材を森林と鉱山から採取し、それぞれの作業は順調に進んでいます。

町の雰囲気も安定してきており、今ではガラの悪いプレイヤーが横行するような風景は無くなりました。

そんなある日私たちは領主館の会議室に集まりました。


「集まっていただいて申し訳ありません。本日は作業進捗の確認と情報共有のためこの場を設けさせていただきました。」


私はそこに集まったクランメンバーを見回してそう言いました。

皆の目は私に向いています。

私は彼らの視線を受けて再び口を開きました。


「まず最初に各所で問題となっていた人手不足については解決できたと思っていいでしょうか?」


私はマテリーネさんとオレグさんに視線を移してそう言いました。

私の疑問を受けてオレグさんが口を開きます。


「ホムンクルスおよびオートマタを配備することで最低限、問題が起きない程度にはなった。しかし、今だ人手不足な現状は変わらずだ。」


「分かりました。問題が発生するとしたらどのような場合ですか?」


「そうだな………。非常事態時などに人手が足りなくなる恐れがある。ほかにも各施設利用のピーク時に人手が足りずに時間がかかっている印象があるな。」


オレグさんの説明を受けて私は町の様子を思い出しますが私自身がそう言う場面に出くわしていないためピンときませんでした。

しかし、きっと彼の言う通りなのでしょう。

ならばより良い町にするために、まだこの政策を進めていく必要があります。


「分かりました。では、引き続きホムンクルスとオートマタの拡充を続けていってください。」


「分かった。任せてくれ。」


私のお願いにオレグさんは快い返事を返してくれました。


「私の方からもいいかなー?」


私の話がひと段落したところを見計らってマテリーネさんが口を開きました。


「ホムンクルスの作成を進めていくうえでわかったんだけどー、特定の分野に特化したホムンクルスが作れそうなんだよねー。」


「どういうことでしょうか?」


私はマテリーネさんの言葉の意味が理解できずに聞き返します。

小首を傾げながら質問する私にマテリーネさんは丁寧に説明してくれました。


「例えば農業に特化させた場合はー、それに対応するスキル【農耕】などを持っているのー。そう言うホムンクルスを作ることができるよー。」


「一応補足しておくとオートマタでも同じように特化型のものを作り出すことができる。分野はホムンクルスとは異なるようだがな。」


「作成中のホムンクルスとオートマタを特化型にするとどうなるのでしょうか?」


「予定していた数よりも少なくてもー、町の運営を回せるようになると思うよー。」


「それは良いですね。必要な素材などは同じなのでしょうか?」


「特化型とあって全く同じじゃないけどー、森林からとれる素材で十分だよー。」


私はマテリーネさんの説明を聞いて少し考え込みます。

今の話を聞く限りは特化型に切り替えたほうがいいような気がします。

デメリットは無いのでしょうか?


「特化型にした場合に何かデメリットなどはあるのでしょうか?」


「当然だけど特化型だから汎用的にあれもこれもと仕事を任せることはできないよー。でも、特化型だからこそできる仕事もあるねー。」


「今町に配備しているホムンクルスとオートマタはすべて汎用型ですよね?」


「うん。そーだよー。」


先ほどのオレグさんの説明にあった通り最低限町の運営を回せるだけの数が揃っています。

ならば………。


「では、これから作成に取り掛かる分からは特化型でお願いします。何に特化するかについては後程相談しましょう。皆さんもそれでいいですか?」


私の問いかけにクランメンバーは快く返事を返してくれました。

私はそれを聞いて胸を撫でおろします。

気を取り直して次の議題について私は考えます。


「次は王国との戦争についてです。ハーロウさん、現状の戦力を教えてもらえますか?」


私の言葉を聞いてハーロウさんが立ち上がり口を開きました。

皆の視線がハーロウさんに向きます。


「はい。先日申し上げた通りアンデッド並びに悪魔の召喚で戦力を整えています。現状は5万程の戦力があります。戦争の日までには7万程の戦力が整うと予想されます。」


当初は7万に届かないくらいの戦力しか整わない予定でしたがそれよりも多いようです。

これは朗報でした。

私はそれを聞いて笑みを浮かべます。

そんな私の感想は置いておき、ハーロウさんの説明は続きます。


「アルベルツ王国側の戦力は騎士団と冒険者を合わせて10万と予想されています。そのため、数の上では私たちは劣勢となります。」


「待ってください。アルベルツ王国側の戦力予想はどのように取ったものなのでしょうか?」


ハーロウさんの言葉に驚き、私は席を立ってそう口にしていました。

そんな私の対応にハーロウさんは落ち着いた声色で答えてくれました。


「はい。アルベルツ王国からアルカディアに所属を変えたプレイヤーからの聞き取りでたてた予想となります。あちらでは大々的に軍を編成しているらしく、この情報は確度の高いものです。」


「そうなのですね。話を遮ってしまい申し訳ありません。」


私はそう言って席に座りました。


「いえ。そこで残った1週間に関しては私はアンデッドの召喚に集中したいと思っています。今まで並行していた素材の採取ができなくなってしまいますが、これにより最終的には9万の軍勢を用意できると思います。」


「分かりました。オレグさん、再度の確認となりますが現状最低限のホムンクルスとオートマタは完成しているという認識で良いですか?」


「ん?ああ、その認識で間違いないよ。」


「では、ハーロウさんには残り1週間は戦争準備に注力していただくことにいたします。皆さんその様にお願いいたします。」


私のお願いに対して皆から異論は出てきませんでした。

戦争に勝てなければ他の問題など意味がないので当然です。

しかし、それでも9万対10万で数上では私たちがやや不利な状況です。

楽観視はできません。

私がそんなことを考え戦争に意気込んでいると再びハーロウさんが口を開きました。


「もう一ついいですか?」


「はい。何ですか?」


「アルベルツ王国側では今回の戦争にプレイヤーを雇い入れています。アルカディア側でも同じことができないでしょうか?」


戦争にプレイヤーを雇い入れるということはプレイヤーに戦闘を任せるということなのでしょうか?

確かに戦闘職のプレイヤーは戦力として十分に期待できます。


「今、アルカディアに所属しているプレイヤーはどの程度なのですか?」


「2000程です。そのうち戦闘職が半分ほどですね。」


1000人程のプレイヤーですか………。

それは戦力としてみた場合にどうなのでしょう?

私は一般的なプレイヤーの強さを把握していないためよくわかりません。


「率直に聞かせてください。その1000人のプレイヤーは戦争で役に立ちますか?」


「私は役に立つと思います。数的には少ないですが強襲部隊として運用すれば敵に大打撃を与えられると思います。」


「分かりました。では、雇い入れる方向で進めてもらえますか?プレイヤーへの報酬は国庫から払いましょう。」


「はい。では、冒険者ギルドを介して以来という形でプレイヤーに周知いたします。」


「お願いします。」


その後も会議は続きました。

私たちは輪郭の見え始めた戦争に対して意気込みを持つのでした。


--


>>Side:アルベルツ王国 国王オービル=アルベルツ


時は過ぎ去り戦争目前となったある日。

この日は戦争のために全軍がアハトの町を出立する日であった。

そんな日に私は今回の総大将を務めるハタド伯爵と最後の話し合いに臨んでいた。


「ハタド伯爵、戦争の用意は万端か?」


「は!!全軍滞りなく準備が行き届いております。」


「ふむ。そなたたちの働きに期待しているぞ。」


「その期待に応えられるよう粉骨砕身する所存であります。」


私の言葉にハタド伯爵は淀みなく答えてくれる。

私はそんな彼の意気込みに頼もしさを感じていた。


「時にハタド伯爵よ。その後、敵の情報は集まったのかな?」


「いえ、戦争目前に面目次第もありませんが敵の全容はつかめておりません。」


「そうなのか。それは少し気がかりじゃな。」


「はい。しかし、少ないながらも情報は得ています。どうやら敵はアンデッドを中心とした軍隊を構成しているようです。」


「ほう。」


「そこで急遽教会に協力要請をいたしました。数は少ないですが神官戦士が従軍してくださいるとのことです。」


「それは良いことを聞いた。」


教会の神官戦士はアンデッドに対して優位に戦える聖属性の魔法を使うことができる。

彼らならばきっと敵に大打撃を与えてくれることだろう。


「はい。さらに、敵首魁に関しては冒険者から多くの情報を得ています。」


「なんと!それは喜ばしいことだ!」


「はい。十分に対策も講じております。もしも敵首魁が吶喊してきた場合は返り討ちにしてみせましょう。」


「うむ。期待して待っておるぞ。」


「は!それではそろそろ時間となりますれば。」


「うむ。退出を許可する。」


私のその一言を聞いてハタド伯爵は玉座の間を退出した。

私も急ぎ移動する。

全軍が出発する際には私がそれを見届けなくてはいかないからだ。


--


場所は移り王城のバルコニーに来た私は目の前に広がる10万の軍隊を見て期待で胸を膨らませていた。

これだけの軍隊があればきっとゼクスの町を奪還することが敵うことだろう。

私が姿を現すとハタド伯爵は最敬礼をする。

それに倣い全軍の騎士たちも剣を構えた。

私はそれを手で制す。

それを見たハタド伯爵が剣を鞘に納め、全軍に向き直る。


「全軍傾注!これよりゼクスの町を奪った逆賊を討伐するためにかの地へと向かう!進軍せよ!!」


ハタド伯爵のその言葉を聞いて10万の軍勢は一斉に動き出す。

規則正しく1歩1歩を踏み出し町の外へと向かっていく。

目指す先はゼクスの町。

その手前にある平野にて此度の戦争は執り行われる。

私はその軍隊を見送っていた。

次に会う時は彼らがゼクスの町を奪還した時であると信じて。


>>Side:アルベルツ王国 国王オービル=アルベルツ End

よろしければブックマーク登録と評価をお願いいたします<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いよいよ戦争突入ですね。戦争前に掲示板回挟んでプレイヤー側の意見見たいです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ