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7-10


◆ゼクス近くの森林


私の体を貫通した槍を見て目の前の男は笑みを浮かべます。

しかし、その表情は次第に疑念を含むものへと変わっていきました。

私の体から流れ出るはずだった血が無かったからです。

槍は確かに刺さっています。

それなのに痛がるそぶりもダメージを受けて慌てるそぶりも見せない私に男は疑念を抱かずにはいられないようです。

眉をひそめてじっくりと私を観察します。

その視線が槍の突き刺さった胸に行ったとき男は驚きと取れる表情をします。

私の胸の傷口から玉虫色の粘液が漏れ出ていたからです。


驚き焦りを見せた男はとっさに槍を引き抜こうと力を込めました。

しかし、槍は抜けません。

私がしっかりとその槍を握っていたからです。

そんなことは知らない男は必死に槍を抜くために四苦八苦を繰り返します。

私はそんな男を後目に傷口から漏れ出る玉虫色の粘液の量を徐々に増やしていきます。

その粘液は槍を登り男の腕を掴みます。


「ひっ!!」


男が恐怖の表情を浮かべます。

目の前の男だけではありません。

私の足を掴む盾使いも遠く離れた位置にいる剣士も皆一様に恐怖を浮かべています。

私の体は次第に輪郭を失っていき巨大な玉虫色の粘性生物へと姿を変えていきました。


「あ、ああ、あぁあああああああああああああ!!」


槍使いの男が槍を手放して逃げようともがきます。

しかし、既に捕えられており逃げることは叶いません。

私はゆっくりと彼を飲み込もうと体を広げていきます。


その体のすべてを玉虫色の粘液の中に飲み込まれた男はなおも生き残ろうと必死になります。

しかし、その抵抗は虚しく男はぐちゃりぐちゃりと音を立てて潰れていきます。

赤黒い液体をまき散らしながら男が肉片へと姿を変えていくのを見て盾使いと剣士は一層の恐怖を受けたことでしょう。

醜い悲鳴を上げながら彼らは脱兎のごとく逃げようと私に背を向けます。


捻り潰した槍使いはすぐに光の欠片へと姿を変えました。

私はそれを確認すると逃げようとする盾使いと剣士を捕えるために触手を伸ばします。

さほど距離も離れていなかったこともあり彼らはすぐにつかまります。

私は彼らが逃げられないように足を砕きます。

痛みに悶え苦しむ剣士を後目に盾使いの男に止めを刺します。

上等な鎧に身を包んだ盾使いではありましたが私の攻撃を止めるには不足していました。

彼の鎧を押しつぶしなおも力を加えていく私を見て盾使いは醜く顔を歪めます。

しかし、それもほんの少しの時間でした。

最後にはプチッと言う音と共に彼の体は押しつぶされて光の欠片へと姿を変えました。


残ったのは剣士の男だけです。

私は再び【人化】スキルを使って人型の状態になります。

足を潰され地に倒れ伏している剣士にゆっくり近づいていきます。

そして右手に持ったナイフで急所を一突きします。

その攻撃を最後に彼も光の欠片となって虚空へと消えていきました。


私は消えていく彼らを見ながら虚しさを覚えます。

そんな私にアキが声をかけてきました。


「お疲れ様。」


「うん。」


なんてことはないいつも通りのやり取りです。

私たちにとっては魔物を狩るのと大差はありませんでした。

だからこそ私も大仰な返しはせずに簡潔に返事をするのみにとどめたのです。

私はナイフをしまいつつ辺りを見回します。

敵はいません。

危機は去ったと悟った私はアキに語り掛けます。


「さっきの人たちがラインハルトさんが行っていたプレイヤーキラーかな?」


「多分そうじゃ無いかな?さっきのやつらの話を聞いた感じだと他にもいそうだけどね。」


「そうだね。まさかゼクスの町がそんな風にみられているとは思わなかった。」


先ほどのプレイヤーキラーたちは確かに言っていました。

ゼクスの町はプレイヤーキラーにとって楽園だと………。

そんな風に思われているとは思っていなかったため少しカッとなってしまいました。

その風評を払しょくするためにも国の運営を頑張って行かないといけませんね。

私がそんなことを考えているとアキが声をかけてきました。


「魔物との闘いを見てて思ったけど人間の状態でも結構戦えるね。」


「そうかな?」


「うん。さっきのプレイヤーキラーだって決して弱くは無かったと思うよ。それなのに完封しているんだから十分に強いよ。」


「それは嬉しいな。でも、もろに槍使いさんのスキル受けちゃったなー。」


反省点としてはそれくらいです。

完全にあれは油断していました。

しかし、そんな私の言にもアキは首を振りました。


「あんな風に捨て身で動きを止められたら誰だってそうなるって。むしろそれで対してダメージを受けなかったリンが異常なんだよ。」


「んー、大きなダメージを受けなかったのはステータスのおかげだと思うよ。ショゴス・ロードってVITもDEFも高いから。」


「槍使いが使っていたスキル【穿鉄槍】は防御力無視の攻撃だよ。だからDEFの高さは関係ないんじゃないかな?」


「へー、そうなんだー。じゃあ、あれかな?種族スキルで【物理ダメージ半減】があるからそれのおかげかも。」


相手が恐怖状態なら他にもダメージを抑制する手段に心当たりはありますがあの時点ではそれは無いでしょう。

ならば、【物理ダメージ半減】が仕事してくれたのだと思います。


「そんなスキルまで持っていたのね。本当にリンは頑丈だね。」


「えっへん。」


私は胸を張って誇ります。

しかし、アキの言う通りショゴス・ロードと言う種族は本当に頑丈な種族だと思います。

膨大なVIT、DEF、MDF以外にも【物理ダメージ半減】、【魔法ダメージ半減】を持っています。

そのおかげで私のHPが大きく削られるようなことはほとんどありません。

しかし、防御力無視の攻撃は少し警戒していたほうがいいかもしれませんね。

スキルがあるとは言え危ないのは確かです。

私はそのことを考えて油断を振り払います。


「さてと。じゃあ、素材の採取を続けようか?」


「そうだね。」


アキの提案に返事をすると私たちは再び素材の採取を始めました。

依頼されていた素材はだいぶ溜まってきています。


--


「ただいま戻りました。」


ゼクス近くの森林で素材を採取した私たちは町へと戻ってきました。

その足でマテリーネさんの工房へと赴きました。

そこにはマテリーネさんとイヴァノエさんがいました。


「おかえりー。丁度いいところ頃に来たねー。」


返ってきた私たちに開口一番マテリーネさんはそう言いました。

私とアキはその反応に首を傾げます。


「丁度良いとは何がでしょうか?」


「うん。丁度今設備が完成したところだよー。これでホムンクルスの作成に取り組めるのよー。」


そう言うマテリーネさんの背後には数多くの円柱がありました。

その円柱はガラスでできていて、人の背丈の倍ほどの大きさを誇ります。

2、3個の円柱は液体が満たされており、その中には裸の人間が眠っていました。


「もしかして彼らがホムンクルスですか?」


「うん。試しに今ある素材で作ってみたのよー。」


「やっぱりそうなんですね!それで、うまくいきそうですか!?」


マテリーネさんの返答に私は興奮を隠せずにそう聞いていました。

そんな私の言葉にマテリーネさんもニヤニヤと笑みを浮かべながら返答を返します。


「大丈夫だよー。これで素材があれば1000でも10000でもホムンクルスが作れるよー。」


「それは良かったです。」


私は一安心しました。

これで多くの問題を解決することができます。


「では、さっそく素材をお渡ししますね。」


私はそう言ってマテリーネさんに採取してきた素材を渡しました。

アキも同じように彼女に素材を渡します。


「これでどれくらいのホムンクルスが作れますか?」


「そうだねー。これだと………200くらいかな?」


「200ですか………。」


少ないかなと感じてしまいます。

町を運営するためにはその10倍は欲しいです。


「では、もう少し森林の方で素材を採取しようと思います。」


「うん。お願いねー。」


「はい。」


私はそう言うとマテリーネさんの工房を後にします。

そして再びアキと共にゼクス近くの森林へと向かうのでした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] PK達は獲物の正体に"気が付いてしまった"!! 正気度ロールをして成功なら1d6、失敗なら1d100。 君たちの冒険はここでおしまいだ [一言] 200体も居れば最低限の運営は出来そうで…
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