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7-9


◆ゼクス近くの森林


私の振るったナイフが猿型の魔物の喉を引き裂きました。

その攻撃を最後に魔物は光りの欠片となって消えていきます。

その光景を眺めている私にアキが声をかけてきました。


「お疲れ。」


「うん。」


「どう?人型で戦うことに慣れてきた?」


何気なく質問してきたアキの言葉を聞いて私は体の調子を確認します。

背丈はリアルの体と同じため基本的にはリアルで体を動かすのと大差はありません。

大きく違うのはこの体が持つ力が現実離れしていることとあくまでこの体が擬態であると言うことだけです。

私はそれを素直にアキに伝えます。


「基本的にはリアルの体を動かすのと変わりないから大丈夫だよ。ちょっとリアルよりも力が強かったり、素早かったり、頑丈だったりするけどね。」


「いや、ちょっとってことは無いでしょう………。」


アキは先ほどまでの私の戦闘を思い出してそう呆れたようにつぶやきました。

私はそれに肩をすくめます。

ゲームなのですから多かれ少なかれ皆そう言うものだと思います。

剣を振るい続けるような体力を現実で持っている人なんて早々いないことでしょう。

しかし、態々それを口にはしませんでした。

きっとアキもそれには気が付いていると思います。

だから私は他のプレイヤーと自分との違いについてアキに説明しました。


「この【人化】はあくまで人型に擬態しているみたい。だからか知らないけど攻撃を受けても痛みとかは感じ無いよ。」


「そうなんだ。」


「うん。それ以外にも【人化】を使っている間は使えないスキルもあるみたい。」


私のその言葉を聞いてアキはハッと何かに気が付いたかのような表情をしました。


「それで………なのね。さっきからリンと戦っている魔物が「恐怖」を受けていないように見えたのはそれが原因?」


「そうみたい。」


「それって大丈夫なの?」


「何が?」


「いや、「恐怖」を与えられないってハンデにならないの?」


「別に大丈夫だよ。もともと「恐怖」や「狂気」に頼った戦い方なんてしていないし、いざとなったら【人化】を解けばいいしね。」


私のその言葉に納得してくれたのかアキは「そう。」と一言呟いて黙ってしまいました。

私たちは再び森の中を探索するために歩を進めました。

その時です………。


―ガサッ!!!


鬱蒼と生い茂る草むらから剣士プレイヤーが飛び出してきました。

彼は先頭を歩く私目掛けてその手に持った剣を振るいます。

私はとっさに回避できずにその攻撃から体を守るために腕を差し出します。

剣士の振るったロングソードは私の左腕を切り裂きました。

しかし、両断するには至りません。

私のDEFに阻まれその攻撃は私の腕の表面に傷を付けるだけに留まりました。


「アキ!敵襲!!」


「分かっているわ!!」


アキもすぐさま剣を抜きます。

私もナイフを抜いて目の前に剣士に振るいます。

剣士は大きく後ろに飛んでそれを回避しました。

私が1歩踏み出してさらに攻撃を加えようとしたその時。


「リン!!」


アキが私の名前を叫びます。

何事かと辺りを見回そうとしたその瞬間私の頭に2度衝撃が走ります。


―カン、カン


甲高い音を立てて弾かれたそれは2本の矢でした。

どうやら私目掛けて矢で攻撃してきたようです。

私は矢が飛んできた方向を見ます。

そちらには1人の弓使いプレイヤーがいました。


―ガサガサ


それだけではありません。

草むらや木々の影から次々とプレイヤーが出てきます。

その数8人。

最初に攻撃を仕掛けてきた剣士と弓使い以外にも6人のプレイヤーがいました。

私は彼らを見つめながら口を開きます。


「攻撃してきた以上おおよその推測はできていますが、一応聞いておきます。あなたたちは何ですか?」


私のその言葉に槍使いのプレイヤーが代表して口を開きました。


「何って、決まっているだろ?プレイヤーキラーだよ。」


そう言う彼の表情は下卑た笑みを浮かべていました。

彼だけではありません。

彼の周りにいる人たちも皆笑みを浮かべていたのです。

私はその笑みを見て無性に苛立ちを覚えます。

私のそんな気持ちは知らずに男は話続けました。


「今やゼクスの周辺で撮れる素材は貴重だ。それを馬鹿正直に集めているやつらから奪ってやるのさ。ゼクスの教会は使えないから報復を恐れる必要もない。本当にプレイヤーキラーにとって楽園のような場所さ。」


私はゼクスをそんな町にしたいなどと考えたことはありません。

私の国は決してそんな国ではありません。

槍使いの男の言葉を聞いて私はなおも苛立ちを募らせていきます。


「というわけだからよ。お前らも俺らに殺されな。」


その言葉を口にした槍使いは「がはは。」と大口を開けて笑います。

それを見て彼の周りいるプレイヤーたちも笑い声を漏らしました。

私は静かに顔を伏せました。


「アキ。私がやるね。」


「………1人で良いの?」


「うん。」


私はそう言うと地面を強く蹴りました。


「なんだ!?」


彼らの目には急に目の前から消えた様に見えたことでしょう。

私の高いAGIは一足で離れた場所に陣取っていった弓使いの元まで行くことできるのです。

私はすぐさま弓使いの喉元にナイフを3度振るいます。

急なその攻撃を回避することも防ぐこともできずに弓使いは光となって消えてしまいました。

しかし、それを他の7人が認識することはできません。

未だ目の前から消えた私を探して右往左往しています。

私はそんな彼ら尻目に再び地を蹴りました。


次は2人いる魔法使いの片方です。

標的を定めた私は彼の背後に忍び寄りナイフを振るいます。

呆気ないものでこれで2人目のプレイヤーが光となって消えてしまいます。


「あそこだ!」


剣士プレイヤーが叫びます。

ここに至りようやく私の姿を見つけることができた彼らは2人のプレイヤーを殺されたことに怒りをあらわにして私を睨みつけます。

しかし、それで怯む私ではありません。


「くそ!!」


私に最も近い位置にいた盾使いが手に持った剣で私に攻撃してきます。

私はそれを回避して彼から離れます。


「………【ウィンドランス】!!」


残った魔法使いが私目掛けて魔法を放ってきますが森の木々に遮られて私の元まで届きません。

私はそれを確認して彼の元まで近づきます。


「………【ウィンドランス】!!【ウィンドアロー】!!」


魔法使いは何度も魔法を使いますがその攻撃は私に当たりません。

私は木々を盾にしつつ彼に近づいていきます。


「くそ!!」


大剣使いが私の進路を妨害するように剣を振るいます。

私はそれを大きく回避します。


「今だ!!………【ウィンドランス】!!」


大剣使いの攻撃を避けた際に魔法使いと私の間に射線が通ってしまいました。

魔法使いは速度の速い風属性の魔法を使って私に攻撃してきました。

私は攻撃を避けた直後とあってその攻撃を避けることができませんでした。


「っく!!」


両腕を顔の前で交差してその攻撃を防御します。

次の瞬間、魔法が直撃します。

しかし、予想と反してその魔法は私のHPを削ることはありませんでした。

多少の衝撃を受けましたが大したダメージにはならなかったのです。

理由を考えるのは後です。

私はすぐさま体勢を立て直すと魔法使い目掛けて走り出しました。

ダメージを与えられなかったことは魔法使いにとっても予想外だったのかその後追撃をしてくることのなかった魔法使いはたやすく私の接近を許してくれました。

私はこれ幸いと魔法使いの喉元目掛けてナイフを振るいます。

その攻撃をもって魔法使いは光の欠片へと姿を変えます。


「この野郎!!!!」


大剣使いが私の背後からその大きな剣を振りかぶって攻撃してきます。

私はそれを危なげなく回避すると彼の顔目掛けてナイフを振るいます。

その攻撃は大剣使いの目を切り裂きました。

手にした大剣を落とし、顔を両手で覆いつくしたその男は痛みに悲鳴を上げます。


「ぐぁああああああああ!!!」


私はそれを眺めながら彼の喉元にナイフを振るって止めを刺します。

大剣使いの男もそれで光の欠片となってしまいました。

これで4人。

残りは剣士、槍使い、盾使いそして短剣使いの4人です。

私は周りを見回しました。

怒りをあらわにしている剣士、槍使い、盾使いが目に入りました。

短剣使いがいません。

そのことを疑問に思った次の瞬間………。


―ドサッ


頭上から短剣使いが降ってきました。

彼は手に持った短剣を私の喉元を切り裂こうと振るいました。

私はとっさにその攻撃を回避します。

短剣使いの攻撃は私の皮膚をわずかに傷つけるに留まりました。


私はとっさに距離をとって短剣使いに向き直ります。

彼の顔には下卑た笑いが張り付いていました。

いえ、彼だけではありません。

彼の仲間たちも一様に品の悪い笑いを浮かべていました。


「この短剣には毒が塗ってある。散々暴れまわってくれたがこれで最後だよ。」


聞いてもいないのに短剣使いが御丁寧にそう説明してくれました。

私は彼の言葉を聞いてステータスを確認します。

特に毒に侵されているということはありません。

どうやら彼の使う毒は私には効かないようです。

そのことを知らない彼らは笑みを崩しません。


私はそれを眺めながら再び地を蹴ります。

1足で近づいた私は短剣使いの目にナイフを突き立てます。

そして背後に回って喉元を切り裂きます。

最後に背後から心臓を一突きにして彼を殺しました。

一連の動きを見て彼らの笑みが失われます。


残った剣士、槍使い、盾使いの顔に再び怒りがうかびます。

私はそれを見ながら彼らの動きに注視します。

もう、不意を打たれるような真似はしません。


「毒が効いていないのか?」


「さあ、どうなのでしょうか?」


槍使いの問いかけに私はそんな返事を返します。

それを聞いてますます怒りをあらわにする彼らに私はナイフを向けます。

私の攻撃の意思を感じ取ったのか盾使いが前に出てきました。


私はそれを見て彼を次の標的にします。

地を蹴って盾の内側に入り込みます。

それに驚いた盾使いが後ろに下がろうとするも私のナイフの方が早く彼の足を切り裂きます。

その攻撃により膝をついた盾使いに私は再びナイフを振るうために構えました。

盾使いは両腕を交差して顔と喉を守ります。

先ほどまでの私の攻撃手段を見ていたのでしょう。

私は彼の鎧の隙間を縫うようにしてナイフを振るいます。

その攻撃は着実に盾使いのHPを削っていきます。

遂には盾使いは力なく地面に倒れ伏してしまいました。

私はそれを見て次の標的に狙いを変えます。


その時です。

倒れ伏した盾使いが私の足を掴んだのです。

私はとっさにその盾使いを蹴り飛ばそうと足に力を入れようとします。

次の瞬間………。


「………【穿鉄槍】!!」


槍使いが私目掛けてスキルを使ってきました。

その攻撃は鋭い突きとなって私の体を貫きます。

私の胸に突き刺さった槍は体を貫通してしましました。

私はその攻撃に驚きの表情を浮かべます。

それを見て槍使いの男は笑みを浮かべています。

その表情は勝利を確信した笑みなのでしょう。


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― 新着の感想 ―
[一言] 恐怖付与したまま何時間耐えられるかとか拷問や罰に使うってどうですか? 耐性の高い奴には効かなさそうなのでデバフのアイテムや装備つけてとか
[良い点] 勝利を確信した時、そいつは敗北しているんだぜ。 PK解体ショーの始まりやぁ……
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