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7-4


◆ゼクス


「次の議題についてです。」


私の一言を聞いて皆の視線が集まります。

私はそれを確認しながら次の一言を口にしました。


「ゼクスの町のプレイヤーについてです。これはラインハルトさんから報告を受けていた問題です。ラインハルトさん説明をお願いしてもいいでしょうか?」


「うん。大丈夫だよ。」


ラインハルトさんの言葉を聞いて皆の注目がそちらに移りました。

ラインハルトさんは皆を見回し話せる状況だと確認すると口を開きました。


「僕たちが国として独立したことで現在この大陸には2つの国家が存在する。多くのプレイヤーはアルベルツ王国に所属している状況だ。しかし、所属国家と言うのは移ることができる。皆もTipsを確認しているから分かっていると思うけど亡命だね。」


ラインハルトさんの言っている国家とはアルベルツ王国と私たちの国アルカディアです。

アルカディアが独立を宣言した瞬間に私たちクランのメンバーは自動的にアルカディアの所属となりました。

しかし、それ以外のプレイヤーは全員アルベルツ王国の所属なのです。

それは1日たった今も変わりありません。

私たちは未だ誰1人として亡命を許してはいないためです。


「現在ゼクスにはアルカディアに所属を移ろうとして訪れているプレイヤーがそれなりの数いる。彼らの処遇をどうするかをこの場で決めたいと思っている。」


「それは亡命を許すかどうかという話か?」


「亡命を全く許さないのと言うのは難しいだろう。僕たちのクランだけでこの国を運営できるとは思えない。だからこそ亡命を許すボーダーラインを決めたいのさ。」


国としての運営の指針を決めるだけなら私たちクランだけでも回すことができます。

しかし、鉱山や森林から素材を採取したり、その素材を加工するのは私たちのクランにいるメンバーだけでは手が足りません。

それを考えるとプレイヤーの増加は必要なことなのでしょう。

問題はどのプレイヤーを受け入れて、どのプレイヤーを受けれないかというその境界線です。


「何か案はあるのですか?」


「これがさっぱり。全くいい案なんて思い浮かばなかったよ。だから話し合いたいのさ。」


ハーロウさんの問いにラインハルトさんは肩をすくめてそう言いました。

無理もありません。

この問題はそれだけ難しい問題です。

下手に亡命者を全員受け入れるわけにもいきません。


「では、どのような人を受け入れたくないかから考えてはどうでしょうか?」


ハーロウさんが私の方を向いてそう言いました。

私は考えます。

私たちの国にいてほしくない人とは………。


「私は魔物排斥を訴える人はいてほしくありません。排斥と言わないまでも魔物プレイヤーに何かを強制してくるような人も同様です。」


「はい。他の方々はどうでしょうか?」


私の回答を聞いたハーロウさんは会議に集まった皆を見回して意見を募りました。


「僕は無法者は嫌かな。僕たちがこの町を手に入れた経緯があれだからかもしれないけど、今この町に集まっているプレイヤーはそう言ったのが多いんだよね。」


「他者に迷惑かけぬなら多少の乱暴は良いと思うのじゃ。野試合など他の町ではできないから気分が高揚するのじゃ。」


「そこらへんは私たちの決める法律次第だろう。その法律に従うのであれば受け入れていいと思うぞ。」


皆から色々な意見が出てきます。

その意見は次第にこの国をどのような国にしたいかという話へと変わっていきました。

私はその意見を聞いて胸を高鳴らせます。

私はこの国をどのようにしたいのでしょう?

決まっています。

私たちにとっての楽園にしたいのです。

そんなことを考えながら彼らの言葉に聞き入ります。


「皆さん意見をありがとうございます。」


皆の意見が出そろったところでハーロウさんがそう口にしました。

皆の視線は再びハーロウさんに向きます。


「皆の意見にある通りまずはこの国の法律について整備してその後その法律に従える者を受け入れるという形で良いと思います。リンさんいいでしょうか?」


「はい。異論はありません。」


「ありがとうございます。さて、それとは別に亡命者で気を付けなければいけない人がいます。それはスパイと密猟者です。」


「スパイと密猟者ですか?」


「はい。スパイの方は分かりやすいですね。アルベルツ王国にやとわれてこの国の情報を取りに来たものです。次に密猟者についてはこの町でしか取れない鉱山、森林の資材を不正にアルベルツ王国に流すものです。」


確かに今後アルベルツ王国と戦争をしていくと考えるとそのような存在がいると厄介です。

しかし、どのようにそれらを排除するのでしょう?

私にはさっぱりわかりません。


「えっと、どのようにそのスパイと密猟者を排除するのですか?」


「残念ながら私の方にいい案はありません。」


私の問いかけに対するハーロウさんの回答に私は落胆の色を見せます。

てっきり妙案があるものだと思っていたのですが………。

私のそんな気持ちは置いてハーロウさんの話は続きます。


「私の方に案はありませんが………ユリアさん。」


「はい?」


「以前聞いた話なのですが大悪魔の中には相手の嘘を見破れるものがいるそうですね?」


「ああ、なるほどそう言うことですか。はい。確かに一部の大悪魔は人の嘘を見破ることができます。そして私はその大悪魔を召喚することができますよ。」


「回答ありがとうございます。皆さん聞いての通りです。」


ハーロウさんは笑みを浮かべながら皆にそう言いました。

一部の方はそれで納得を示しましたが分かっていない人がいる様です。

私もいまいち話の流れがわかりません。


「つまりどういうことだ?」


「つまりは亡命者の受け入れ時に大悪魔の力を借りて相手が本当に私たちの国に相応しいのかどうかを判断します。大悪魔はあくまで相手の嘘を見破れるだけなので少々やり方は工夫する必要がありますがこれで大部分のスパイや密猟者を排除することができます。」


「それは素晴らしいですね。」


ハーロウさんの説明通りに事が運ぶならスパイや密猟者以外にもこの国で悪事を働こうとしている人も排除することができます。

私は期待を込めた視線をユリアさんに向けて口を開きました。


「ユリアさん、大悪魔の召喚に際して何か制限事項等はありますか?」


「ん?魔法事態は以前リンさんに見せていただいた魔導書で取得済みです。後必要なのは召喚に使う触媒です。大悪魔の召喚となるとフィールドボスクラスのアイテムが大量に必要になります。」


「それはゼクスの町近くのフィールドボス、アルゲンタヴィスでもいいのですか?」


「大丈夫です。」


それを聞いて安心しました。

それならばゼクスに居ながらもアイテムを集めることができます。

態々他の町へ遠征に行く必要もありません。


「では、先ほどの話に上がっていた森林と鉱山での素材の採取と並行してボスの周回もした方が良いのですね?」


「確かにその通りかもしれませんが、ボスの周回については私たちが態々する必要はないかもしれません。」


私の意見にハーロウさんは待ったをかけました。

何故でしょう?

ボスを周回してアイテムを集めないと大悪魔は召喚することができないのではありませんか?

私のそんな疑問にハーロウさんは続く言葉で回答を示しました。


「一先ず1体の大悪魔の召喚に関しては私たちが保持しているアルゲンタヴィスの素材で十分ですよね?」


「はい。」


「であるならば、2体目以降の素材については亡命希望のプレイヤーから徴収すればいいと思います。」


「徴収ですか?」


「はい。亡命の条件にアルゲンタヴィスに類するボス級モンスターの素材を加えるのです。これにより亡命者からアイテムを集めることができるだけでなく、簡単に亡命することを防止することができるようになります。」


アイテムを集めることができるというのは納得できます。

しかし、簡単に亡命することを防止とはどういうことでしょう?

私がそんなことを思っているとラインハルトさんが口を開きました。


「簡単に亡命することを防ぐとはどういうこと?」


その疑問は今しがた私が考えていたものと同じでした。

私は期待を込めた視線をハーロウさんに向け、彼の回答を待ちます。


「はい。簡単に言うと亡命に際してコストがかかるようにしないと興味本位で亡命しようとするものが出てくるからです。それらを止めるためには亡命の際に一定の負担を強いるしかありません。」


「なるほど。それが今回はボス級モンスターの素材というわけなのか。」


「はい。当然このコストについては随時変更して行ってもいいと思います。その時、その時に私たちの国で必要なものを徴収しましょう。」


そこまで考えていたとは思いませんでした。

素直に感心をしているとハーロウさんが私の方に向き直り口を開きました。


「リンさん、この案でどうでしょうか?」


「は、はい。問題ないと思います。素晴らしい案でした。他の方も異論はありませんね?」


私の問いかけに皆は頷いて肯定を示しました。

それを見てハーロウさんの意見は実行されることになりました。

また、1つ議題が消化されたことで私は胸を撫でおろしました。

さて、次の議題についてです。

気持ちを切り替えて私は前を向きます。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今やってるあたりの話はもっと都合主義的に片付けて欲しい。ゲームっていう大前提が少し蔑ろになってる気がします。
[気になる点] あんな条件付けたら生産職の亡命のハードルがめっちゃあがるような
[一言] 亡命処理時にシステム側に亡命条件を記載して契約書みたいな形に出来ればいいんだろうけど、どうなるやら?
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