6-13
◆ゼクス
<ゼクスの代表「オーベ」が死亡しました。>
<ゼクスの新たな代表はプレイヤー「リン」となります。>
<称号「領主」を取得。>
<アルベルツ王国から独立しますか?>
目の前に表示されたそのシステムメッセージを見て私は思考が止まります。
えっと………。
領主になったのですか?
私が?
何故?
そんなことを考えているとハーロウさんから声がかかります。
「リンさん今のワールドアナウンスは見ましたか?」
「え?ワールドアナウンスって何のことですか?」
私の雰囲気から私がとぼけている訳では無いと感じっとったのかハーロウさんは諭す様にして私に説明しました。
「リンさんに入っていないのですか?今ゼクスの代表が死んだこと、そして新たな代表としてリンさんが選ばれたことがプレイヤー全体にアナウンスされています。」
「そうなのですか?」
「はい。」
それは今まさに自分が見ているメッセージと同じものでした。
違う点があるとすればアルベルツ王国から独立するかどうかの選択肢があるかどうかです。
それは私が代表となったからこそ出ている表示なのでしょう。
そんなことを考えながら私はハーロウさんに答えます。
「私の方でもそのアナウンスは来ています。それに加えてアルベルツ王国からゼクスの町が独立するかどうかの選択肢が来ています。」
「独立ですか?するとどうなるのでしょう?」
「えーっと、少し待ってください。」
私はメッセージを確認します。
このメッセージには詳しいことは書いていません。
私は試しに「はい」のボタンを押してみました。
すると新たなメッセージが表示されました。
<アルベルツ王国から独立すると別の国家となります。その場合はアルベルツ王国と敵対する可能性もあります。それでも本当に独立しますか?>
私はそのメッセージを確認して口を開きます。
「どうやら独立するとアルベルツ王国とは別の国家となるみたいです。その場合はアルベルツ王国と敵対することになるかもしれないそうです。」
「なるほど。国の運営についてはよくは分かりませんがアルベルツ王国との敵対については心配しなくてもいいと思います。」
「何故ですか?」
「独立しようと、しなかろうと既にこの行為はアルベルツ王国と敵対することになるからです。」
確かにハーロウさんの言う通りです。
私たちは力ずくで領主を殺し、そして新たな代表の座に着いたのです。
当然それは領主を任命したアルベルツ王国に敵対する行為でしょう。
ならば考えなくてはならないのは独立して国になってアルベルツ王国と戦うのかそれとも王国の1都市として王国と戦うのかと言うことです。
どちらの方が私たちの目的に即しているのでしょう?
私がそんな風に悩んでいると部屋の扉が勢いよく開かれました。
「リン!さっきのアナウンス何!?」
アキとラインハルトさんが部屋へと入ってきました。
私はアキに詰め寄られながらそう問いただされます。
「アキ、落ち着いて。」
私はそんな彼女を宥めます。
アキは一応黙り私の言葉を待ってくれているがそれでもうずうずとしているのがはっきりとわかる。
どのような声をかけるべきでしょうか?
私が迷っているとハーロウさんが口を開きました。
「ラインハルト、そちらは方が付いたのですね?」
「ああ。問題なく勝利したよ。」
そう言う彼の言葉からは達成感が滲みだしていました。
それなりに強敵だったようです。
そうでなければこれだけの達成感を感じることは無いでしょう。
「それで、リン!どういうこと!?」
アキが辛抱できなくなって口を開きました。
私は仕方なく簡潔な説明を口にしました。
「えっと、オーベさんと言い争いになって、それでも退去命令を撤回してもらえなくて、それで………殺したの。」
アキとラインハルトさんは静かに私の言葉を聞いてくれます。
私はゆっくりと今の状況を説明します。
「殺したら自動的に私がゼクスの新たな代表になって、それで今はアルベルツ王国から独立するかって選択肢の前にいるの。」
「なるほどの。それで独立するとどうなるのじゃ?」
私が話している間に静かにユキナさんとユリアさんが部屋へと入ってきました。
彼女は微笑みを浮かべながらそう聞いてきました。
「独立した場合はアルベルツ王国とは別の国の所属となります。その場合はアルベルツ王国と敵対する可能性がありますが、正直今の状況を見るに独立しなくてもアルベルツ王国とは敵対することになるでしょう。」
「そうじゃのう。それで、国となった場合にはどのようなメリットがあるのじゃ?」
「すみません。それは分かりません。」
残念ながら彼女の疑問の回答になるような情報を今の私は持っていませんでした。
だからこそ正直にそう言いました。
「国として独立するべきでしょうか?」
私は不安な気持ちを隠さずに皆にそう聞きました。
その言葉を受けて皆も頭を悩まします。
当然です。
国となった場合のメリット、デメリットが分かっていないのですからそれを決めることはできないでしょう。
そんな中ユリアさんが口を開きました。
「私は国として独立するべきだと思います。現在のアルベルツ王国の雰囲気は決して良いものではありません。それは私たちの行いのせいなのかもしれませんがそれでも私はそれを我慢することができません。」
ユリアさんのその言葉を聞いてハーロウさんも口を開きました。
「そうですね。先ほどのゼクスの住民の反応を見る限り私たちに対する好感度は下がっり切ってしまっています。国として独立せずに活動していてもそれが改善するとは思えません。それならば独立して新たな国を興したほうが望みがあると思います。」
2人のその言葉を聞いて他の皆も賛成を表明してくれました。
私は彼らの言葉を受けて決断します。
「分かりました。独立しましょう。」
私はウィンドウを表示して独立を選択します。
<新しい国の名前を入力してください。>
次に表示されたメッセージはそんなものであった。
私は少し悩んで皆に相談します。
「国の名前はどうしますか?」
私の問いかけを受けて皆はまたも一緒に考えてくれます。
そして、ハーロウさんが案を出してくれました。
「クランの名前と同じで良いのではないでしょうか?」
しかし、それに異を唱える人がいました。
ラインハルトさんです。
「いや、それは安直だろう。何か別の名前を考えようよ。」
「そうじゃのう。確かにクランの名前と国の名前が一緒では分かりにくいのじゃ。」
「それではこんなのはどうでしょうか?私たちの理想郷という意味を込めてアルカディア。」
ユリアさんのその提案を聞いて私たちの顔に笑顔が浮かびます。
その響きはとてもきれいなもののように思えました。
まさに私たちに相応しい国名です。
「アルカディア………良いですね。」
「うん。」
「僕もそれが良いと思うよ。」
皆がユリアさんの案に賛同してくれます。
私ははっきりと宣言しました。
「決まりです。私たちの国の名前はアルカディアです。」
私はウィンドウにその名前を入力しました。
きっと私たちにとっての理想郷になります。
そう信じて………。
<ワールドアナウンス>
<ゼクスがアルベルツ王国から独立を宣言。>
<新たな国の名前は「アルカディア」。>
<Tipsに国家が追加されます。>
………
<称号「領主」が称号「国王」に変化。>
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「あ、進化できます。」
独立の選択をした私は今回の戦闘で得たものを確認するためにステータスの確認しました。
するとそこには種族レベル30、職業レベル30という表示がありました。
ここまで長かったですが遂に進化することができるようになりました。
私のその呟きを聞いてアキが興味深くこちらを見てきます。
「どんな種族に進化できるの?」
「ちょっと待ってね。えっと………ショゴス・ロードって言う種族に進化できるみたい。」
私は続いて転職先の方も確認しました。
「職業の方は上級復讐者と簒奪者って言うのに転職可能だね。」
「簒奪者ですか………どのような職業なのですか?」
ハーロウさんも会話に加わり聞いてきました。
「すみません。よくは分からないです。革命や簒奪を行う者となっていますがそれで何ができるようになるかまでは分かりません。」
「革命って、もうしちゃったじゃない。」
「いえ、だからこそ選択できるようになった職業化もしれません。となると、だいぶ取得条件が厳しい職業と言うことになりますが………。」
「取得条件が厳しい職業は強いものが多いらしいよ。」
ラインハルトさんも会話に加わってきました。
ユリアさんとユキナさんも私の方に視線を向けて私の進化、転職を待っています。
私は意を決して口を開きました。
「そうですね。職業の方は簒奪者にしようと思います。」
私はそう言うと簒奪者を選択しました。
<職業「簒奪者」への転職………完了。>
<スキル【軍団の指揮】を取得。>
<スキル【権力者特攻】を取得。>
<スキル【革命の意志】を取得。>
続いて種族の進化をします。
「種族の方は選択肢が1つしかないので迷う必要は無いですね。ショゴス・ロードになります。」
私はそう言って進化を実行しました。
<種族「ショゴス・ロード」への進化………完了。>
<称号「下級の奉仕種族」が称号「上級の独立種族」に変化。>
<称号「玉虫色の悪臭」が称号「究極の多形体」に変化。>
………
<スキル【状態異常耐性強化】を取得。>
<スキル【HP自動回復強化】を取得。>
<スキル【神代の叡智】を取得。>
<スキル【人化】を取得。>
<スキル【人を欺くもの】を取得。>
以前、進化した時と同様に多くのスキルを取得することができました。
私はそのスキルを順に確認していきます。
おや?
私は目についたそのスキルを使用してみました。
すると体がみるみるうちに形を変えました。
「リンちゃんそれって?」
私を見る皆の表情が驚いています。
それも当然です。
私は【人化】を使って人の姿になっていたのです。
部屋にある鏡で自分の姿を確認します。
そこには簡素な黒色のワンピースに身を包んだ黒髪ロングの少女が立っていました。
見た感じはリアルの私と同じ見た目です。
これが【人化】の効果なのですね。
私はそれを確認して皆の方に向き直り口を開きます。
「ショゴス・ロードのスキル【人化】を使いました。」
「なるほど、それで姿が変わったのですね。」
ハーロウさんは私の簡単な説明で理解したのかそう口にしました。
他の皆も安堵の表情をしながら口々に驚いたと言ってきました。
驚かせられたなら目論見通りです。
私はそんな彼らに笑みを返すのでした。
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