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6-8


◆ゼクス


私たちの周りには武器を構えた衛兵がいます。

私は彼らを見据えながら戦う覚悟を決めました。

その瞬間です。


「ひっ!!」

「な!?」

「いやぁああああああああ!!」

「あはははは!!!」

「来るなぁあああああああああああああ!!!!」


衛兵たちの口から悲鳴にも似たそんな叫び声が聞こえます。

いえ、衛兵だけではありません。

私たちを取り囲むゼクスの町の住民の中からも悲鳴が聞こえてきました。

皆私のスキルにより「恐怖」を感じているようです。

私はそれにほくそ笑みながらパーティメンバーに指示を出します。


「敵は数が多いです。ハーロウさんとユリアさんはすぐ魔物の召喚をお願いします。前衛組は後衛組を取り囲むように布陣してください。」


私のその言葉を聞いて皆はすぐに動いてくれました。

ハーロウさん、ユリアさんが召喚したアンデッドと悪魔を見て衛兵たちの「恐怖」はさらに助長されます。

私はそれを見ながら手近な衛兵に飛びかかった。

彼の体を飲み込み力一杯に叩き潰します。


「ああああああああああああああ!!!!」

「きゃあああああああああああ!!!」


それを見た衛兵たちは悲鳴を上げながら武器を振るいます。

私はそれを避けながら衛兵たちに触手を伸ばします。

彼らの首を捕え力を込めてへし折ります。


虐殺です。

時に飲み込みひき潰し。

時に首をへし折り。

時にナイフで心臓を一突きにします。


私だけではありません。

アキも、ラインハルトさんも、ハーロウさんも、ユキナさんも、ユリアさんも、皆が一丸となって衛兵を殺していきます。

それでも衛兵の数は減りません。

次から次へと衛兵がやってくるのです。

衛兵だけではありません。

時に武器を持った住民も私たちを殺そうと押し寄せてきました。

私たちはそれらの敵をなぎ倒していきます。


「リンさん!きりがありません!戦闘の目標を定めましょう!」


ハーロウさんがそう叫びました。

私は考えます。

どうしたらこの戦闘を終わらせることができるのか?

それには………。


「オーベさんを探しましょう!彼に先ほどの退去命令を撤回させれば勝利です!!」


「分かりましたならば行先は貴族街ですね!」


ハーロウさんはそう言うと魔法を放ちます。

そこに道が生まれました。

私たちは貴族街に向けてその道を走ります。

道中襲い来る衛兵と住民を殺しながら。


--


>>Side:アルドー


「緊急クエストだ!」


ゼクスの冒険者ギルドで依頼を物色中に唐突にギルドマスターがそう叫んだ。

緊急クエスト。

その言葉は初めて耳にする。

しかし、知らない訳では無かった。

それはこの町存続の危機に瀕した時に冒険者が強制的に受けさせられるクエストだ。

平和なこの町に何故そんなものがあるのか?

私にはその理由は分からなかった。

だからこそギルドマスターの次の言葉を待つ。


「現在、ゼクスの町で暴れまわるプレイヤーがいる!そのプレイヤーの討伐が今回の緊急クエストの内容だ!!」


ゼクスの町で暴れまわるプレイヤーだと!?

そんなものがいるとは………

そいつらが何を考えてそんなことをしているのかは分からない。

しかし、バカな奴らだ。

暴れまわるなら町の外でやればいいものを………。

私がそんなことを考えているとギルドマスターはそのプレイヤーの名前を叫んだ。


「プレイヤーの名前はリン、アキ、ラインハルト、ハーロウ、ユキナ、ユリアの6人だ!!」


本当に意外だった。

つい先ほどであった彼女たちがまさか下手人とは思わなかったのだ。

話した感じそんな乱暴なプレイヤーには思えなかったが………。

何が彼女たちにそんなことをさせたのだろう。


「もう一度繰り返す!!リン、アキ、ラインハルト、ハーロウ、ユキナ、ユリア。このプレイヤーを討伐することが今回の緊急クエストだ!!分かったらすぐに行け!!」


ギルドマスターのその言葉を聞いてその場にいた冒険者たちはすぐさま動き出した。

皆一様に戦意を高めている。


「アルドー、俺たちも。」


「分かっている。」


パーティメンバーに言われて私もすぐさまギルドを後にする。

どんな理由があるにしろ町中で暴れまわるのはやりすぎだ。

必ずこの彼女たちの暴挙を止めてやる。

私はそう意気込んでゼクスの町へと躍り出たのだった。


>>Side:アルドー End


--


私たちは貴族街に向けて進む中延々と押し寄せる敵と戦っていました。

一向に減る気配がありません。

それどころか先ほどから数が増えているように思えます。

きっと、町中に散っていた衛兵たちがここに集結しているのでしょう。

私がそんなことを考えていると不意に1人の男性が切りかかってきました。

彼の装備は衛兵のそれとは異なっていました。

しかし、住民とは違って装備がしっかりとしています。

私はそのことを疑問に思いながらも彼の体を触手で掴むと空高く持ち上げて地面に叩きつけました。


―グチャリ


肉がつぶれる嫌な音と共にその男は絶命し光の欠片へと姿を変えました。


「この野郎!!」


先ほどの男と同じで衛兵とも住民とも違う人がそんな声を上げなら剣を振るってきました。

私は再び触手を振るいます。

その勢いは鋭く彼の首を吹き飛ばして余りある勢いでした。

彼は首から上を失い力なく倒れます。

それを眺めながら私は周囲を見回しました。

よくよく見てみると衛兵でも住民でもない人たちは彼らだけではありませんでした。

徒党を組んで私たちに襲い掛かってくる姿から戦いのプロであることは間違いありません。

彼らは何なのでしょうか?

私がそんな疑問を頭に浮かべているとラインハルトさんが声を上げました。


「冒険者たちが混じっているよ!!もちろんプレイヤーも!!」


その声を聴いて納得します。

なるほど、先ほどから攻撃してくる衛兵でも住民でもない装備のしっかりとした方々は冒険者なのですね。

私は自分の中の疑問を解消しながら彼らを殺していきます。

冒険者だろうとやることは変わりありません。

立ち塞がるのならば殺すだけです。


「敵は状態異常「恐怖」と「狂気」を使うぞ!!RESが低い前衛は引け!!魔法使い系プレイヤーでけりをつけるぞ!!」


私のことを知っているプレイヤーがそう口にしました。

確かにその戦法は正しいのでしょう。

しかし………。


「私の目の前に耐久に難ありの魔法使いを並べていいのですか?」


私はそう言いながら何本もの触手を振るいます。

1人、また1人と魔法使いはその触手に蹂躙されていきます。


「ちくしょう!!………【フレイムランス】!!」

「………【ウィンドランス】!!」

「………【ストーンランス】!!」


いくつもの魔法が私に殺到します。

しかし、大したダメージにはなりません。

それもそのはずです。

ショゴスの耐久力は普通の魔物とは違うのです。

多少腕に覚えがある程度の魔法使いが放った魔法など小石と一緒です。


「この程度なら避けるまでもありません。」


私はそう言いながら彼らに向けて触手を振るいます。

それは鞭のようにしなって彼らの体を両断します。

光りの欠片となる彼らを眺めながら私は歩を進めます。


「来るなぁあああああ!!!………【ストーンウォール】!!」


おや、うまいこと石の壁を生み出して生き延びた冒険者がいますね。

彼女はなかなか状況が見えているようです。


「しかし、防御ばかりで攻撃ができないのならば意味はありません。」


私はそう言いながらその石の壁に体当たりします。

頑丈な石の壁もショゴスの巨体が体当たりをしたころで脆くも崩れてしまいました。


「あぁああああ………。」


石の壁の向こうには先ほどの魔法使いがしりもちをついていました。

彼女の目には私はどう映っているのでしょう?

そんなことを考えながら私は彼女を飲み込みました。

そして力を加えていきます。

彼女の体からみしりみしりときしむ音が聞こえてきます。

それでも力は緩めません。

次第にその音はぼきぼきと骨が折れる音へと変わっていきました。


「きゃあぁあああああああ!!」


甲高い悲鳴を上げます。

痛みに表情をゆがめている彼女を眺めながら私は更なる力を込めました。


―グチャリ


内臓の潰れる音とともに彼女の体から力が抜けます。

その直後、彼女は光りとなって虚空へと消えてきました。

魔法使いはこれで全部倒しましたね。

では、後ろに逃げていた戦士を処理していきましょう。


私は再び歩を進めます。

ゆっくりと歩きながら目についた戦士に触手を伸ばします。

彼らは一様に「恐怖」にかられていて満足に戦えません。

私はそれを眺めながら1人、また1人と処理していきました。

そう、戦いではないのです。

あくまで処理………作業です。

「恐怖」から棒立ちとなるもの、逃げだすもの、はたまた切りかかるもの。

皆一様に十全な実力を発揮できていません。

そんな人たちと戦いになるわけはありませんでした。

私は彼らを殺しながら貴族街に向けて歩き続けていました。

そんな時です………。


「リン。」


静かに私の名を呼ぶ声が聞こえました。

私はそちらに視線を送ります。

そこには真っ赤な鎧に身を包んだ剣士………アルドーさんが立っていました。


「アルドーさん?」


私の問いかけに彼は答えてくれません。

ゆっくりと私の前に歩み出ると腰に佩いた剣を抜き構えました。


「その様子を見るとアルドーさんも私に敵対するのですね?」


「ああ。お前たちの暴挙を見ていることはできない。」


「暴挙ですか………確かに何も知らない方にはそう見えるのかもしれませんね。」


それはすごく悲しいことです。

しかし、私はそう言われて止まるわけにはいかないのです。

他でもない私自身のために。


「容赦はしません。」


「それはこちらのセリフだ。」


私はアルドーさんに相対します。

彼と戦う意思を固めて………。


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― 新着の感想 ―
[一言] この展開は元々運営が想定していた道筋なのかな。 魔物プレイヤーの方が住民の好感度下がりやすい。 露骨な魔物プレイヤー排除運動に何も手を打たない。 最初から人類VS魔物って分けるより、この様…
[気になる点] きっとキャラクリ説明欄の片隅に「魔物系キャラクターは、住民や貴族からの好感度が下がりやすい為、理不尽な罵倒や状況に置かれる事もあります。 悪役プレイや虐げられたい方にお勧めです。」とか…
[良い点] 振り切ったプレイが爽快 [気になる点] 私はR15で平気だと思うけど、そう思わない方も居るかも?程度には描写が過激
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