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6-6


◆ゼクス


アルドーさんと別れた後私たちは再びゼクスの町を見て回りました。

中央広場を離れ私たちが活動するうえで主要となる冒険者ギルドや教会の位置を確認していきました。


「何でこんなところに魔物が………。」

「なんでもプレイヤーらしいぞ………。」

「フュンフ防衛戦で………。」


当初聞いていた通り町の人たちの対応は決して良いものではありませんでした。

対応する商店の主は明らかに嫌な顔をし、道行く人々は私たちの姿を見ては影口を漏らします。

私はそれを聞いて沸々と怒りが沸き立ってくるのを感じます。

それでも我慢をして私たちは町を回っていました。

そんな時です。


「あ!!お前は!!」


1人の男性プレイヤーが私たちを指さしながら大声を上げました。

そのプレイヤーは険しい表情をしながら速足で私の目の前まで歩いてきました。


「何でお前がここにいる!?」


この人は何を言っているのでしょう?

私は首を傾げて考え込みます。

私がここにいるのはゼクスに用があるからです。

そんなことは考えなくてもわかることでしょう。

何よりそんなことを見も知らぬ方に言われる筋合いはありません。

いえ、この方は私のことを知っているようですね。

何処かでお会いしたことがあるのでしょうか?


「あの、どちら様ですか?」


「くっ!!」


その瞬間私の横にいたラインハルトさんとハーロウさんが笑ったのが分かりました。

彼らはこの方のことを知っているのでしょうか?

そんなラインハルトさんたちの反応を見て男性プレイヤーは顔を真っ赤にします。


「おま、お前!!」


何か言葉を発そうとするもうまく声になりません。

私がその様子を不思議に思っていると横からハーロウさんが耳打ちしてくれました。


「この方はあれですよ。闘技大会の決勝トーナメントの1回戦でリンさんと戦った方です。」


「え!?ああ、確か………ゴリラさんでしたっけ?」


私がそう言った瞬間ラインハルトさんとハーロウさんは吹き出して笑いました。

そして目の前の男性は顔をますます真っ赤にして叫びます。


「誰がゴリラだ!?ゴライアスだ!!」


どうやら私が言った名前が間違えていたようです。


「これは失礼しました。そしてそのゴライアスさんは何の用ですか?」


私の言葉を聞いてなおも怒りをあらわにしながら彼は口を開きます。


「なんだその態度は!?魔物のくせに!!」


その言葉を聞いて思い出します。

そうでしたこの方は魔物排斥を掲げているプレイヤーの1人。

つまりは私の敵です。


「魔物のくせにとは何ですか?」


「うるさい!!お前ら魔物プレイヤーがいい顔してんじゃねえよ!!」


その手の相手とは今までだって会話が成立したことはありませんでした。

だからこそ私はそうそうに会話を諦めてしまおうと思いました。

その時です。


「どうしたゴライアス。」

「おい、こいつら………。」

「お、新しい得物か?」


ゴライアスさんの仲間でしょうか?

彼の周りに5人のプレイヤーがぞろぞろと集まってきました。

彼らの目は一様に私たち魔物プレイヤーを蔑むようなものでした。

類は友を呼ぶと言います。

ゴライアスさんの周りにいるプレイヤーも彼と同じく魔物プレイヤーを排斥しようとしている人たちなのでしょう。

それを見て私はますます苛立ちを覚えます。


「へっ!!次は前みたいにはいかないぞ!!」


そう言ってゴライアスさんがインベントリから槍を取り出します。

彼のその姿を見て周りに集まった彼の仲間たちも各々武器を取りました。


「それはこの場所で私たちと戦うということですか?」


「戦うんじゃない!魔物を駆除するだけだ!!」


私は周りを見回します。

私たちの騒動を察知した住民たちは皆距離を取っています。

これなら他の方に被害が出ることも無いでしょう。


「お、喧嘩か?」


ユキナさんが拳を打ち付け合わせながらそう言いました。

彼女はやる気満々のようです。

私は他の方々の様子を見ます。

ハーロウさんとユリアさんは仕方がないなと言った表情をしながら後ろに下がっています。

何かあれば手を貸してくれるでしょうが率先して何かをしようとは思っていないようです。

一方でアキ、ラインハルトさん、ユキナさんは既に武器を手に持ち臨戦態勢を整えています。

こちらは率先して戦おうとしている人たちです。

私は彼らの様子を見ながらゴライアスさんに向き直りました。


「容赦はしませんよ。」


「それはこっちのセリフだ!!やっちまえ!!」


ゴライアスさんがそう言った瞬間。


「ひっ!!」

「嫌ぁああああああああああ!!!!!!」

「来るなぁあああああああああああああ!!!!」


彼の仲間の数人が「恐怖」に顔を歪めました。

それはゴライアスさんも一緒です。

私に敵対したことでスキルの効果を受けているようです。


以前のように「恐怖」から我を忘れる程ではありませんが彼の動きは明らかに悪いです。

その隙を逃す手はありません。

私はすぐさまゴライアスさんに近寄りました。

それに反応してゴライアスさんは槍を突き出してきます。

しかし、遅いです。

私は突き出された彼の腕を絡め捕りました。

そのまま力を込めて捻じり上げ肩口から千切ってしまいます。


「ぎゃああああああああああああああああ!!!」


醜く悲鳴を上げるゴライアスさんを眺めながら他の方々に視線を向けます。

ゴライアスさん以外の方々はアキたちが対処しているようです。

彼女たちは危なげなく戦っています。

私が手を出す必要はないでしょう。

私は再びゴライアスさんに視線を送ります。

両腕を失い苦痛から顔を歪めながら地面を転がりまわる彼を見てこの後どうするかを考えこんでいました。

もう2度と魔物系プレイヤーを迫害しようなどと考えつかなくなるまで痛めつけてもいいかもしれない。

そんな怖い考えが浮かぶも頭を振ってそれを追い払います。

私は体を大きく広げてゴライアスさんを飲み込みひと思いに潰してしまいました。

彼は光の欠片となって消えていきます。

私がそれを眺めていた時………。


―ドッガン!


大きな音が後ろから聞こえました。

何かが壊れるような音です。

私はそちらに視線を向けると町の一角から土埃が立っていました。

その目の前にはユキナさんが頭を掻きながら「やってしまった。」っと言っているような顔をしていました。

土埃が晴れるとそこからゴライアスさんの仲間の1人が現れました。

彼は壁の穴から這い出てきました。

何となく予想がつきました。

ユキナさんに飛ばされた彼が家屋の壁を壊してしまったのでしょう。


私は呆れら様な視線をユキナさんに送ります。

彼女は私のそんな視線など知らずにその男に止めを刺してしましました。


―ドーン!!


またも家屋に多大な被害を出しながら………。

私はユキナさんの行いに頭を抱えながら周りを見回します。

他の方々もけりが付いたようです。

ゴライアスさんたちは皆が光の欠片となって虚空へ消えてしまいました。


これにて一件落着です。

そう思った矢先です。


「出てけ。」


不意に周りを取り囲む住民の中から声が聞こえました。


「この町から出てけ!!」


その声は先ほどよりも大きいものでした。


「そうだ!!乱暴な魔物はこの町から出ていけ!!」


それは1人だけではありません。

1人、2人とそれを口にする人は増えていきます。

終いには周りにいる住民全員から「出ていけ!」と声が上がるようになりました。

私はその状況に困惑を隠せませんでした。


「何故、私たちがそんなことを言われないといけないのでしょう?」


私がそう口にすると住民はしんと静まり返りました。

そして集団の中から杖をついた老人が私の前まで出てきて口を開きます。


「それはお前たちが乱暴な魔物だからじゃ。ゼクスにそんな魔物は必要ない。だからこの町から出てってくれ。」


至極丁寧な口調ではありましたが言っていることは先ほどまでの叫び声と何ら変わりはありません。

全く意味不明です。


「先ほどの喧嘩のことを指しているのであれば、あれは私たちが悪いわけではありません。私たちはあくまで喧嘩を売られた側です。あなた方が言う乱暴者とは喧嘩を売った側のことを言うのではないですか?」


「それでもお前たちが喧嘩を買わなければこんなことにはなら無かったじゃろう」


老人は杖で壊れた家屋を指してそう口にしました。

確かに彼の言う通りなのかもしれない。

しかし………。


「私たちが喧嘩を買わずとも彼らは私たちを害するために武力を振るったことでしょう。それともあなたは私たちに無抵抗で死ねと言うのですか?」


「そうだ。町に被害を出すくらいなら無抵抗に死ね。どうせプレイヤーは死んでも生き返るんだろ?」


老人のその言葉に私は怒りが沸々と湧き上がってきます。

いえ、老人だけではありません。

老人の言葉を聞いて「そうだ!そうだ!」と騒ぎ立てる周りの人たちにも憤りを感じます。

しかし、今はその怒りを押し込んで冷静に言葉を選びます。


「話になりません。生き返るからと言って死にたいわけではないのです。何度同じようなことがあろうとも私は無抵抗にやられることはありません。」


「だから乱暴者だと言っているのじゃ。そんなものはゼクスから出て行ってくれ。」


「嫌です。私たちは悪くない。それなのに私たちが罰を受けるのはおかしいです。」


私がそう断言するとまたも周りの人々が騒ぎ始めました。

皆口々に「出てけ!」と言います。

彼らの言い分を聞く余地はありません。

しかし、このまま放置してもいいとも思っていません。

何より鬱陶しいです。


私がそんなことを考えていると人混みの後方がざわめき出してきました。

ゆっくりと住民たちが左右に分かれて道を作ります。

その道の向こうから衛兵がやってきました。

衛兵たちはその道に等間隔に並ぶと周りの人々に目を配ります。

何事かと私が疑問に思っていると道の奥から豪奢な服に身を包んだ男性がやってきました。


「おお、貴族様!!」


老人がその男性を見てそう口にしました。

貴族?

そんな人が何故こんなところに来たのでしょう?

私はそんな疑問を頭に浮かべながら彼がこちらに歩いてくるのを眺めていました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 正直街の外にでて戦おうという選択肢が出てこない時点で意図的に展開のために知能落とされてませんか? それか最初からNPCの好感度はどうでもいいと考えてるか。ここまでの主人公を見る限りもう少し…
[気になる点] オンラインゲームでここまで差別的だと社会問題になりそうなのに運営が少し気楽に見える
[気になる点] あのさ、「出ていけ」がいう前に、「恐怖」が発動するのでは? 敵対された時点発動するスキルじゃないの? プレイヤー限定ならモンスターにも通じないし。
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