6-3
◆フュンフ=ゼクス街道 ボスエリア
「キュィイイイイイイイ!」
空高く飛ぶハイ・グレート・アルゲンタヴィスが甲高い声で鳴きます。
私たちはそれを眺めながら戦闘準備を整えていました。
既に私たちは魔物に補足されています。
準備に使える時間はそう多くないでしょう。
「………【アンデッドの一時召喚】!!」
「………【悪魔の一時召喚】!!」
ハーロウさんとユリアさんが魔物を召喚します。
彼らは魔物と共に上空のアルゲンタヴィスを牽制します。
しかし、攻撃は当たるもののアルゲンタヴィスが落ちてくる雰囲気はありません。
これは根気が必要かもしれません。
私がそんな風に意気込んでいると急にアルゲンタヴィスが滑空してきました。
狙いは………アキです。
「なんの!」
アキはするりとアルゲンタヴィスの攻撃を回避するとすれ違いざまに魔物の体に剣を振るいます。
しかし、目測を誤ったのかその剣は虚空を切りました。
「あれ?失敗、失敗。」
アキはあっけからんとそう言います。
しかし、今のでおおよそのタイミングはつかめました。
もしも私に攻撃してくることがあればカウンターを叩きこむことができるでしょう。
そんなことを考えているとアルゲンタヴィスがまたも滑空攻撃をしてきました。
次のターゲットはラインハルトさんです。
ラインハルトさんはアルゲンタヴィスの動きに合わせて剣を振るいます。
その剣はアルゲンタヴィスの翼に大きな傷を与えました。
バランスを崩して地面に激突するアルゲンタヴィスにラインハルトさんが追撃を加えます。
このまま決着がつけば簡単なのですがそこはボスモンスター。
簡単にはいきません。
アルゲンタヴィスはすぐさま体勢を整えると再び大空に飛び立ちました。
ラインハルトさんが去っていくアルゲンタヴィス目掛けてスキル【破衝斬】を飛ばしますがそれも回避されてしまいます。
さて、私も見ているばかりではなく攻撃に参加しましょう。
と言ってもどうやって攻撃しましょうか?
敵は上空を高速で飛び回っています。
触手を伸ばしても追いつける気がしません。
私がそんなことを考えているとアルゲンタヴィスが動きを変えました。
3度目ともなるアルゲンタヴィスの攻撃。
次の標的は私です。
私はアルゲンタヴィスが高速で降下してくるところに狙いを定めて体を大きく広げました。
そしてアルゲンタヴィスの巨体を飲み込むようにして捕まえてしまいます。
捻り潰す様にしてアルゲンタヴィスに攻撃を加えていきます。
ミシリミシリと言う音とともにアルゲンタヴィスのHPが減っているのを感じ取れます。
しかし、アルゲンタヴィスもただ攻撃を受けるだけではありません。
私の体内でもがきながら必死に這い出ようと頑張ります。
私は逃がしてなるものかと力を込めて押さえつけます。
アルゲンタヴィスが飛び立てないのを見ていた皆さんが私の周りに集まってきました。
こうなれば後は袋叩きにするだけですね。
「私が抑えているので攻撃をお願いします。」
私は皆さんにそう言ってアルゲンタヴィスを押さえつけることに専念します。
皆さんは思い思いに武器を構え、私の体を避けつつアルゲンタヴィスに攻撃を加えていきます。
さすがボスモンスターです。
これだけやっても倒せません。
アルゲンタヴィスに1分、2分と攻撃を加え続けていましたがそれでも倒れる兆しがありません。
遂には10分もの時間が経過したその瞬間………遂にユキナさんの一撃がアルゲンタヴィスのHPを0にしました。
アルゲンタヴィスは光の欠片となって虚空へと消えていきます。
私たちはそれを見て疲労感と達成感を感じるのでした。
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アルゲンタヴィスを討伐して私たちはしばし休息をとっていました。
と言ってもアルゲンタヴィスははめ殺ししてしまったためそこまで疲労は感じていません。
それでも気持ちを落ち着けるため休憩は必要と思いました。
「お疲れー。」
私が木陰でぼーっとしていると不意に声をかけてくる人がいました。
大きな花を咲かせた植物系モンスター………マンイーターのマテリーネさんです。
「マテリーネさんもお疲れ様です。」
「私は守られていただけだよー。」
彼女はそう言って笑い声をこぼします。
私はそれを見て少し可笑しくて一緒に笑うのでした。
「それで、何か御用でしょうか?」
「うん。私ねー、ゼクスに着いたら薬作り以外にも手を出してみようと思っているんだー。そこで、もしも素材があったら譲って欲しいなと思ってお願いしに来たんだー。」
「薬作り以外ですか?と言うと以前言っていたようなホムンクルスの作成とかですか?」
「うん。そーだよー。」
彼女は簡単に言ってのけるが今まで取り掛かっていなかったということは相当に難易度が高いことなのではないでしょうか?
私は少し疑問に思い彼女にそれを質問します。
「興味本位なのですがホムンクルスの作成は難しいことなのですか?」
「そーだね。プレイヤーに求められる技術はスキルで何とかならないこともないけど、素材と設備がだいぶ面倒くさいねー。」
「素材と設備ですか?」
「そうそう。まー、設備はイヴァノエに任せちゃうんだけどね。」
確かイヴァノエさんの職業は建築士でした。
そのイヴァノエさんに任せるということは相当に大きな設備が必要となるのでしょう。
「で、素材の採取を戦闘職の人にお願いしているのさー。リンちゃんも暇な時にでいいから素材を見つけといてもらえると助かるなー。」
「はい。大丈夫ですよ。どのような素材が必要なのでしょうか?」
「基本的には何でも大丈夫だよー。ホムンクルスと言っても肉体は人間のそれに縛られる必要はないからねー。植物だろうと鉱物だろうと素材になるよー。それに私が使わなくても誰かが使うしー。」
「それもそうですね。」
私たちのクランには生産職の方が多く所属しています。
それならどのような素材であれ使う人が出てくることでしょう。
「分かりました。ゼクスの町での素材の採取、承りました。」
「ありがとー。」
彼女はそう言うとアキのもとへと向かっていきました。
きっと同じ話をするのでしょう。
私はそれを見て生産職の方は大変だなと再認識するのでした。
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しばしの休憩を経て私たちは再びゼクスに向けて歩きはじめました。
既にボスエリアを越えています。
もう間もなくゼクスにたどり着けることでしょう。
私は期待を胸にしながら足を進めていました。
そんな時ハーロウさんが話しかけてきました。
「リンさん、少しいいでしょうか?」
「何でしょうか?」
「フュンフを出る前に話していた住民の好感度のことで覚えておいてほしいことがありまして………。」
「はい。」
フュンフを立つ前に話していた住民の好感度のことと言うと………ゼクスに行ってもプレイヤーに対する扱いは大差ないということでしょうか?
私は嫌な予感を抑えながらハーロウさんの言葉を待ちます。
「先のフュンフ防衛戦でプレイヤーに対する住民の好感度は下がりました。これはフュンフの町だけでなく近隣の町でも同じです。」
「はい。それは以前に聞きましたね。」
「そうですね。この住民の好感度に関してなんですが検証班の話では人間種のプレイヤーよりも魔物種のプレイヤーの方が下がりやすい傾向があるとのことです。」
「え!?」
ハーロウさんのその言葉はにわかには信じられないものでした。
人間種よりも魔物種の方が下がりやすい?
何でそんなことがあるのでしょうか?
私がそんな疑問を頭に浮かべている間にハーロウさんの説明は続きます。
「今、我々の好感度は下がっています。もしも、さらに下がることがあると場合によっては住民が敵対することになる恐れがあります。」
「………それは、住民から攻撃を受けることがあるということでしょうか?」
「分かりません。未だ好感度をそこまで下げたプレイヤーは出ていません。しかし、可能性の1つとして考えておかなくてはならないと思います。」
もしも住民と敵対することになったら私はどうするべきなのでしょうか………。
私はそれを自問自答します。
「今までの私の行いに恥じ入るものは無かったと思っています。これからだってそんなことはしないつもりです。そのうえで住民と敵対することになるのなら私は戦います。」
「リンさん?」
「単純に好き嫌いで敵意を向けてくる方が間違っています。私は住民の行いを正すために戦います。」
「………そうですか。確かにそのような考え方もあるのでしょう。そうならないことを願いますが、もしもそうなった時のことを考えて私も身の振り方を決めておきます。」
「はい。ありがとうございます、ハーロウさん。」
私はハーロウさんにお礼を言って再び考えに耽ります。
もしも住民と敵対することになったら………。
そうならないことを切に願います。
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