5-14 とある運営のお話4
◆リースリング・オンライン運営会社
>>Side:とあるゲーム開発者
私は同僚とともに画面に映し出された結果を確認していた。
「無事に襲撃イベントも終わったな。」
「無事なのか?」
「これと言って問題は無かっただろう?」
同僚の言う通り運営上の問題は発生しなかった。
しかし、フュンフの町には壮絶な傷を残すこととなったのだ。
これを問題ととらえずにいいのだろうか?
「評価としては可判定ぐらいかな?魔物を完全に撃退したのはいいが町に甚大な被害を出しているからな。」
「そうだな。」
「となると冒険者ギルドからの報酬は問題なく貰えるが町の住民の好感度が下がる感じか。」
そう。
今回の襲撃イベントではその達成度に応じてプレイヤーが得られる報酬が変わってくる。
最良の結果を残せば冒険者ギルドが当初約束していた以上の報酬を受け取れるだけでなく町の住民からの好感度も上がる。
一方で今回のように町に被害を出してしまった場合は住民の好感度が下がってしまうのだ。
「難易度的には今回のイベントは少し難しすぎたのではないか?」
「そうか?そうでもないと思うぞ。あいつが考えたシナリオにしてはまともだったと俺は思っているよ。」
「いや、プレイヤーが一致団結できているのにこれだけの被害が出たのはまずいだろう?」
「そこは運用が良くなかったんだろ。前面の敵はNPC冒険者部隊とわずかなプレイヤーだけで対処可能だったのにそこに全力投入してたからな。そのせいで後ろの敵への対処が遅れてしまった。何より後ろの警戒が疎かすぎたね。」
確かにプレイヤーの動きは褒められたものではなかったが決しておかしなものではなかっただろう。
プレイヤーは別に戦争のプロという訳では無いのだ。
当然、兵の運用には未熟なところがあるだろう。
それを想定せずにいたのは運営のミスではないだろうか?
「その表情を見るに難易度設定は運営のミスだとでも思っているのか?」
同僚が私の顔を見ながらそんなことを言った。
私は少し驚きを見せながら口を開く。
「ああ。もう少し難易度は下げても良かったと思っている。」
「その辺は見る人によって評価が変わるから何とも言えないよ。もしもおまえがそう思うなら今後の課題として頭の隅にでも覚えておけばいい。」
その通りなのかもしれないな。
できれば他のメンバーともこの辺は話し合いたいが生憎と今日は別の打ち合わせが多数入っていて開発本部に他に人間はいなかった。
「それよりもこのプレイヤーやばいんじゃないか?」
同僚はそう言って1人のプレイヤーを画面に映します。
それは要注意監視対象にしていたショゴスのプレイヤーだ。
「やばいって何が?」
「好感度だよ。」
「ああ、そう言うことか。それは俺も思っていた。」
今回の襲撃イベントで参加プレイヤーに対する住民の好感度は下がっていた。
今のプレイヤー全体の好感度を見るとこの好感度下落で危険域に行くプレイヤーはいない。
しかし、あと何か1つでも問題があればすぐに危険域になるプレイヤーが何人かいるのだ。
彼女はそのプレイヤーの1人だ。
「過去の行動から見るにもしも街中でプレイヤーに絡まれたら撃退するだろう?そうなると危険域になる恐れがあるぞ。」
「それとなく警告を出すか?」
「そうだな。一応次の開発会議で新しい機能として提案してみるか。」
私たちはどんな機能が良いか話を続けた。
その時である………。
―ガヤガヤ
私たちが話をしていると会議室の方から喧騒が聞こえてきた。
「何やってるんだ?」
「多分、技術主任だろう。」
「ああ、あの人か。あの人技術力はあるんだが人間的に俺は苦手だ。」
「私だってそうだよ。」
リースリング・オンライン開発本部の技術主任は技術力のある変人だ。
彼のおかげでこのゲームはできたと言っても過言ではないほどの技術力を持っているのにその人間性には皆が眉を顰める。
「そう言えば行き過ぎた魔物排斥プレイヤーに運営が手を出すかって話に待ったをかけたのは技術主任だっけ?」
「あの人だけではないがそうだな。」
「何を考えているんだあの人?」
「変人の考えは分からないよ。」
そんな話をしながら私は再び画面に視線を戻した。
そこにはプレイヤーたちがフュンフ防衛戦と呼ぶ戦いの結果が表示されていた。
>>Side:とあるゲーム開発者 End
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