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◆フュンフ
相も変わらず私たち14人はフュンフの中央広場にいました。
人数もさることながら全員が魔物系プレイヤーとあって目立っていることでしょう。
周りのプレイヤーらしき人々の視線が刺さります。
しかし、そんなものが気にならないくらいに今の私は気分が良かったのです。
それもそのはずです。
今しがた私が構想しているクランの設立に関して全員の合意が得られたからです。
皆は一様にクラン設立を心待ちにしています。
そんな中ハーロウさんが口を開きました。
「ユキナさんも合意頂けたということでこれで全員の合意が得られました。リンさん改めてあなたのクランに参加させてください。」
そう言いながらハーロウさんは軽く頭を下げます。
周りにいた他の皆さんもそれに倣って頭を下げます。
私は彼のそんな態度に慌てながら返答を返します。
「そ、そんな。頭を上げてください。こちらこそ参加していただきありがとうございます。」
私がそう言うとハーロウさんは微笑みながら口を開きました。
「それでは、クランを作りましょう。リンさんクランの設立には何かアイテムは必要ですか?」
「えっと、大丈夫です。私が持っている「クラン設立許可証」があれば他には何も必要ないみたいです。場所も特に指定はありません。この場でアイテムを使用すればそれでクランの設立は完了します。」
「そうですか。では、さっそくやってみましょうか?」
「はい。」
私は彼に返事を返すとインベントリから「クラン設立許可証」の使用を選択しました。
「あ………。」
「どうかしましたか?」
「あのクランの名前はどうしましょうか?」
私がアイテムを使用するとクランの名前を入力するように求められました。
そこで手が止まってしまいました。
クランの名前など考えていなかったからです。
「それはリンさんがお好きに決めてください。」
「と言われても何も考えていなかったので。皆さん一緒に考えていただけないでしょうか?」
私がそう言うと皆さん頭を悩ませてくださいます。
しかし、一向に案は出てきません。
それはそうです。
こんなものを急に聞いてもいい案なんて出てこないでしょう。
これは一度時間を置いて考えたほうがいいかな?
私がそんなことを考えているとラインハルトさんが口を開きました。
「リンちゃんはこのクランをどんなクランにしたいんだ?」
「えっとクランの目的ですか?それは皆で助け合いができるクランを目指しています。助け合いながらこの世界を楽しめたら最高だなと思ってクランの設立を提案させていただきました。」
「この世界を楽しむですか………。」
私の言葉を拾ってハーロウさんがそう呟きました。
そして何か閃いたのか顔を明るくしながら口を開きます。
「では、こんなのはどうでしょうか?フィール・シュパース。少し意味は違いますがドイツ語で「楽しむ」と意味する言葉です。」
「フィール・シュパース。綺麗な言葉ですね。」
「うん。僕も良いと思うよ。」
私とラインハルトさんがそう言うと皆さんも口々に良いんじゃないかと言ってくださいました。
皆の意見が一致しました。
「決めました私たちのクランはフィール・シュパース。その名の通りこの世界を楽しみつくすことを目指しましょう。」
私が皆さんにそう言うと歓声が上がりました。
皆さんが喜んでくれてよかったです。
私は胸を撫でおろしながらクラン設立の操作を実行しました。
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「あの。ラインハルトさん、ハーロウさん。」
私はおずおずと2人に話しかけました。
「何だいリンちゃん?」
「何でしょうか?」
「クランマスターに関してなんですが本当に私で良いのでしょうか?」
私が2人に相談したかったのは他でもありません。
クラン「フィール・シュパース」のクランマスターに関してです。
なし崩し的にクランを設立した私がクランマスターとなっていますが実際に皆さんをまとめているのはラインハルトさんやハーロウさんです。
ならば私ではなくどちらかにやってもらう方が良いのではないかと考えたのです。
しかし、それに対して2人の意見は………。
「それはリンちゃんしか無いと思うよ。なんて言ったってクランの設立者だしね。」
「そうですね。今回私たちはリンさんが設立するクランが良いと思ったから集まったのです。ならばリンさんがクランマスターをするほうがいいでしょう。」
こう言ってクランマスターの座を固辞しているのでした。
2人のその反応に私は困ってしまいます。
「私にクランマスターができるでしょうか?」
「そう難しく考えなくてもいいと思います。それこそリンさんが困っていれば私たちが助けます。フィール・シュパースは助け合いをするクランなのでしょう?」
「はい。」
ハーロウさんにそう言われてしまえばもう断ることはできません。
私はクランマスターとして頑張ることを決意しました。
「あの、ではサブマスターをラインハルトさんかハーロウさんにやっていただきたいのですが、駄目でしょうか?」
「そう言う細かいのは僕じゃなくてハーロウの方が得意だよ。」
私が2人に対してそうお願いするとラインハルトさんから早速ハーロウさんを推薦する声が上がります。
それを聞いてハーロウさんは呆れたような表情をしますがラインハルトさんの言っていることが間違いではないからか強く否定はしませんでした。
「そうですね。ラインハルトに任せるよりは私がやった方が良いでしょう。いいですよ、サブマスターの任を承りました。」
ハーロウさんはそう言って快く承諾してくれました。
私は早速クラン設定の画面からサブマスターをハーロウさんに設定しました。
その設定が終わるとハーロウさんが口を開きました。
「さて、ではさっそくではありますが私たちのクランについて相談したいことがあります。」
「は、はい。」
ハーロウさんのその言葉に少し緊張します。
何か問題でもあったのでしょうか?
私は体を固くしながら続く彼の言葉を待ちました。
「私たちのクランの本拠地をどこにしましょうか?」
「クランの本拠地ですか?」
「はい。クランはクランハウスという施設を持つことができます。このクランハウスをどの町で購入しましょうか?という相談です。」
私もクランについては事前に公式HPでも確認していました。
そこには確かにクランハウスについての説明もありました。
各クランは所有する物件をクランハウスに設定することができます。
このクランハウスはクランの共有財産を管理するための場所です。
例えば今ギルドに預けているアイテムは個々人しか取り出すことができませんがクランハウスに預けておくと全員がそれを取り出すことができるようになります。
生産素材などを態々手渡ししなくてよくなるためこれは早めに取り掛かった方が良いと言うのも納得できます。
「このフュンフではだめでしょうか?物流の要所であれば何かと便利だと思うのですが。」
「そうですね。しかし、生産素材を購入しようとすると生産地よりも割高になってしまいます。」
「はい。それは仕方がないのではないですか?」
「そうかもしれませんが、フィール・シュパースは半分近くが生産職のためできれば生産地に拠点を持ちたいと思います。我々戦闘職はそれこそあっちへこっちへと旅するのに対して生産職の方は基本的には拠点から動くことは無いですからね。」
ハーロウさんに言われて気付きます。
確かにミケルさんたち生産職のことを考えるのであれば生産地に近い方が良いでしょう。
それこそツヴァイのように生産者のための町がこの大陸にもあるかもしれません。
ハーロウさんはそれを知っているからこそこのような提案ができたのでしょうか?
「何処か候補があるのですか?」
「そうですね。フュンフ北の町ゼクスは素材が豊富な鉱山と森林が近くにあると聞いています。また、フュンフの西の町ズィーベンは未開の地と呼ばれる場所に面しているそうです。このどちらかが良いのではないでしょうか?」
ゼクスとズィーベン。
その町の名前と特色は以前聞いていました。
その特色を考えるとゼクスはツヴァイのような町なのでしょうか?
私がそのような疑問を頭に浮かべているとハーロウさんが口を開きました。
「まあ、どちらの町もプレイヤーがまだ行っていないので、NPCからの情報となるようですが。」
彼はそう言いながら頭を掻きます。
その表情はどこか申し訳なさそうにしているようでした。
そんな彼に声をかける人がいます。
ラインハルトさんです。
「プレイヤーがまだ行っていないということは無いみたいだよ。」
「え?」
「ズィーベンの方はまだみたいだけど、ゼクスとアハトにはプレイヤー到達したらしいよ。」
「本当ですか!?」
ハーロウさんは驚きながらラインハルトさんの言葉を聞き返しました。
「ああ。さっき、ユキナたちに聞いた。なんかそれもあって今日のフュンフは活気づいているみたいだよ。俺もこれに続くんだーって言っているプレイヤーが多いみたい。」
「それで、その2つの町はどのような町なのですか?」
「えっと、ゼクスに関してはNPCからの情報通りだってさ。半ば予想している通りツヴァイと同じように生産素材が豊富に手に入る町だって。そして、この町近くの鉱山でミスリルが見つかったって言っていたね。」
ミスリルですか。
ツヴァイの鉱山でも手に入れることができたあの金属がこちらの大陸にもあったのですね。
「そして、アハトの方はアルベルツ王国の王都だね。だからこそ今までのどの町よりも大きくそして活気にあふれているらしいよ。それこそ物流都市であるこのフュンフよりも市場は活気に満ちているってさ。そして、アハトの先、港町ノインに行くための街道があるらしい。」
私とハーロウさんはラインハルトさんの話を静かに聞いていました。
そのうえで考えます。
ズィーベンの情報はいまだ完全ではないもののゼクスかアハトかで考えるのであれば断然ゼクスでしょう。
だからこそ私は口を開きます。
「ハーロウさん。これならクランの本拠地はゼクスで良いのではないでしょうか?」
「そうですね。生産素材が豊富に手に入るとわかっているのであればそれを拒む理由はありません。」
「なら、僕たちはゼクス行きを目指せばいいのかな?」
ラインハルトさんの言葉に頷き返すことで肯定を示します。
そして、ハーロウさんは再び皆に聞こえる声で話始めました。
「皆さん、今しがたリンさんと相談したのですが私たちのクラン、フィール・シュパースの本拠地はゼクスにしようと思います。ゼクスは生産素材が豊富に手に入る都市です。生産職が多くいる私たちのクランには丁度良いでしょう。」
皆さん静かにハーロウさんの言葉を聞いています。
その表情は真剣そのものです。
「そこで、このクランの最初の目的はゼクスにたどり着くことです。このフュンフで準備を整えましたらすぐさままた旅に出ましょう。」
ハーロウさんのその言葉への反応は歓声でした。
皆この決定を受け入れてくれたようです。
そのことが嬉しく私はついつい笑みを浮かべてしまいます。
そんなときでした………。
「魔物だ!!魔物の集団が来ているぞ!!」
そう叫ぶ冒険者の声が中央広場に響き渡りました。
活動報告でも書かせていただきましたが生活環境の変化に伴い8月以降更新頻度が落ちます
大変申し訳ありませんが、ご理解いただければ助かります<(_ _)>
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