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4-5


◆フィーア 路地裏


立ち並ぶ家々が濃い影を作り出す路地裏で私たちはマリサさんに懇願されていました。


「お願いします!弟を探すのを手伝ってください!」


彼女の必死な様相を見て私は慌ててしまいます。

そして、ラインハルトさんたちに助けを求めるように視線を送ります。

それに気づいたのかラインハルトさんが助け舟を出します。


「落ち着いて。まずは頭を上げてもらえないかな?」


その声色は落ち着いたものでありました。

それを聞いてかマリサさんは頭を上げます。

その表情は心配であることを隠せない様子でした。


「詳しく聞かせてもらえるかな?」


ラインハルトさんがなおも落ち着いた声色で問いかけます。

それを皮切りにマリサさんはぽつりぽつりと状況の説明を始めました。


「はい。実は弟が3日ほど前から帰ってこないのです。私は心配になって探しているのですがこの3日間何の手掛かりも見つからずで………」


「なるほど、弟がそれだけの時間帰らないというのはよくあることなのかい?」


「いえ、こんな事初めてです。よく1人で町の中で遊んでいますがちゃんと夜には帰ってくるのです。」


「親御さんはどうしているんだい?」


「私たちの両親は亡くなっていて………」


マリサさんが言いよどみながら下を向きました。

ラインハルトさんは慌てて謝罪の言葉を口にします。


「これは申し訳ない。」


「良いんです。もうずいぶんと前の話になりますから。それで、私は昼間働いているので弟は1人で遊ぶことが多いのです。」


「いなくなる前に何か言ってはいなかったかい?」


「特には………いつも通りでした。」


その言葉を最後にしばしの沈黙が当りを包ました。

しばらく考えたかのようなしぐさをした後ラインハルトさんは口を開きました。


「最後に聞かせてくれ。何故、冒険者に頼もうと思ったんだい?」


「あの、冒険者に限った話ではないのですが、他の方にも弟を探すのを手伝ってほしいとお願いはしているんです。多くの方は快く承諾してくださるのですが一部の方からはそう言うのは冒険者に依頼しろと言われてしまって………」


「なるほど、それで依頼を受けてくれる冒険者を探していたのか。」


ラインハルトさんはマリサさんの話を聞いて納得の色を示しました。


「はい。冒険者ギルドには2日前に依頼を出していたのですが今まで受けてくださる方がいなかったので、それでこうして直接お願いしていたのです。」


「わかったよ。さて、どうする?この依頼。」


ラインハルトさんは私とハーロウさんに向かってそう言いました。

マリサさんの表情はなおも不安そうな色を示しています。

私の心は決まっています。

だからこそ強い決意をもって口を開きました。


「私はこの依頼受けます。」


「うん、私も受けてもいいと思うよ。」


ハーロウさんも私と同じようにそう口にしました。

それを聞いてラインハルトさんは大きく頷きました。


「よし。マリサさん。その依頼、僕たちが受けようじゃないか。」


「本当ですか!ありがとうございます!」


私たちがその依頼を受けると知るとマリサさんは喜びの声を上げて、またも深々と頭を下げました。

それを見ながら私は彼女の弟を見つけ出す決意を強めるのでした。


--


「さて、そうと決まれば作戦会議だ。」


彼女の依頼を受けると決断した後、私たちは冒険者ギルドへと来ていました。

そこで彼女が出していた依頼を受ける旨を伝えるためです。

今はそれも終えて次に何から取り掛かるかと悩んでいるところでした。


「目的は行方不明のマリサさんの弟を探すこと。行方不明の原因として考えられるのは………なんだろう?」


ラインハルトさんがそんなことを言いながら首を傾げました。

その様子にため息を吐きながらハーロウさんが口を開きます。


「考えなくてはならないのはその弟さんが自らの意思で帰ってこないのかそうでないのかです。」


「なるほど。つまり?」


「自らの意思で帰ってこない場合は足取りを追うことでおおよそ居場所の特定が可能です。弟さんがうまく痕跡を隠していなければと条件は付きますが。」


ハーロウさんがそう言いながらマリサさんの方を見ました。


「弟はそんな技術を持っていません。」


マリサさんはそう断言します。

ならば、足取りを追えば何かわかるということでしょうか?


「なるほど。この足取りを追うというのはすでにマリサさんがこの3日間でやっていると思っているのですが。どうでしょうか?」


「はい。確かに弟の姿を見た人を探して町中で聞き込みしました。いつも通りに遊んでいる姿が目撃されていたみたいなのですがあるところを境に途端に目撃者がいなくなっていました。」


「いつも通りに遊んでいたことが確認されているなら話は早いです。弟さんはおそらく何かしらの事件か事故に巻き込まれて戻ってこれない状況にいることでしょう。」


それを聞いてマリサさんの顔が青ざめます。

当然です。

大切な弟が事故や事件に巻き込まれたと言われれば誰だって心配に思うことでしょう。

それこそ最悪を想像してしまうことだってあるでしょう。


「まずは弟さんの足跡が無くなったという場所に行ってみましょう。マリサさんその場所はどこなのでしょうか?」


「は、はい。フィーアの旧港です。」


「旧港?」


「はい。今は使われなくなった古い港です。その近辺で弟が目撃されていました。」


「なるほど。じゃあ、そこに行こう。」


ラインハルトさんの言葉を受けて私たちは動き出しました。

まずは、その旧港に向かいましょう。


--


―ぞろぞろ、ぞろぞろ


旧港に向かう途中私たちはフィーアの中央広場を通りかかりました。

その時、私たちの行く手を阻むように人々がやってきました。

その数は多く30人弱います。

彼、彼女たちは皆武装をしていることから冒険者の方なのでしょう。

私たちを取り囲むようにしてこちらを睨みつけてきます。


「邪魔だぞ。」


ラインハルトさんが彼らに声をかけました。

それを聞いても彼らは道を開けません。

私が疑問に思っていると彼らの中の1人が口を開きました。


「我々は反魔物同盟だ。悪逆な魔物の排除のために活動している。」


反魔物同盟。

それは先ほどハーロウさんに聞いた組織です。

魔物プレイヤー排斥のために活動している組織だとか………

私は静かに警戒心と敵意を高めます。

それはラインハルトさんやハーロウさんも同じのようです。

静かに武器に手をやりました。


「それで、その反魔物同盟が何の用なんだ?」


ラインハルトさんが腰に下剣に手を添えながらそう聞きます。


「目的は明白であろう。先の闘技大会にて非道をもって人間を虐殺した魔物リンにこの場で天罰を与える。我々はそのために集まったのだ!」


闘技大会は分かりますが非道とは何のことでしょう?

私はいたって普通に戦っただけですよ。


「何が普通なものか!!」


あれ、心の中で思っていたことに返答が返ってきました。


「リンちゃん、口から漏れてるよ………」


ラインハルトさんにそう言われて恥ずかしくなります。

しかし、事実なので仕方がありませんね。


「おまえは未知の手段をもって「恐怖」をばらまいたではないか!?それが非道でないと何故言える!?」


彼らもヒートアップしてきました。

これは1戦覚悟しないといけませんね。

何より私自身が彼らを許すことができません。

魔物系プレイヤーだからと言う理由で何故迫害されなくてはならないのでしょうか?


「マリサさん少し離れていてください。」


私の横にいるマリサさんに離れているように伝えます。

そして周りの様子を伺いました。

いつの間にかこの周辺にいた人たちは退避していました。

これなら少しぐらい暴れても安心ですね。


「ラインハルトさん、ハーロウさん。彼らの目的は私のようなので私1人でやります。」


「いいのかい?」


「はい。マリサさんのことお願いします。」


私がそう言うとラインハルトさんとハーロウさんはマリサさんを守るように彼女の近くによりました。

私は1歩進んで反魔物同盟と名乗る彼らと相対します。


「一応念のために言っておきます。発言を取り消して早々に消えなさい。今ならまだ見逃してあげますよ。」


「なにを!!」


彼のその言葉を皮切りに反魔物同盟の皆が武器を抜きました。

それを見て私はため息を吐きます。

そして諦めて彼らを倒すことを決意しました。

その時です………


「ひっ!!」

「嫌だ!!!!!」

「何で「恐怖」にかかっているのよ!!」

「対策はばっちりじゃなかったのか!!!!」


彼らの中から悲鳴が漏れます。

私の敵対者となったためスキルが効果を発揮したのでしょう。

当然と言えば当然のことです。

しかし、ここで暴れられると周りへの被害が大きくなってしまいますね。

私は早々に終わらせることを決意します。


「すぐに楽にしてあげますよ。」


私はそう言うと近くにいた剣士に飛びかかりました。

大きく広げたショゴスの体で彼を飲み込みそして膨大なSTRを利用して潰してしまいます。


「か、か、かか、かかれ!!」


1人のプレイヤーが怯えながらもそう口にしました。

私に「恐怖」しているものに負けるわけがありません。

私は次々とくる彼らを1人また1人と飲み込みつぶしていきます。


「………【フレイムランス】!!」

「………【ウィンドランス】!!」

「………【ウォータランス】!!」

「………【ストーンランス】!!」


私に向けて魔法が飛んできます。

避けると周りに被害が出てしまいそうです。

仕方ありませんね。

私はそれらを体で受けました。

しかし、大したダメージはありません。


「危ないことをしますね。」


私はそう言いながら体を細く伸ばします。

そして、魔法使い達目掛けて触手を飛ばしました。


「く、来るな!!」

「止めて!!!!!!!」

「ぎゃぁああああ!!」


魔法使い達は必死にショゴスの触手から逃れようとするもその努力は無駄に終わります。

私は魔法使い達を掴むと手元に引き寄せます。

そして巨体でもって飲み込んでしまうと他のプレイヤー同様にひき潰してしまいました。


「い、嫌だ!!」

「こんなところにいられるか!!!!」

「私は抜けるわ!!!」


そう言いながら逃げようとするプレイヤーがいます。

しかし、逃がしたりしません。

無法を働いた報いは受けてもらいます。


「逃がしませんよ。」


私は先ほどと同じように触手を伸ばして彼らを捕まえます。

触手は彼らの動きを抑えながら首へと伸びていきます。

私は触手に力を加えて彼らの首をへし折ります。


あれだけいた反魔物同盟を名乗るプレイヤーも残すところあと1人なりました。

私は彼の目の前まで歩み寄ります。


「この野郎!!!」


彼は剣を高く振り上げ私目掛けて振り下ろしました。

それを堂々と受け止めます。

ダメージはたいしてありませんでした。

受け止めた剣と腕を触手で絡め捕り、そのまま彼の腕をへし折ります。


「ぎゃぁああああああああああああ!!」


醜く叫ぶ彼の悲鳴を聞きながら私は口を開きました。


「これに懲りたら魔物系プレイヤーを狙うのはやめなさい。」


そう言いながら私は彼を飲み込みます。

そして彼の体を絞るように圧力をかけていきます。

ボキボキと彼の全身の骨が折れる音が聞こえます。

しばらくすると光のかけらへと姿を変えて消えてしまいました。

それを見て私は達成感を感じていました。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] しかしゲームでまで差別運動をするなんて、ゲーマーの風上にもおけないクズプレイヤー共だな。
[一言] ゲームなのだから自分が知らない攻撃手段だろうと、運営(開発陣)が用意した正当な攻撃手段なのにな。
[一言] どっちが悪逆なのでしょうか… 住民に聞いてみましょう❗
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