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EX1-1 アキのお話1


◆フュンフ近くの村


>>Side:アキ


「古城を調べて欲しいですか?」


冒険者ギルド依頼を受けてとある村に来ていた私は村長と名乗るものから依頼の説明を受けていた。


「はい。近頃打ち捨てられた古城の近くでアンデッドを見たという村民がいるのです。もちろんこのアンデッドを討伐してほしいのですが同時に古城にアンデッドが出没するようになった原因があればそちらも対処して欲しいのです。」


「………。」


村長の話を聞いて私は考えてしまう。

元々、冒険者ギルドで受けた依頼はアンデッドの討伐のみだった。

それがここにきて古城の調査もとなるとは思っていなかったのだ。

単純に依頼にないからと断っても良いのだが目の前の村長は心の底から不安に思っていると顔に書いている。

そんな依頼を断るのは後味が悪い。

何より今回の依頼はアンデッドの討伐だけにしては報酬が多い。

尚更依頼を断るのは気が引ける。

私は観念して口を開く。


「分かりました。古城の調査もお受けいたします。」


「おお!」


私の返答に村長は好色を浮かべる。

それを見ながら私は「ただし………」と言葉を続けた。


「私一人の手に負えないと判断した時は原因の対処まではお約束できません。」


「ありがとうございます。それで構いません。」


私が言った条件に村長は顔色を変えずにそう口にした。

私はその様子を見て内心ため息をつきたい気持ちを味わっていた。


--


町はずれの古城の調査とアンデッド討伐。

当初の予定とは異なるがその依頼を受けた私が初めに取り掛かったのは情報収集だった。

村長の話では村民がアンデッドの姿を確認したと言う。

まずはその村民に会って話を聞いてみようと思う。

その村民とは年若い女性でした。


「アンデッドについてですか?」


「うん。古城の近くでアンデッドを見かけたと村長に聞いたよ。そのアンデッドの種類などを聞いてもいいかな?」


「はい。大丈夫です。」


彼女はそう言うと少し黙ってしまった。

目を閉じその時のことを思い出しているようだ。

しばらくして口を開き、話始めた。


「多分あれはゾンビだったと思います。」


「ゾンビ?」


「はい。肌の色が悪くのろのろと動く様はまさしくゾンビでした。」


彼女の言うゾンビとは所謂動く死体だ。

彼女言う通り見た目は腐り果てた肉を持った人間だ。

そして緩慢な動きで人を襲う。


「そのゾンビは1匹だったの?」


「私が見たのは1匹だけです。しかし他にいないとも限りません。私はその1匹を見つけたとき急いで村へと逃げてきてしまいましたから。」


ゾンビが1匹だけ歩き回っていた。

それ自体は可笑しなことではないのだが何故だか私はそのことが気になった。

しかし、それを考えていても仕方がない。

私は次の質問をするために口を開く。


「そのゾンビに遭遇したのはいつ頃かしら?」


「えっと、2週間ほど前の昼過ぎです。」


2週間。

どのような原因で発生したかにもよるが場合によっては物凄く数を増やしているかもしれない。


「過去にこの辺でアンデッドが出たってことはある?」


「えっと、すみません。私は知りません。村長当たりなら詳しいことを知っていると思うのですが………」


「そうなの御免なさいね。でも、そう言うということはこの辺はアンデッドが良く出るというわけではないのね?」


「はい。私が聞く限りはこれが初めてです。」


普段は発生しないはずのアンデッドが出現した。

そしてその討伐と調査の依頼。

プレイヤーの視点で見てみれば特殊なクエストの予感がするわね。

私はそれを思い少しこの依頼を進めるのが楽しみになってきた。


「村長から古城の調査を依頼されたのだけれど古城とアンデッドの話をしたのはあなたってことで良いの?」


「はい。」


「何で、その2つがつながっていると感じたのかしら?」


「それは、ゾンビの服装が上等なもののように感じられたからです。」


「ゾンビの服装?」


「はい。この辺の村々の人たちが着ているような服とは違った貴族が着るような服に思えたのです。この辺でそう言った高貴な方に関係するのが古城だったので関係があるのではないかと村長に相談したんです。」


高貴な服を着たゾンビ。

ますますきな臭い感じがしてきた。

これは本当に特殊なクエストかもしれない。

私はますます胸を高鳴らせながら質問を続けた。


「あなたは何故古城まで行っていたの?」


「えっと、古城に用があったのではなくてその手前。この村の西側に広がる林に行っていたのです。そこで薬草を採取していました。祖母が薬師なのでその手伝いで。」


「そうだったの。じゃあ、アンデッドと言うのは林の中にいたの?」


「いえ、林を抜けた先の草原にいました。私は林の中から隠れてそれを見ていたのです。」


「なるほど。ありがとう。参考になったわ。」


「いえ、どういたしまして。」


そう言って私はその場を立ち去ろうとする。

しかし、その時1つ聞き忘れていたことがあることを思い出した。


「あ、もう1つ聞いてもいいかな?」


「は、はい。何でしょうか?」


「その古城って何のお城か知っている?」


「すみません。昔の王族のお城としか聞いたことが無いのです。その辺も村長なら詳しいことを知っていると思います。」


「そうなの。わかったわ。ありがとう。」


私はそう言ってその場を立ち去りました。


--


私は再び村長宅にお邪魔していた。

目的は古城のアンデッドについて村長にも確認を取るためだ。

村長は私の訪問を快く受け入れてくれた。


「そして、何の御用でしょうか?」


「アンデッドの調査に入る前にいくつか村でも情報を集めておこうと思いまして。それで村長にもお話を聞かせてほしいと思い来ました。」


「そうでしたか。はい、是非聞いてください。」


村長はそう言うと私の目の前に座り話を聞く姿勢を整えた。

私はそれを確認して口を開きます。


「先ほどアンデッドを見たという女性の方にも話を聞いたのですが過去にこの辺でアンデッドが出たことは無いのでしょうか?」


「ふむ。彼女は知りませんが過去にアンデッドが出たことはあります。ちょうど40年程前になります。この村の東に広がる草原に強大な魔物が出現したとあって国が討伐隊を派遣しました。その魔物は多くの犠牲を出して討伐することができたのですが、その後その時の死者がアンデッドとなる事件がありました。」


「なるほど。そのアンデッドは今でも出没するのですか?」


「いえ、討伐隊がアンデッド化したとあって国はすぐさま対策を取りました。現在は1匹たりとも残っていないはずです。」


過去に出た強大な魔物は今回関係無いのだろうか?

いや、問題となっている古城付近は村の西側、魔物が出現したのは村の東側だから関係は無いのかな。


「古城近くで見かけたアンデッドは上等な服を着ていたと聞きました。それで思い当たるのが古城であるとも………。本当に他の要因は考えられないのですか?」


「はい。この辺はフュンフの町にほど近いと言っても街道からは外れています。そのためこの辺を訪れる貴族の方はいません。」


確かにこの辺の村々は街道から大きく外れている。

特産品と呼べるものも特にないため特別用が無い限りはここに来ることは無いだろう。

普段町で生活している貴族ならば尚更だ。


「古城とは何の城なんですか?」


「私も詳しくは知りません。遥か昔の王族が暮らしていた城と先代より聞いています。」


「遥か昔と言うのはどれくらいなのでしょう?」


「すみません。それもわかりません。少なくとも今のアルベルツ王国が興るよりも昔なので300年以上は昔のことになります。」


確かゲームの設定に説明があったわね。

今いる国………アルベルツ王国ができたのは300年前。

その前はこの大陸中にいくつもの国があったが300年前にこの国ができてからおよそ100年かけて大陸中の国を平定していったと。

今では大陸にはアルベルツ王国のみとなった。

そうなるとその古城とはアルベルツ王国ができるより前の国の物ってこと?

確かにそれは今生きる人には何が何だか分からないよね。


「最後に1つ良いでしょうか?」


「はい。何でしょうか?」


「今までその古城からアンデッドが出てきたと言うことは無いのですよね?」


「はい。私は聞いたことがありません。」


そうなると本当に古城に原因があるのか怪しくなってくるな。

まあ、古城に原因があるのか無いのかは行ってみればわかるか。

どちらにしろ調査依頼のために一度は古城に行かないといけないのだから、まずは古城に行ってみようかな。


「お時間を取っていただきありがとうございます。」


「いえ、こちらこそ。調査の方よろしくお願いいたします。」


私は村長にお礼を言ってその場を後にした。

とりあえず村での情報収集はこれで十分でしょう。

そう思う私は古城に向けて足を動かす。


>>Side:アキ End

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