3-12
◆イベントエリア
私は観戦エリアで準決勝第2試合の様子を見ていました。
対戦カードはラインハルトさん対ハーロウさんです。
しかし、もうすでに勝負はついているのでしょう。
ラインハルトさんはハーロウさんが召喚したスケルトンの殆どを切り倒し、ハーロウさんに接敵しています。
接近戦でハーロウさんがラインハルトさんに勝つ手段はありません。
私の予想通りほどなくしてラインハルトさんがハーロウさんのHPを0にしました。
この瞬間私の最後の対戦相手が決まりました。
ラインハルトさんです。
--
「久しぶりだね。こうして戦うのは。」
「はい。以前ツヴァイの路地裏で決闘した依頼になりますね。」
フィールドに立った私たちはそんな会話を繰り広げます。
全身鎧のため分かりにくいラインハルトさんの表情はきっと笑っているのでしょう。
だって、私もそうなのだから………。
「次は負けませんよ。」
「いいや、今度も勝たせてもらうよ。」
以前の決闘ではラインハルトさんに負けてしまいました。
でも、今の私はあの時よりも強くなっています。
絶対に負けません。
私はそう強く意気込むのでした。
カウントダウンが始まります。
………3。
ラインハルトさんが徐に剣を構えます。
私はミスリルナイフを取り出しません。
以前の決闘でそれが意味をなさないことを知っています。
………2。
ラインハルトさんの全身から漏れ出る威圧感は彼が本気であることを示します。
私もそれに負けじと気合いを入れなおします。
………1。
息を整えその瞬間を今か今かと待ち続けます。
会場中の音が消えていき自分が集中しているのが分かります。
………0。
その瞬間、私は地を駆けます。
ラインハルトさんは斬撃を飛ばすことができます。
そのため距離を取っていては不利になると思ったのです。
高いAGIを利用して接近する私に対してラインハルトさんは落ち着いて構えています。
後一足で攻撃できる範囲だという時でした。
ラインハルトさんが剣を振るいます。
私はそれを回避してなおも近づこうと地を蹴ります。
しかし、それを見越していたかのように眼前にラインハルトさんの剣が迫ります。
私はとっさに距離を取ります。
「もう一度!!」
私は再び地を蹴ってラインハルトさんに近づこうと試みます。
またも私の動きを遮ったのは彼の斬撃でした。
私が近寄ろうとすると剣を振るって私の進行方向を塞ぎます。
「これじゃあ近寄れません………」
上手い。
今まで戦ってきた誰よりもその剣捌きは上手いと思わせるもでした。
その事が少し嬉しくなります。
「ふふふ。」
自然と笑いが漏れ出ます。
私は今強敵と戦えていることに喜びを感じていたのです。
「1方向から攻撃するのが駄目なら………これでどうですか!!!」
私はそう言って体を細く伸ばして4本の触手を生み出します。
その触手はそれぞれが独立した動きでラインハルトさんに襲い掛かります。
瞬間、ラインハルトさんの剣が煌きました。
「つっ!!」
4本の触手すべてが切られました。
いえ、切断まではいっていません。
それでも強い衝撃でもって弾かれてしまいました。
ショゴスの肉体には痛みはありません。
だからこそ冷静に私はそれを見ることができました。
ラインハルトさんは4度剣を振るって触手の先端を叩き伏せたのです。
そして触手が動きを止めた瞬間にラインハルトさんは大きく距離を取ります。
「逃がしません!!」
ここで距離を取られれば一方的に攻撃されてしまいます。
私は再び触手を伸ばしラインハルトさんを追います。
「4本で足りないのなら………」
触手の数を増やします。
4本、8本、12本。
遂には24本の触手をもってラインハルトさんを追い詰めにかかります。
ラインハルトさんはその触手に捕まるまいと剣を振るい続けます。
しかし、さすがに私の方が手数が多いです。
少しずつラインハルトさんの逃げ場を奪っていきついには………。
「む!!!」
「とりました!!!!」
ラインハルトさんの左手を触手が捕まえた。
こうなってしまえば後は力勝負です。
私はラインハルトさんの左手を目一杯に引っ張り彼の姿勢を崩しにかかりました。
ラインハルトさんは体中に力を入れてそれに抵抗しようとしますがSTRの差かそれは失敗に終わります。
姿勢を崩したラインハルトさんにさらに触手が迫ります。
遂には全身を覆うように捕えられたラインハルトさんを私は飲み込んでしまいました。
さて、ここで油断してはいけません。
以前はこの状態から脱出されてしまいました。
私はラインハルトさんの右腕をしっかりと固定して彼がスキルを使えないようにします。
そして彼の全身を砕くために押しつぶすのでした。
そこから決着まで時間はかかりませんでした。
バキバキと言う金属が砕ける音とともにラインハルトさんの鎧の肉体は砕け散りました。
そして光のかけらとなって虚空へと消えていくのでした。
私はそれを見ながら遅れてきた勝利の実感を噛みしめて笑みを浮かべるのでした。
第1回イベント闘技大会の優勝者は私に決まりました。
--
「コングラチュレーション!!!!!!」
突然大声とともに会場の中央に黒猫………ナイさんが現れました。
「皆素晴らしい試合だったよ!!」
彼は宙に浮いた状態で会場中を見回しながらそう口にしました。
その表情はどこか笑っているようでした。
「並みいる強敵を倒し見事優勝したリンちゃんに拍手を!!」
ナイさんがそう言うと疎らな拍手が起こります。
それはしばらくすると会場に広がりました。
それを受けて私は胸の内からこみ上げてくる喜びに幸福を感じるのでした。
「さて最終的な成績を発表するよ。皆、中央を見てくれ。」
ナイさんに言われて私は会場中央を見上げます。
そこには大きなウィンドウが表示されていました。
====================
第1位 リン
第2位 ラインハルト
第3位 アルドー
第3位 ハーロウ
第5位 エヴァ
第5位 マシロ
第5位 アキ
第5位 ステン
………
====================
私はその表示を見て殊更嬉しさを噛みしめていました。
第1位の欄にはでかでかと私の名前が入っていたからです。
「さて………。みんなお楽しみの賞品の発表だ!!」
ナイさんのその言葉を聞いて私は視線をナイさんに戻した。
そうでした優勝者には豪華な賞品があると最初に言っていました。
私はナイさんの次の言葉を心待ちにします。
「優勝者に送られる賞品は3つだ。まず1つ目は賞金、そして2つ目は称号「初代闘技大会優勝者」だ。そして3つ目は………。」
ナイさんはそう言って言葉を溜めます。
会場中の視線がナイさんに集中しています。
そしてゆっくりとナイさんは口を開きました。
「アイテム「クラン設立許可証」だ。」
その瞬間会場中がしんと静まりました。
クランとは何でしょう?
私は首を傾げながらナイさんの次の言葉を待ちます。
しかし、ナイさんが言葉を発するより先に会場中が沸き立ったのです。
「クランって何のことだよ!?」
「もしかして新要素か!?」
「うおぉおおお俺もクランを作りたいぞ!!」
皆がそんなことを口にしています。
正直、何をそんなに熱狂しているのか私には理解できませんでした。
「皆静かにね。この後重大発表があるよ。」
ナイさんがそう言うと会場中がまたも静まり返った。
ナイさんの言う重大発表と言うものを皆が心待ちにしているのです。
「さて、先ほどの賞品からおおよそ予想はできていると思うけど、この度アップデートが実施されることになった。アップデートの内容はクランシステムの導入だ!!!」
その瞬間再び会場中が沸き立ちました。
その喧騒を眺めながら私は再び思うのです。
クランって何ですか?
「皆、アップデートを楽しみにしてくれたまえ!!これにて第1回のイベントを閉幕する。」
ナイさんのその言葉を聞いて皆は一層、騒ぎ立てます。
私はそれについていけずに1人ぽつりと立ち尽くすのでした。
そして、思うのです。
クランっていったい何なんですか?
VRゲーム[SF]ランキング日間1位/週間4位ありがとうございます^ ^
これからも本作を楽しんでいただければ幸いです
--
よろしければブックマーク登録と評価をお願いいたします<(_ _)>




