3-8
◆イベントエリア
「完全に反対側だね。」
「そうだね。」
闘技大会の予選が終わり私とアキは発表された決勝トーナメントの組み合わせを確認していました。
私の名前はトーナメントの左端にアキの名前はトーナメントの右端に書かれていました。
もし戦うことになっても決勝になります。
アキはそのことに内心安堵しているんか朗らかな笑みを浮かべています。
私はアキのその反応にムッとしながらも自分の対戦相手に注意を向けました。
「えっと、ゴライアスさん?誰でしょう?」
「ん?ああ、リンの相手ね。予選第1グループの勝者で槍使いの人だよ。」
アキのその話を聞いて思い出します。
魔物排斥を訴える野蛮な人ですね。
つまりは私の敵です。
その事を思い私は密かに闘志を燃やすのでした。
--
ほどなくして決勝トーナメントが始まります。
私は第1試合です。
華々しく決めてあげましょう。
そう決意をしながら私はフィールドへと転送されました。
目の前には長槍を持った男、ゴライアスさんが立っていました。
これが私の敵ですね。
私は睨めつけるようにして彼を観察しました。
それを知ってか知らずか彼は唐突に話始めます。
「なんでここに魔物がいるかね。」
その表情は私のことを嘲るようなあるいは蔑むようなものでした。
私はそのことを内心で憤慨しながら彼に問いかけます。
「なんでとはどういうことでしょう?」
「闘技大会と言えば人間の技を競うための場だ。そんな場所に魔物の分際で来てるんじゃねえよ。」
「魔物とてプレイヤーに変わりはありません。」
「プレイヤーとかは関係ないね。魔物は人間のサンドバックだ。」
その言葉からもひしひしと感じます。
ゴライアスさんは魔物を遥か格下に見ているのだと。
その事が殊更私を苛立たせます。
「ずいぶんなことを言ってくれますね。」
「なんだ怒ったのか?怒っても何も怖くないぞ。言っておくけど予選のようにはいかないからな。おまえの状態異常はRESで抵抗が可能だとわかっているんだ。十分に対策してきた俺には効かないぜ。」
「そうなのですか?」
状態異常にRESで対抗可能。
それは初めて知りました。
しかし、対策したからなんだというのでしょうか。
私は今までそれに頼った戦いをしてきたことはありません。
「自分のことなのに知らないとかやっぱり雑魚は雑魚だな。」
ゴライアスさんはそう言うと武器を構えます。
程なくして試合開始のカウントダウンが始まりました。
私もミスリルナイフを取り出し構えました。
カウントが0になったその瞬間………。
「ひっ!!!!」
彼が顔面を蒼白にして後ずさりします。
その様子は予選でも見ました。
どうやら状態異常「恐怖」または「狂気」にかかっているようですね。
「な、なんでなんだ!?対策したはずだろう!?なんで俺は「恐怖」しているんだよ!?」
彼がわめき散らします。
その姿は先ほどまでの強者然としたものとは大きくかけ離れていました。
私はそれを哀れに思いながら口を開きます。
「対策が不十分だったのでしょう。」
そう言いながら私は悠然と彼に向かって歩みだします。
「来るな!!来るな!!!!」
彼は手に持った槍を適当に振り回します。
しかし、そんな攻撃に当たる私ではありませんでした。
右へ左へ、上へ下へと槍を振り回す彼の表情は恐怖に歪んでいました。
―カン!、カラカラ
彼が大上段から振り下ろした槍を私が回避した直後。
地面を強く打ちすぎた彼はその手から槍を取り落としてしまった。
慌てて拾おうと屈むもすでに眼前には私の姿があります。
屈んだ姿勢でとっさに後ろに下がろうとした彼はしりもちをついてしまいました。
「哀れですね。でも手心は加えませんよ。」
私はそう言うと自らの体を大きく広げて彼を飲み込んでしまいました。
私の体の中でもがき苦しむゴライアスさんに私はなおも声をかけます。
「これに懲りたら、魔物系だからとプレイヤーを迫害するのは止めてください。」
その声を最後に私は体に力を入れます。
ゴライアスさんの全身の骨が折れる音を聞きながら私は勝利を確信しました。
ほどなくして彼は光りのかけらへと姿を変えてしまいました。
予選と同じく歓声が上がることはありませんでした。
その静かな幕引きに若干の後ろめたさを感じながらも私はフィールドから観戦エリアへと戻されるのでした。
--
私は観戦エリアにいるアキのもとへと戻りました。
「お疲れ。」
「うん。」
アキが私を労います。
フィールドに目を向けるとすでに第4試合が始まっていました。
「リンに悲報です。」
「なに?」
「リンの第2回戦の相手も魔物排斥の過激派です。」
「はい?」
アキの言っていることが一瞬理解できませんでした。
魔物排斥の過激派と言うことは先ほど戦ったゴライアスさんと同じような人と言うことです。
またも私の胸の内に怒りがこみ上げてくるのを感じます。
「どんな人?」
「カーラって言う純魔法職だね。」
カーラさん。
その名前を聞いて私はなおさら闘志を燃やします。
魔物排斥を謳う人に絶対に負けたりしません。
--
トーナメントは順調に進みました。
しばらくして2回戦が行われます。
私は当然の如く第1試合でした。
フィールドで対峙する女性、カーラさんを見て私は声をかけます。
「何で魔物プレイヤーを迫害するのですか?」
「スライムのくせして何様のつもり?」
「聞いているのは私です。」
「な、なによ。凄んだって怖くないんだからね!言っておくけど私のRESはゴライアスの倍はあるんだから!あなたの切り札は通用しないわよ!」
話が通じません。
今は状態異常「恐怖」「狂気」のことは聞いていません。
何よりそれが切り札だと公言したこともありません。
そんな勘違いに勘違いを重ねた回答を聞き私は先ほどの質問への答えは諦めてしまっていました。
そんな時です………。
「私だって最初は我慢しようと思ったよ………。」
カーラさんがぽつりぽつりと語りだしました。
「でも、しょうがないじゃない。魔物ってやっぱり気持ち悪いのよ。その気持ち悪さは敵だから許されるのに何で仲間に魔物がいるの?意味が分からないわ。」
「それなら魔物系プレイヤーと距離を取るだけでいいじゃないですか。何で迫害するのですか?」
「魔物が町にいること自体が我慢ならないのよ!魔物は町に入ってこないでよ!!」
彼女のその物言いはあまりにも暴論でした。
自分が我慢できないから私たちが我慢しろと言っているのです。
そんなこと許されるはずがありません。
「それにあいつよ。」
「あいつ?」
「そう。あいつみたいなのがいるなら魔物系プレイヤーはいない方が良いのよ!」
彼女のその言葉を私は理解できません。
しかし、続けて質問することはできませんでした。
直後に試合開始のカウントダウンが始まったからです。
私は気持ちを切り替えて目の前の戦いに集中します。
カウントが0になります。
「速攻で終わらせてもらうわよ………【ウィンドアロー】!!」
先に動いたのはカーラさんだった。
彼女は最も早い風魔法を使って私を攻撃してきた。
私は横に飛んで見えない風の矢を避けます。
「猪口才な!!【ウィンドアロー】!!【ウィンドアロー】!!」
カーラさんが魔法を連発します。
クールタイムが短いことを考えると何か特殊なスキルを持っているのでしょうか?
しかし、今それを知るすべはありません。
知ったところで意味もありません。
私は右に左に飛びながらカーラさんの攻撃を避け続けます。
そして合間合間に彼女との距離を詰めていくのです。
「何でよ!!………【フレイムウォール】!!」
瞬間炎の壁が私とカーラさんの間に生まれました。
しかし、そんなのは関係ありません。
私はすかさずカーラさん目掛けて飛びかかります。
当然炎の壁に焼かれますが私の膨大なHPはわずかに量を減らしただけにとどまりました。
飛びかかった私はミスリルナイフをカーラさんの喉目掛けて振るいます。
「かふゅ、がぁ、あぁあああ!!」
声にならない音を漏らすカーラさんを後目に私はたて続けに攻撃を仕掛けます。
「私は魔物排斥を訴える人を許しはしません。」
体を小さくした私はカーラさんの肩に乗ってそう呟きます。
直後にミスリルナイフを彼女の右目に突き立てました。
「ぐぁああ、あああぁああ。」
喉を裂かれたカーラさんは満足に悲鳴を上げることもできません。
口の中に溜まった血がその声をかき消してしまいます。
「あなたがどんな思いを持って魔物系プレイヤーを迫害しているのは分かりません。」
私はなおもカーラさんに語り掛けます。
彼女にそれを聞いている余裕はないでしょう。
それでも語り掛けます。
「それでも迫害する以上は私の敵です。」
続いて私はカーラさんの左目を抉った。
持っていた杖を放り投げて両手で目を抑えるカーラさんを見ながら私はなおも続けます。
「敵には容赦しません。徹底的に叩きます。もう魔物を迫害しようだなんて思わなくなるまで徹底的に………。」
そう言いながら私はカーラさんの首を絞めます。
ショゴスのSTRで締め上げられたカーラさんは必死に逃げ出そうとするも叶いません。
次第に顔は土気色になっていき、抵抗が弱くなります。
そしてついにはボキリと言う首の骨が折れる音とともに光のかけらとなって消えて行ってしまいました。
またも、歓声が上がることはありません。
でもそれも仕方ないでしょう。
それだけ凄惨な試合だったのですから。
それにしても試合前に行っていたあいつとはだれのことでしょう。
私はそのことを考えながらフィールドを後にするのでした。
よろしければブックマーク登録と評価をお願いいたします<(_ _)>




