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1-3


◆アイン 中央広場


真っ白な空間で光に包まれたかと思うと気づけば別の場所に私は立っていました。

そこはヨーロッパの古い町並みを思い起こさせるような雰囲気漂う町の広場でした。

広場の中央には噴水が設置されいて、留処なく流れる水がキラキラと輝いています。

広場の外周部には屋台や露店が軒を連ねていて、あたかも外国の観光地のようでした。


えっと、明菜はログインしたら連絡を頂戴と言っていましたね。

なら、すぐに連絡を………。

確か明菜のプレイヤーネームはアキでしたね。

これで良いですね。


私はメッセージ機能を使ってアキにログインしたことを知らせました。

そしてしばらく待っていると返信がきました。


『今向かうから待ってて。多分10分くらい。』


そのメッセージを見て私は微笑むのでした。

このゲームでは外よりも12倍速く時間が進みます。

そのため私のログインが1分遅れれば12分こちらの世界で待ちぼうけすることになります。

私がいつログインできるか分からないのだから町の外に行っていても良かったのですが。

この感じだと町の中で待っていたみたいですね。


そんな風にメッセージを眺めていると不意に背後から声がしました。


「何でこんなところにスライムなんて雑魚モンスターがいるんだぁ?」


そちらに目をやると、そこにはいかにもやんちゃしてますと言った感じの金髪の男が立っていました。

見た目や雰囲気から中学生くらいでしょうか?

このゲームは人間に近い種族の場合実際の自分の実際の身長や体形から大きく変更することができません。

そのため、その見通しに間違いはないことでしょう。


「なんだこれぁ?」


そんなことを言いながら金髪男は私を踏みつぶそうとします。

私は踏みつぶされてはかなわないと横に飛んでそれを回避します。


「ん?なんで避けるんだよ!」


意地になって金髪男がさらに踏みつけようとします。

私はそれを何度も横に飛んで回避します。


「くっそ、むかつく!」


なおも踏みつけようとする男の足を後ろに大きく飛んで避けます。

そしてここで初めて私は口を開きました。


「いい加減にしてください。」


「あ!?」


「さっきからなんですか?人を足蹴にするなんてどういう教育を受けているんですか?」


私がそう言うと金髪男はきょとんとした表情をして立ち尽くしていました。

そしてゆっくりと手を上げると私を指さし、口を開きます。


「おまえプレイヤーか!?」


「そうですが何か?ここにいるのだからプレイヤーなのは当たり前でしょう?それともそんなことも分からないほどに頭の出来が悪いのですか?そうだとしたら大変失礼なことを口にしました。あなたの短慮さは教育のせいでは無くてあなたの頭のせいですね。」


先ほどから何度も踏みつけようとする彼の行動に私自身相当頭に来ていたのでしょう。

彼に対して諭す様に口を開いたが気が付けばそんな毒舌が飛び出していました。

そんな私の言葉を聞いて彼は顔を真っ赤にしています。


「ふざけんじゃねぇ!!誰の頭が悪いって!?てめぇ、ぶっ殺してやる!!」


そう言って剣を抜く金髪男。

彼が持っているのは所謂ロングソードと言われるものでしょうか?

しっかりとした出来のその剣は決して彼が始めたばかりの初心者ではないことを物語っていました。


「死ね!!」


彼はそう言って私目掛けて剣を振るいます。

私はそれをギリギリで回避します。


彼の剣はすべてが大ぶりです。

これなら当たることは無いでしょう。

いや、当たる方が難しいくらいです。

そんなことを考えながら彼が振るう剣を2度、3度と避け続けます。


彼がひときわ大きく振りかぶって力いっぱい剣を振り下ろします。

私はそれを後ろに飛んで避けました。


―カキン


彼が剣を石畳に叩きつけました。

その衝撃で彼が踏鞴を踏むも勢いを殺しきれずにしりもちをつきます。


私たちの騒ぎを聞きつけて集まったやじうまがくすくすと笑い声を漏らしました。

俯いていて彼の表情は見えません。

しかし、彼の耳が真っ赤に染まっているのが見て取れました。


「ふふふ。」


その様子を見て思わず笑いが漏れてしまいます。

それを聞いてますます金髪男は耳を真っ赤にします。

次の瞬間………。

顔を上げ私を睨みつけながら怒鳴るように口を開きました。


「決闘だ!!」


「………は?」


私は彼の言っていることを理解できませんでした。

いや、何を言っているのかは分かりましたがどうしてそんな考えに至ったのかが分からなかったのです。


「だから、決闘しろ!!」


彼は徐に立ち上がりながら再びそう口にしました。


「なんでですか?」


彼の思考回路は大丈夫でしょうか?

心配になります。

ここまで来ると呆れるよりも哀れに思うばかりでした。


「なんででもだ!!とにかく決闘しろ!!」


「だからなんで私がそれをしないといけないのでしょう?」


「決闘ならおまえを切れるからだ!!」


「意味が分からない………。」


リースリングの決闘システムは1人対1人またはパーティ対パーティで行われる殺し合いです。

ルールは単純で決められた範囲内で勝敗が付くまで戦うというだけです。

勝敗の付け方ははHPが0になるまで戦い続けるものから1撃を当てるまでと言ったものまで幅広いです。

中でもHPが0になるまで戦い続けるものは全損ルールと呼ばれ当然負けた方はデスペナルティを受けます。


確かに彼の言う通り決闘を行えばどちらかが負けとなるまで逃げることはできなくなるでしょう。

しかし、今こうして彼の攻撃を避けきっている私を切れるかどうかは別です。

何より私がそれをするメリットがありません。


<プレイヤー「マルディン」から決闘を申し込まれました。>


そんなことを考えていると金髪男………マルディンから決闘を申し込まれました。

私はノータイムでそれを拒否します。


「何で受けないんだよ!?」


「私にメリットないんだから当然でしょう。」


そう言い放つとマルディンは私に食って掛かろうとします。

そして、何か口にしようとしては言葉が見つからずを繰り返しました。

しばらくしてもういいかなと思い私がその場を離れようとしたとき、再びマルディンが口を開きました。


「ならこれでいいだろ!?」


<プレイヤー「マルディン」から決闘を申し込まれました。>


またも届いた決闘を知らせるシステムメッセージを見ました。

何も変わってないじゃ………いや、違いますね。

今度はマルディンがその所持金のすべてをかけていました。

その額なんと500,000リース。


………高いのか低いのか分からないですね。

初心者が最初に持っているお金が1,000リースだからそれからすれば大金なのかもしれません。

それでもそこそこ進んでいるプレイヤーなんじゃ無いのかしら?

それでこれだけってことはきっとどこかに預けているのでしょうか?

まあ、どうでもいいですが………。


私は再びマルディンの方を向きました。

そこには目を血走らせてこちらを睨むマルディンの姿がありました。


これは受けないといつまでも粘着してきますね。

はぁ………。

めんどくさいです。


私は渋々決闘のルールを確認しました。


決着方法HP全損って、これってデスペナルティってことでしょう?

この決着方法で良いのかしら?

私は始めたばかりだからアイテムなんてたいして持ってないから問題ないですが彼は違うはずでしょう。

私は呆れながらもその決闘ルールに同意しました。


そして決闘が始まります。

私の視界に開始の時間を知らせるカウントダウンが映りました。

それは彼の方も同じでしょう。


………3。


決闘のスペースを確保するため適当に彼と距離を取っておいます。

私の意図が理解できたのか彼の方も距離を取りました。

周りにいるギャラリーも察してスペースを空けてくれます。


………2。


インベントリから初期装備のナイフを取り出しそれを装備します。


………1。


彼の方に目をやりカウントダウンが0になるのを待ちます。

彼も準備万端。

剣を構えて今か今かと待ちかねていました。


………0。


決闘が始まりました。

瞬間、私と彼は地を蹴ります。

一瞬で2人の距離は縮まります。


間合いはロングソードを使っているマルディンの方が広いです。

当然、先に攻撃に移ったのはマルディンでした。

大きく振り上げた剣を私目掛けて振り下ろします。


「死ねぇえええええええええ!!」


私はその攻撃をギリギリで回避します。

そんの数mmのところまで攻撃を引き付けて僅かに横に飛んでの回避。

それはまさに紙一重の回避と言えるでしょう。


「態々声に出して攻撃してくれるなんて親切なんですね?」


そうやって相手を挑発しながら私は彼が振り下ろした右手に飛び移りました。

そのまま、スライムの流動的な体を駆使して、肘、二の腕と駆けあがっていきます。

遂にはマルディンの肩にたどり着きます。

そうです。

頭にナイフが届く位置までたどり着いたのです。

私は装備したナイフでマルディンの右目を貫きます。


「ぐぁああああああ!!」


醜い悲鳴を上げるマルディン。

彼はとっさに左手で私を掴もうと手を伸ばします。

しかし、その動きは見えています。

掴もうとした左手の手の甲に飛び乗ると先ほどと同じように左手を肩まで駆け上がります。


「もう1つも貰いますね。」


そして再びナイフで次は左目を貫きました。


「ったぁあああああああああ!!」


またもマルディンは醜く叫びを声を上げます。


「ふふふ。」


その様子が可笑しくて自然と笑いが漏れ出てしまいます。

それを見たギャラリーが若干引いている用でありましたが気にしないことにします。


さて、このゲームには部位欠損と言う状態異常があります。

当然目を貫かれれば何も見えなくなります。

後は適当に料理するだけです。


目を失い何も見えないマルディンは適当に剣を振るいます。

その攻撃は空を切るばかりです。


「そんな攻撃は当たりませんよ。」


私はその攻撃を掻い潜りながらマルディンの体中にナイフを振るいました。

足に、体に、腕に、首に。

マルディンは傷を増やしていきます。

彼のHPが0になるのにそう時間はかかりませんでした。


システムメッセージが知らせる無機質な勝利メッセージとともに彼は光のかけらとなって虚空へと消えていきました。

その瞬間周りにいたやじうま達から歓声が上がります。


「………うるさい。」


私はその歓声を背に受けながら輪の中から抜け出しました。


「ふぅ。」


人だかりから離れ広場の端に逃げてきました。

そこで私はインベントリを確認します。

そこには数々のアイテムと500,000リース増えた所持金が表示されていました。

今の決闘の成果です。

その成果を眺めながら私はほくそ笑むのでした。


あんな相手でもこれだけのアイテムが手に入るなんて。

プレイヤーキル………PKと言うのでしたっけ?

プレイヤーを相手取った強盗行為もおいしいのかもしれませんね。

まあ、好んでやろうとは思いませんけど………。


職業に引っ張られてか、そんなアウトローなことを考えてしまいました。

そんなことを考えているとメッセージが届きました。

差出人はアキです。


『今、広場に着いたけどどこにいるの?』


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[一言] 主人公に魅力が無い
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