3-4
◆都内某所の高等学校
「ふ、ふぁ。」
朝の陽ざしが差し込む教室で不意にあくびが漏れてしまいました。
「涼音眠そうだね。」
それを目ざとく見つけた友人にそう指摘されます。
「昨日遅くまで起きていたらから………。」
「へー。リースリング?」
「………はい。」
明菜のその質問に私は少し後ろめたさを感じながらそう答えました。
彼女の顔を見るとニヤニヤと笑いを抑えられないというった様子が見て取れました。
「うんうん。順調にはまっているようで薦めたこっちとしても嬉しいですよ。」
そう言う彼女の言葉を聞きながら目を反らします。
確かにここ最近はどっぷりとはまり込んでいたかもしれません。
暇さえあればリースリングの世界に入り込み遊び倒していたのですから。
そんな私の状況を知ってか知らずか明菜は質問を投げかけてきました。
「で、どこまで行ったの?」
「ドライまで行ったよ。」
「結構進んだね。レベルは?」
「種族、職業ともにレベル20だね。」
そう、ちょうど機能の夜私はレベル20になりました。
それによって進化および転職を行い、その変化を確認していたらログアウトするのが遅れてしまったのです。
私はそのことに少し後ろめたい思いをしながら明菜にそう答えました。
「レベル20ってことはもう進化も転職もしたんだ。新しい種族と職業は何にしたの?」
「種族はショゴスと言う種族にしたよ。」
「ショゴス?聞いたことのない種族だね。どんな種族なの?」
「んー、スライムみたいな粘性生物だよ。」
私は当り障りのない答えを返しました。
クトゥルフ神話を知らないものにショゴスの説明をするのは難しいと感じたからです。
明菜は特に疑うことなく「ふーん。」と言って聞き流します。
「で、職業は何にしたの?」
「復讐者って言う職業だよ。」
私は昨日の夜、廃村の教会で種族進化を果たした後職業の転職を行っていました。
転職先は2つの選択肢がありました。
上級殺し屋と復讐者です。
上級殺し屋は元々ついていた殺し屋の上位互換となる職業です。
新たにスキルは追加されませんが元々のスキルが強化されます。
ステータスの職業補正も殺し屋と同じでした。
一方で復讐者は殺し屋とはまた別の職業になります。
新たに【復讐の剣】と言うスキルが追加されました。
このスキルはとても強力なスキルでした。
このスキルのために私は復讐者を選んだと言っても過言ではありません。
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パッシブスキル【復讐の剣】
復讐を決意したものの剣は何物にも侵されることはない。
その剣を止める手立てはない。
それから逃れる術はただ一つ。
ただ彼の仲間を害さないことだ。
それさえ守ればその剣が振るわれることは無いだろう。
効果1:自身が受けたダメージに応じて対象に与えるダメージを増加させる
効果2:パーティメンバーの受けたダメージに応じて対象に与えるダメージを増加させる
効果3:対象が討伐した自身の同族種族の数に応じて対象に与えるダメージを増加させる
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効果の1と2は分かりやすかったです。
これは自分が受けたダメージや仲間が受けたダメージに応じて敵に与えるダメージが増える棟だけです。
問題は3つ目の効果です。
この効果は私の種族を対象がどれだけ殺しているかに応じてダメージが増加します。
今でこそショゴスと言う種族になりましたがこの同族種族には以前までの種族スライムやビッグスライムもカウントされるようでした。
初心者が最初の狩場として利用するアイン近くの草原にはスライムが大量に沸きます。
それらを討伐しているプレイヤーに対するダメージは当然の如く高くなります。
この効果を見て私は復讐者と言う職業を選択しました。
しかしそんなことを知らない明菜は復讐者とはどんな職業なのかと頭を悩ませているようです。
「復讐者。初めて聞く職業だよ。どんな職業なの?」
「どんな職業かは説明しにくいかな?一応戦闘に特化した職業だけど誰に対しても強いというわけではないみたい。特定の条件を満たした時に強くなる感じだね。」
「その条件が復讐?」
「うん。」
正直スキルの説明を1からするのは面倒です。
なので私は適当に説明を省きながら明菜にそう説明しました。
その説明で一応の納得を示した明菜はすぐに別の話題へと話を切り替えていきます。
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「そう言えば涼音はイベントに参加する?」
明菜は会話の中で唐突にそう切り出してきました。
イベント?
以前ラインハルトさんに聞いたリースリングの第1回公式イベントのことでしょうか?
確かに開催時期はそろそろでしたね。
すっかり忘れていました。
「どんなイベントなの?」
「あれ?涼音ホームページ見てない?」
「うん。イベントがあるというのはフレンドに聞いて知っていましたが、内容までは聞いていないですね。」
「そうなんだ。簡単に言うとね闘技大会なの。」
「闘技大会ですか?」
闘技大会?
それはつまり最も強いものを決める戦いと言うことでしょうか?
あんまり興味が沸きませんね。
「予選はバトルロイヤル形式の戦いみたい。闘技場で複数人が戦い1人の勝者を決めるんだって。そして予選を勝ち上がると本戦トーナメント。こっちは1対1の戦いだね。」
当初の予想通りやっぱり強さを競うものみたいです。
さて、どうしましょうか?
あんまり興味はありませんが進化して得た力を試してみたくもあります。
明菜はどうするのでしょう?
彼女の性格からすれば率先して参加しそうですが一応聞いてみますか。
「明菜は参加するの?」
「当然!そのために今は毎日レベリングしているよ!」
予想通りの答えでした。
それなら私も参加してもいいかもしれません。
久しぶりに彼女とともにリースリングを楽しみたいという気持ちもあります。
「じゃあ、私も参加してみるよ。」
「本当!?じゃあ、久しぶりに一緒にプレイできるかもね。」
「ええ。一緒に観戦することになるか、それとも戦うことになるかは分からないけど一緒にプレイはできるでしょうね。」
「できればトーナメントで競い合いたいな。」
明菜のその言葉を聞いて私たちは笑いあうのでした。
そうなったらいいなと思いながらイベントを楽しみにするのでした。
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「ふぅ。」
私の目の前でゾンビが光のかけらとなって虚空へと消えていきました。
その様子を見ながら私は息をつきました。
イベント参加を決意した私はレベル上げのためにドライ近くの廃村でアンデッド狩りを行っているのでした。
アキに聞いたところどうやら今のトップレベルグループはすでにレベル60に達しているらしいのです。
それに対して私はいまだレベル40を超えたところです。
これでは闘技大会に出たとしても満足な成果を上げられないでしょう。
だからこそレベル上げです。
少しでも差を縮めようと私は必死になってアンデッドを狩り続けるのでした。
またも1匹光のかけらとなって虚空へと消えていきました。
ビッグスライムからショゴスに種族変化して戦い方に大きな差は生じていません。
いえ、これは相手がアンデッドだからなのかもしれません。
アンデッドには新たに手に入れた状態異常攻撃の効果が薄いです。
そのため今までと同じようにその大きな体を持って捕食し、圧殺するという方法をとっています。
これが人間や動物などになると少しは違うのかもしれません。
しかし、この廃村にはアンデッドしかいません。
今は無いものねだりなどせずできることを行っていきましょう。
今までと同じ戦い方と言ってもショゴスの体はビッグスライムよりも巨大です。
その巨体になれるためにもここで戦う意味はあります。
私はそんなことを考えながらもレベル上げに勤しむのでした。
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〇リンのステータス
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名前 :リン / 累計レベル43
種族:ショゴス レベル22
職業:復讐者 レベル21
ステータス割振:
STR:478(471+7)
ATK:609(486+43+80)
VIT:813
DEF:710(690+20)
INT:169
RES:666(646+20)
DEX:314(284+25+5)
AGI:457(297+60+100)
ボーナスポイント余り:0ポイント
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獲得称号一覧
・同族殺し
・神に至る可能性
・神話生物
・下級の奉仕種族
・玉虫色の悪臭
・最も恐ろしきもの
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