2-12 とある運営のお話1
とても短いです
◆リースリング・オンライン運営会社
>>Side:とあるゲーム開発者
「ははははははは!!」
突如私の後ろに座っていた同僚が笑い出した。
私は怪訝な顔をして彼を見る。
「どうしたんだ?」
そう言いながら彼の手元を見るとどうやらゲームのモニタリングを行っていたようだ。
我々が開発したリースリング・オンラインはGMコールの対応やプレイヤーの問題行動への対応等はAIが行う。
そのため定期的に我々開発者がモニタリングする必要はない。
しかし、彼の場合は半ば趣味のような形でモニタリングをしていた。
今日もおそらくはそれだろう。
彼は笑みを浮かべながら私の方に振り返り口を開いた。
「いや、面白いプレイヤーがいてな。ついつい笑ってしまった。」
「へー、どんなプレイヤーだ?」
私自身は態々モニタリングするようなことはしないがそれでも彼が爆笑するほどのプレイヤーがいるならば興味がわく。
だからこそ私は彼にそう聞いていた。
「ああ、ツヴァイの街中で大量PKをするプレイヤーがいたんだ。」
「PK?」
それは何というか悪質なプレイヤーだと思うのだが、彼は何故そんなに笑っているのだろう?
私がそんな疑問を浮かべていると彼は言葉を続けた。
「PK自体は仲間がPKされたことへの報復PKみたいだな。」
「なるほど、となると単に悪質なプレイヤーと言うわけではなさそうだな。それで何が面白いんだ?」
「ああ、そいつら………報復PKを起こしたのは集団なんだがそいつらは教会前に陣取って何度も何度もリスキルしてやがるのさ。くくく。」
彼は思い出して再び笑う。
私はそんな彼の感性に呆れる。
「別に面白いことじゃないだろう。」
私はそう言って仕事に戻ろうとする。
しかし、彼の話は終わっていなかった。
「いや、待て待て。話はまだ終わっていないぞ。なんとその報復PKをしている連中は珍しい魔物系プレイヤーなんだ。」
「魔物系プレイヤー?」
「ああ。仲間の魔物系プレイヤーがPKされたから報復にPKするって図式だな。」
それを聞いて私は頭を悩ませる。
リースリングの世界で魔物系プレイヤーが迫害されていることは知っている。
一部のプレイヤーは魔物系プレイヤーを目の敵にし、時にはPKと言う暴力的な行為に及んでいる。
その事は一度運営本部でも問題視されたがゲームのシステム上はPK自体は許される行為とあって今は静観することとなった。
だからこそ今魔物系プレイヤーのフラストレーションが爆発したのだろうか?
だからこそ報復PKなんてことになっているのだろうか?
このままいけばリースリングの世界は人間系と魔物系のプレイヤー同士で争い合う殺伐としたものになると思うのだが、上は何を考えているのだろう。
私がそんなことを考えているとモニタリングしていた彼が話しかけてきた。
「あんまり気にするなよ。」
「ん?」
「別に俺たちが何かしなくともなるようになるさ。」
「そうかもしれないが。」
「これはゲームなんだ。硬く考えずに楽しめ。それはプレイヤーだけの話じゃなく俺たち開発にも言えることさ。」
彼のその考えはどこか突拍子もないことのように感じるのだが私は一先ずその考えを受け入れることにした。
そして再び報復PKをした魔物系プレイヤーに思考を戻す。
「だとしても、この魔物系プレイヤーはまずいかもしれないな。」
「ん?何がだ?」
「魔物系プレイヤーは人間系プレイヤーよりも住民の好感度が下がりやすくなっていただろう?」
「ああ、そうか。これだけの騒ぎを起こしたら好感度も当然大きく下がるか。」
「そう言うことだ。」
「でも、それこそ自業自得じゃねえか?」
彼の言う通りなのかもしれない。
それでもこのままいけばこの魔物系プレイヤーたちは満足にリースリングを遊べなくなってしまう。
その原因が自分の行いにあるとしても根本の原因は魔物系と人間系のプレイヤーの対立からくるものなのは明白であった。
やはりどうにかしてこの対立構造を解消した方がいいのではないか?
そんな考えが再び私の頭に浮かぶのであった。
>>Side:とあるゲーム開発者 End
よろしければブックマーク登録と評価をお願いいたします<(_ _)>




