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2-9


◆アイン=ツヴァイ街道 ボスエリア


>>Side:カガリ


「よし!!ユキちゃん行くよ!!」


「うん!」


私とユキちゃんはツヴァイの町を目指してフィールドボス討伐に赴いていた。


「がぁああああああああああ!!」


私たちの目の前には巨大な狼、グレートハードウルフリーダーとその取り巻きグレートハードウルフたちがいた。

私たちはそれを視界に入れながら戦闘に向けて気合いを入れる。


「まずは1発!!………【フレイムアロー】!!」


私は赤魔導士となったことで覚えた新たな魔法を使用した。

その炎の矢はすさまじい速度で飛んでいき1匹のグレートハードウルフに命中し火だるまに変えた。


「まだまだ行くよ!!………【フレイムアロー】!!」


私はその後何度も魔法を放った。

その魔法は多くのグレートハードウルフを火だるまに変えていった。

しかし、グレートハードウルフもただ黙ってやられているだけではない。

グレートハードウルフリーダーの号令と主に私たちを取り囲むようにして陣形をとったのだ。


「ユキちゃん来るよ!!」


「うん!」


グレートハードウルフたちは四方八方から私たちに飛びかかってきた。

その攻撃を避け、時にはダメージを受けながらも私は何度となく魔法を放った。

1匹、また1匹とグレートハードウルフたちを屠っていく。

一方で私たちの方はダメージを受けたはしからユキちゃんが回復魔法を使ってくれるおかげで損傷は少なく済んだ。


遂に残された敵はグレートハードウルフリーダーのみとなった。

グレートハードウルフリーダーは仲間がすべていなくなったことを知るとひときわ大きな遠吠えを響かせて私目掛けて駆けてきた。

近寄られる前にできるだけHPを削る!!

私は魔法の集中砲火を浴びせた。

しかし、それで足を止めたりはしない。

遂に一足で私に攻撃が届く距離までやってきたグレートハードウルフリーダーは私目掛けて飛びかかってきた。

私はそれをギリギリで回避しようと試みるもグレートハードウルフリーダーの方が早く僅かにダメージを受けてしまう。


「カガリちゃんすぐに回復するね!!………【ヒール】!!」


しかし、すぐさまユキちゃんの回復魔法が飛んでくる。

私はそれがわかっているからこそ自信のことよりグレートハードウルフリーダーのHPを削ることに専念した。

何度も何度も魔法を放つ。

遂に、グレートハードウルフリーダーのHPをすべて削り切ることができた。

グレートハードウルフリーダーは光りのかけらになって虚空へと消えていく。

私たちはその光景を見ながら互いに喜び合うのだった。


「やったねユキちゃん!!」


「うん!」


--


「ここがツヴァイ何だね。」


「そうだね。」


ツヴァイにたどり着いた私たちは感慨深くその街並みを見回していた。

町の景観事態に大きな違いはない。

しかし、アインには無い活気を感じ取っていた。


それは生産者が多いということが関係しているのだろう。

生産者が多いからこそ、その生産者が作った商品を売るための露店が多く軒を連ねていた。

そして、それを買いに来た人々が通りに溢れていた。


私たちはもっとも活気にあふれている中央広場の様子を興味深く眺めていた。

そして今すぐにでも買い物をしたいという気持ちを抑えて口を開くのだった。


「まずはボス討伐のアイテム整理にギルドに行こうか?」


「そうだね。買い物はその後でもできるものね。」


私たちはそう言って一先ずは冒険者ギルドへと向かうのであった。


--


アイテムとお金を整理した私たちは中央広場に来ていた。

目的はもちろん武器や防具を新調するためだ。

ツヴァイの中央広場にはこの町を拠点とする生産職の皆が軒を連ねて露店を広げていた。

この中から私たちの新しい武器や防具を探そうと思っていたのだ。

私たちは2人並んでそんな広場を歩き回っていた。

異変を感じたのはそんな時だった。


私たちを見る視線にニヤニヤと嘲わらうようなものが混じっていた。

それも1つや2つではない。

周りの人々全員がそんな視線を投げかけてくる。


「なにか気持ち悪いね。」


ユキちゃんもそれを感じ取ったのかそれを言葉にした。

私は頷いてそれを肯定した。


「離れようか?」


私はユキちゃんにそう提案した。

ユキちゃんもそれに同意して私たちはその場を離れた。

何処に行くとか目的があったわけではない。

とにかくその視線から逃げたかったのだ。


ツヴァイの中央広場を外れて狭い路地へと入っていく。

ただ、視線から逃げるために。

しかし、今日ツヴァイに到着した私たちはどこに行けば安全にその視線から逃げられるかなんて知らなかったのだ。

私たちは知らず知らずのうちに人気のない路地に迷い込んでしまった。


いや、人気が無いとは言えないだろう。

今まさに私たちの目の前に3人のプレイヤーが立っていた。

大剣を背負った男、杖を持った魔法使いの女、盾と剣を持った男。

その3人は私たちの行く手を阻むように道をふさいでいた。


「あなた達なによ!?」


私はそのプレイヤーに話しかけた。

その声は若干震えていたかもしれない。

私だけではない。

ユキちゃんもこの状況に恐怖を感じていたのだ。


「くくく。」

「ふふふ。」


大剣使いと魔法使いはそんな風に笑って私の問いに答えない。

唯一盾使いだけは笑ってはいなかったがそれでも口を堅く閉ざしていた。


「もういいわ。ユキちゃん行こう。」


「う、うん。」


私はそう言ってきた道を戻ろうとする。

しかし、それはできなかった。

私たちが今来た道からぞろぞろと10数人のプレイヤーがやってきたのだ。

皆一様にニヤニヤと嘲笑うような表情をしている。

私たちはその様子を見てますます恐怖を覚える。


「あなた達本当に何なのよ!?」


私は再びそう叫び聞いた。

1人のプレイヤーがそれに答える。


「俺たちは善良な冒険者だぜ?魔物を討伐する………な。」


「魔物を討伐するなら町の外に行きなさいよ!」


「おいおい、可笑しなことを言うなよ。魔物なら町の中にもいるだろう?」


「はぁ!?何言ってるの!?」


「ほら、今目の前にだっているじゃないか。」


男がそう言うと周りのプレイヤーが笑い出した。

私とユキちゃんもここにきて理解する。

この人たちは魔物系のプレイヤーを狙ったPKなのだ。


「ユキちゃん。」


「カガリちゃん?」


「やるしかないかもね。」


私はそう言って杖を構える。

それを見てPK達も武器を構えた。


「ただで殺されてなんて上げなんだから!!………【フレイムアロー】!!」


私は魔法を発動する。

その魔法は1人のプレイヤーに命中した。

しかし、それだけだ。

そのプレイヤーのHPを削ることはできたがデスペナルティに追い込むことはできなかった。

私は次の魔法を準備する。

しかし、それをする前にプレイヤーたちの中から近接戦闘にたけた者たちが前に出て来た。


「ちょ、ちょっと。」


彼らは狭い路地で縦横無尽に剣を振るう。

私とユキちゃんはそれから逃げるように後ろに後ろにと下がった。

そんな時だった………。


「はい、もーらい!」


私たちの後ろからそんな声が聞こえた。

直後、ユキちゃんは大剣の思い一撃を背中に受けてしまった。


「い、っつ!!」


「ユキちゃん!!」


ハイ・レイスと言う種族ゆえに痛みはないだろう。

それでも武器で攻撃されるという恐怖が彼女を襲った。

それとともにユキちゃんのHPが大きく削られる。


「この下郎!!………【フレイムアロー】!!」


私はすかさず振り返り、後ろの3人に目掛けて魔法を放った。

その魔法は盾使いによって阻まれる。

そうこうしている間に後ろのプレイヤーたちが攻撃してきた。

度重なる剣戟、魔法を私たちはその体に受けていった。


何度となくユキちゃんが私たちのHPを回復する。

PK達はその様子をニヤニヤと見ながら邪魔をすることは無かった。

そして私たちのHPが回復しきったことを確認すると再び攻撃を開始するのだった。


PK達の攻撃は止まることは無かった。

遂には私たちのHPは0となってしまいその場で光のかけらとなって虚空へと消えていくのであった。


--


私たちはツヴァイの教会で目を覚ました。

死んだのだ。

いや、違う。

殺されたのだ。

あのPK達に負けて私たちは殺されたのだった。


「カガリちゃん。」


私の横でユキちゃんが心配そうな声を上げる。

きっと、私が気落ちしているのではないかと心配しているのだろう。

彼女に心配はさせたくない。

私は「大丈夫。」と声をかけてユキちゃんに向き直った。


「ユキちゃんは大丈夫?」


「う、うん。」


その言葉は肯定を意味するものであったがその声色からは決して言葉通りではないことがありありと理解できてしまった。

それも当然である。

PKなどと言う野蛮な行為に晒されて怖くないはずがない。



私だって同じだった。

怖い。

何であんなことができるのか理解できなかった。

何で意味もなく暴力を振るわれなくてはならないのか理解できなかった。


そして何よりも憎かった。

私たちを殺したPKが憎い。

そんなPKに負けてしまった自分が憎い。


この気持ちはしばらく収まらないだろう。

それほどまでに強い思いとなって私の心をかき乱していた。


「とりあえず行こうか?」


気持ちに整理はついていない。

でも、いつまでもこんなところに居るわけにはいかず私はそう提案する。


「うん。」


ユキちゃんも弱弱しくそう答えてくれた。

私たちは教会を出てツヴァイの街中を歩く。

目的地は無い。

先ほどまで見たいに呑気に買い物をするような気分ではなかった。

そんな私たちがツヴァイの町を歩いていると不意に声をかけられた。


「ユキさん?カガリさん?」


声の方に向き直るとそこには見知ったゼリー状の生物スライムがいた。

そのスライムは全身鎧のプレイヤーとローブを着込んだ骸骨のプレイヤーを引き連れて私たちの方に向かってきた。


「リン?」


私は思い当たる知り合いの名前を口にしていた。


>>Side:カガリ


日間VRゲーム[SF]ランキング8位にランクインいたしました^ ^

読者の方々に謹んでお礼申し上げます<(_ _)>

これからも本作を楽しんでいただければ幸いです

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― 新着の感想 ―
[一言] 街中ですら安全地帯じゃないのは世紀末ゲーの始まり
[気になる点] PKペナルティ実装していないMMOがあるってマジ?
[一言] リン+上位魔物プレイヤーによる MPKer達に正義の鉄槌を下しに行くのかな~?
感想一覧
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