2-7
◆ツヴァイ近くの鉱山
「多分ここですよね?」
瓶詰の男性を殺した後私は彼の遺言に従って坑道を探索しました。
そして坑道のもっとも奥に位置する場所でひと際立派な扉を発見したのです。
私はその扉の前で立ち尽くしていました。
入るのをためらっているのではありません。
その扉は開かなかったのです。
先ほどの部屋にあったように自動ドアを想定して近づいても駄目です。
扉に触れていろんな方向に力を入れても駄目です。
扉の周囲にスイッチのようなものが無いか探してみたが見当たりませn。
手立てが無くなり呆然と立ち尽くしていました。
「んー、こうなると壊すしか手がないですね?」
そう考えてからの行動は早かったのです。
私はすぐさま【縮小化】を解除して本来の大きさに戻ります。
そして少し距離を取って勢いつけて扉に体当たりをしました。
―ドンッ
強い衝撃とともに鈍い音が坑道に響きます。
しかし、扉はまだ開きません。
私は何度も何度も扉に体当たりをしました。
そしてついに、扉が変形して僅かに中に入るための隙間ができたのです。
こうなってしまえばこちらのものです。
スライムの変幻自在な体を駆使してその隙間から中へと侵入しました。
そこは縦横30mはありそうな広い空間でした。
天井には神代の機械が生きているのか、薄っすらとではありましたが明かりが灯っていました。
私は部屋のなかを見回しました。
なにも無い部屋でした。
ただ1つ私が入ってきた扉とちょうど反対側の壁に部屋の奥へと行く扉が付いていたのです。
「とりあえずここは何もなさそうなのでから奥へと行きましょうか………。」
私はそう言いながらその部屋を横断しようとしたその時でした。
『警告。警告。』
突然部屋全体に響き渡るようなサイレンとともにアナウンスが流れました。
私は周囲を警戒します。
以前としてそのサイレンは鳴ったままでした。
『警告。警告。重要管理エリアに無許可の立ち入りを確認。対象を施設利用者リストと照合………適合する存在なし。対象を不法侵入者と断定。これより排除行動をとる。』
そのアナウンスが鳴った直後でした。
―ガ、コン
突然部屋の両側の壁が動きました。
ちょうど扉のように開き中から何かが出てきたのでした。
―ガシャコン、ガシャコン
それは人型の機械でした。
そう、所謂ロボットです。
手には拳銃のようなものを持っていました。
それが4体現れました。
―ガチャ
そのロボットが拳銃のようなものを構えます。
どう見ても友好的な存在ではありませんでした。
私はすぐさまその場を離れます。
その瞬間………。
―ジリリリリリ、ドン
雷のような電撃がその拳銃から放たれ、私が先ほどまでいた場所に着弾しました。
威力は凄まじいもので床を真っ黒に焦がしてしまいました。
緊張が走ります。
倒す?逃げる?
一瞬のうちに私は頭を悩ませます。
しかし、その決断をする前にロボットたちは再び私目掛けてその雷撃を放ってきました。
私は横に飛んでそれを避けます。
またも空気を震わせる轟音が部屋に響き渡りました。
逃げるなんて言ってられません。
そんな暇はありません。
戦わなくては!!
私の中で結論は出ました。
私は拳銃で狙われないように動き回りながらロボットの1体へ背後から近づきました。
そしてビッグスライムの巨体を生かしてその全身を飲み込みます。
そのまま力を加えます。
バキバキとロボットが壊れる音が聞こえます。
意外と脆い?
私のその疑問に答えてくれる人はいません。
私は力を緩めることなくロボットを締め上げていきました。
ロボットはしばらくもがいたが遂に完全に壊れたのかその体から力が抜けました。
よし1体!!
そう思った次の瞬間でした。
―ジリリリリリリ
他の3体が私目掛けて雷撃を放ってきたのです。
私はとっさに捕まえていたロボットを離して逃げようとするも遅かった。
「くっ!!!」
スライムの体が痺れた様に痙攣します。
視界端のHPが減っていました。
その量はビッグスライムの膨大なHPを前にしても決して少なくない量でした。
私は再び部屋の中を動き回ります。
電撃を避けながら次の得物に近寄ろうとします。
念入りに電撃を避け、先ほどよりも時間をかけて近づいたロボットに飛びつきました。
身動きが取れないように全身を飲み込んで力を籠めます。
バキバキと言う音をしながらロボットが壊れ始めたその時でした。
―ジリリリリリ
残り2体のロボットが私に電撃を放ってきたのです。
その攻撃は取り込んでいるロボットもろとも私に当たりました。
「まさか、仲間もろともですか!?」
またも痺れるような感覚とともにHPが削られます。
私はとっさに取り込んだロボットを手放してその場を離れました。
不幸中の幸いか、そのロボットは今の電撃が致命傷となったのか投げ出された状態で身動きを取ることはありませんでした。
私は再び電撃を避けながら次の得物に近づこうとします。
しかし、先ほどの行動を見ていたのか2体のロボットたちはお互いに死角を潰しながら私の接近を防ぎます。
私はロボットに近づけず、ロボットの電気銃は私に当たりません。
そんな状況が続きました。
その時だった………。
―バキッ
突然変な音がしました。
その音に驚き目を向けると2体のロボットの内1体が足を壊していたのです。
どうやら縦横無尽に部屋中を動く私を追うことで生じた負荷にロボットの体が耐えられなかったようです。
この隙を逃してなるものか。
私はすぐさま動きが正常なロボットに近づきました。
ロボットは電気銃を何度も撃って私の接近を防ごうとするもそれも無駄に終わります。
遂に一足の距離まで近寄るとロボット目掛けて飛びかかりました。
そこからはただの作業でした。
飲み込んだ3体目のロボットを捻り潰すと足の壊れた4体目に近寄り巨体でもって押しつぶしました。
そしてついに私はロボットたちに勝利したのでした。
--
―ドン
ロボットたちを撃退した私は奥の扉へと赴いていました。
しかし、その扉も前の扉同様に開きませんでした。
仕方なく私はその扉も力づくでこじ開けます。
ほんの少しできた隙間から中へと入り込むとそこは円形の部屋でした。
部屋の床や壁、天井には何やら幾何学模様が描かれていました。
所謂魔法陣と言う奴でしょうか?
そんなことを考えながら私の視線は部屋の中央へと向けられます。
そこには人の高さほどの台座とその上に青い石が置かれていたのです。
「あれが、星神結晶ですよね?多分………。」
私はその台座に近寄りじろじろとその石を観察しました。
その石は宝石のようでした。
美しく触れてしまえば壊れてしまいそうなその石を前に私は感動を覚えていたのです。
世の中にこれ程美しいものがあったのか。
その感動は石に触れるという行為をためらわせるには十分でした。
「でも、いつまでもこうしてはいられませんね………。」
私は意を決してその石に触れました。
その瞬間、辺り一面を青い光が包み込みます。
その眩い光を前に一瞬視界が奪われました。
そして数舜ののちに視界が元に戻るとそこに石は無くなっていました。
「え?なんで?」
私が疑問を口にした瞬間でした。
<至神の魔法を持って「星神結晶」を取り込みました。>
………
<称号「神に至る可能性」を取得。>
………
<種族進化を実行………失敗。条件を満たしていません。>
<種族進化先の拡張を実行………失敗。条件を満たしていません。>
………
いくつものシステムメッセージが流れました。
私はそれに困惑して意味のある言葉を喋れませんでした。
メッセージが落ち着いてからしばらくして私も落ち着くと、そのメッセージを1つずつ確認していきます。
「えっと、つまり、まとめると神様になるためのアイテムは手に入れたけど、まだ条件は満たせていなかったから進化はできませんと言うことでしょうか?」
そう思いつつ私はインベントリを確認します。
しかしそこに星神結晶の文字はありませんでした。
「あれ?アイテムじゃないのでしょうか?」
そう思いつつ私はメッセージを再度確認しました。
「あれ?“取得しました”じゃなくて“取り込みました”ってなっていますね。つまりどういうことでしょう?」
私はその場で延々と悩んでいました。
そして一つの考えに思い至ります。
「今考えても仕方がありませんね!」
つまりは思考の放棄です。
私は先ほどまで目を通していたメッセージを閉じてその場を後にしました。
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