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8-14


◆ゼクス近くの鉱山


―カン、カン


ティンダロスの猟犬を退けた後も私は鉱山の調査を続けました。

地図を埋めるようにして探索を続けていると上層、中層同様に採掘場を見つけることができました。

そこには当然のようにアダマンタイトゴーレムが占拠していましたが私はそれらを討伐するとその場で鉱石の採取を始めます。


「とれる鉱石は先ほどと変わりありませんね。」


多くはミスリル、アダマンタイト、オリハルコンと言った上位鉱石です。

それ以外に取れるのは赤術鉱石、青術鉱石と言った色鉱石です。

これらの鉱石が何に使えるか分かりません。

念のため量を確保して帰ることにしましょう。

私はそう思いながら鉱石の採掘を続けていました。


「さて、ここでの採掘も終わりですね。」


インベントリの中身がいっぱいになったのを確認した私はそう呟きました。

周りを確認するとまだまだ採掘はできそうです。

しかし、今はこれ以上持つことができないため諦めるしかありません。

私は採掘用のピッケルをしまうと地図を確認します。


「まだ、行っていないのは………。」


私がまだ言っていない部分は残りわずかです。

そこに上に戻るルートがあると良いのですが………。

私は一抹の不安を抱えながらその場所へと進み始めました。


--


「これは………このままでは先に進めそうにありませんね。」


坑道の探索を続けている私の目の前に現れたのは崩落して完全に塞がれた道でした。

多少の隙間はありますが人の体ではこれ以上先に進めそうにありません。


「ここ以外に残っている道はありませんね。ということはこの先が上に繋がる道なのですかね?」


私は疑問を口にしますが答えてくれる人はいません。


「仕方ありませんね。」


私は地図と装備をしまい元の不定形の姿に戻ります。

そして落石の隙間を縫うようにしてその道を進み始めました。


--


>>Side ラインハルト


「じゃあ、イヴァノエ作業を始めてもらえるかな?」


僕とイヴァノエは作業用のオートマタを連れて鉱山の下層に来ている。

目的は当然この崩落した坑道の復旧だ。

僕たちの目の前にある道はものの見事に落石で埋められてしまっており人が通れる道がない。

この落石を取り除き人が通れるようにしないといけない。

イヴァノエは僕がお願いするとその落石の様子を確認し始めた。

しばらくして僕の前に戻ってきて口を開く。


「復旧自体はできるだろう。落石がどの程度続いているかは知らないがそこそこ資材も持ってきているから足りないということもないと思う。」


「そう。」


「とは言っても最初は落石を取り除く作業からだ。そこは連れてきた作業用のオートマタの仕事のため俺はしばらく見ているだけになるな。」


イヴァノエはそう言うと作業用オートマタに指示を出し始めた。

作業用オートマタはイヴァノエの指示に従い道をふさいでいる落石を取り除きはじめる。

僕は何もすることが無くなり手持ち無沙汰な思いをする。


「何か手伝うことはあるかい?」


「今時点では特にないな。魔物が近づいてきたらそれを討伐してもらいたいがこの狭い坑道ではゴーレムは来ないだろう。」


「そうだね。」


この鉱山で出現する魔物はゴーレムだけと聞いている。

僕自身も何度か鉱山に来たことがあるがゴーレム以外の魔物を見たことは無い。

そしてゴーレムはその巨体から出現するポイントが限られる。

僕らが今いるような狭い坑道では出現しないのだ。

護衛として付いてきたは良いもののこうなると暇で仕方がない。

しかし、万が一のことを考えると離れるわけにもいかないだろう。


「はぁ。」


僕は仕方なくその場でじっと作業の行く末を見守ることにした。


「そう言えば………。」


作業用オートマタに指示を出し終わり僕と同じように暇になったイヴァノエが唐突に口を開いた。


「ここに来る前に大穴があったがあれは前からあったのか?」


「いや、あんなのは前に来たときには無かったね。」


「となると新しくできたのか。この鉱山は今でも結構な頻度で崩落が起きているのか?」


「分からないな。僕は崩落を見たとかいう話は聞いたことは無いよ。」


「そうか。」


イヴァノエに言った通り崩落が起きた現場を見たことは無いし見たという報告を受けたこともない。

何よりイヴァノエが行っていた大穴以外に地図と異なる部分は無かった。

だから今言えるのはあの大穴がたまたまそうだったということだけだ。


「作業は順調だね。」


「そうだな。」


作業用オートマタは落石を持ち運びできる大きさに砕きそれを道から運び出している。

その様子を見て僕は安心する。

少なくとも手が付けられないということは無いようだ。

そんな風に作業を眺めていた時だった。


「ん?あれは?」


イヴァノエが唐突に声を上げた。

僕もその声に誘われるようにしてイヴァノエが見ている先崩落した坑道に目をやる。


「なんだ?新手の魔物か?」


岩の隙間に蠢く何かが目に入った。

それは不気味な色をした粘性の高い液体だ。

少しずつこちら側に漏れ出るようにして岩の隙間から這い出てくる。

僕はとっさに腰に差したロングソードの柄に手を添える。

ゆっくりと這い出てきたそれは人の形を取り始めた。

そこで初めて気が付く。


「リンちゃん?」


>>Side ラインハルト End


--


私は少しずつではありますが落石の隙間を縫って道を進んでいました。

その道のりは決して快適なものではありませんでしたがショゴス・ロードの不定形の体には関係ありません。

いずれ来る終わりを心待ちにしながら私は道を進み続けます。


「この道がラインハルトさんが行っていた崩落した道なのでしょうか?」


落石の隙間を縫って進む感覚から少しずつ上に向かっているのが分かります。

恐らくはこのままいけば鉱山の下層にたどり着くことができるでしょう。

ラインハルトさんは落盤でふさがれた坑道は下層にあると言っていました。

ならばこの道がその道なのでしょう。


「それにしてもラインハルトさんはこの道を使えるようにすると言っていましたね。」


私がいま通っている道は落盤で完全に塞がれています。

素人目に見てもこの道を復旧するのは大変だとわかります。

これを復旧するのにはどれだけの人手が必要となるのでしょう。

どれだけの時間がかかるのでしょう。

私には分かりません。


「私からは頑張ってくださいとしか言いようがありません。」


煽りでもなんでもなく素直にそう言うことしかできません。

私にはとてもこの道を復旧できるとは思えなかったからです。

それでも復旧すればゼクスの価値が上がるのは確かです。

それは今しがた私が集めてきた鉱石から明らかです。

私はこの道が使えるようになった時のことを思い期待を膨らませていました。


「ふぅ、それにしても結構な長さがありますね。」


私は既に500m程を進んでいます。

未だに終わりが見えません。

私は根気強くその道を進み続けていました。

そんな時でした。


―カン、カン


前方から何か音が聞こえました。

不思議に思いながらも私は進み続けます。

すると次第に岩の隙間から光が差し込んでいるのが分かりました。

外に通じているわけがありません。

ということはたいまつかランタンで照らされているのでしょう。

それは、誰かがこの先にいるということです。

しかし、それでもこの場に留まるという選択肢はありません。

私は警戒しつつも道を進みます。

落盤の隙間から差し込む光が強くなったと思ったその瞬間、唐突に落石が起きていない坑道に出ることができました。

私は岩の隙間から這い出ると人の姿に戻ります。

その時声が聞こえました。


「リンちゃん?」


私は驚きながらその声の主を探します。

そこにはラインハルトさんとイヴァノエさんがいました。


「ラインハルトさん、イヴァノエさん。どうしたのですか?」


「いや、僕たちはこの坑道を使えるように直しに来たんだよ。」


「そうだったのですね。では、この場所がラインハルトさんの言っていた下層の崩落現場で間違いないのですね?」


「そうだけど、なんでリンちゃんはそんなことを聞くんだい?地図の写しは渡していたよね?」


ラインハルトさんは私の問いに答えながら首を傾げます。

私は少し恥ずかし気に頬をかきながら答えます。


「実はここに来る前に崩落に巻き込まれて下に落ちてしまいました。そのため、この道を使っていなかったんですよ。」


「そうだったのか。崩落と言うと下層の採掘場の大穴がそうかな?」


「はい、たぶんそれですね。」


私が落ちたのは坑道とは違う広い部屋のような場所でした。

恐らくはそこを採掘場と呼んでいるのでしょう。

私はラインハルトさんの問いかけに肯定を示しました。


「それで、下の様子はどうだったの?」


「下は下層よりも上位鉱石が取れやすかったですね。そのうえ見たこともない鉱石もいくつか取れました。」


「見たこともない鉱石?」


「はい、赤術鉱石、青術鉱石と言った鉱石です。私はこれを色鉱石と呼んでいます。どのような使用用途があるかはこの後ミケルさんに見てもらう必要があると思います。」


どの鉱石も私には使い道が分かりません。

その辺は生産職の方々見ていただく必要があるでしょう。


「そうだね。」


「魔物についてはアダマンタイトゴーレムが出現しました。ミスリルゴーレムよりも硬く戦い難かったですね。それと、1体だけなので通常ポップするかは分かりませんがティンダロスの猟犬という魔物が出現しました。」


「ティンダロスの猟犬?」


「はい、犬のような姿をした化け物ですね。強敵でした。」


「そうなんだ。」


ラインハルトさんは一先ず私の簡単な説明で納得してくれました。

私もそれ以上詳しくは言いません。

どうせ、上に戻れば皆さんに報告することになるのでその際で良いと思ったからです。


「どちらにしろお疲れ様。リンちゃんはこの後ゼクスに戻るのかな?」


「そうします。さすがに疲れました。」


「僕たちはもう少しここで作業をしていくよ。」


「では、お先に失礼します。」


私はラインハルトさんとイヴァノエさんにお辞儀をしてその場を後にしました。

下の探索は疲れましたが成果は上々です。

私はウキウキ気分で鉱山の帰り道を歩きます。


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