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8-11


◆ゼクス近くの鉱山


「んー、大丈夫そうですね。」


黒いゴーレムを討伐した私は手に持った魔剣の耐久値を確認していました。

上の階層のゴーレム以上に削られましたがまだまだ余裕があります。

流石は魔剣です。


「先ほどのゴーレムは何だったのでしょうか?」


私はそう呟きながらインベントリのドロップアイテムを確認しました。


アダマンタイトゴーレムのコア【素材】


先ほどのゴーレムのドロップアイテムなのでしょう。

そこには見慣れない素材アイテムがありました。


「先ほどのゴーレムはアダマンタイトゴーレムだったのですね。」


それならばあれだけの耐久力を誇っていたのも納得できます。

疑問が解消できた私はインベントリを閉じて今後のことに思考を移しました。


「ここで、じっとしているわけにもいきません。」


私は辺りに敵がいないことを確認すると坑道の奥に向けて道を進み始めました。


--


どれだけの時間が経過したことでしょう。

私は黙々とその坑道を進み続けました。

手にはここまでの道を記した地図を持っています。

その地図には数々の分岐と行き止まりが記されていました。


「また、分かれ道ですね。はぁ。」


何度目かになるか分からない分岐を前にして私はため息を吐きます。

そして手に持った地図にそれを記していきます。

一向に坑道の最奥も出口も見当たりません。

どれだけ広い坑道なのでしょう。

私は分かれ道を右に進みました。

その道は今までと変わらず岩肌をむき出しにした坑道です。

特に怪しげな影なども見当たりません。


「魔物でも出てきてくれれば少しは退屈しないのですが………。」


そうは言ってもあれ以降ゴーレムの影はありません。

上の階層ではそれなりの頻度で出現していたゴーレムですがこの階層ではそこまでいないようです。

あるいはどこかに集まっているのでしょうか?

私が進む道が間違っているのでしょうか?

そんなことを考えつつも私は歩を進めていました。

そんな時不意に視界が開けました。


「これはなんですか?」


そこは広々とした空間でした。

真四角に掘り出されたその空間は見方を変えれば部屋に様に見えなくもありません。

ここまでの坑道と同じように土気色の壁や床、天井をしていますが明らかに坑道とは異なるそこを私は緊張感を持って見回しました。


「あれは………。」


ふと、そんな時に部屋の一角に目を奪われます。

部屋の片隅。

そこに見慣れない何かが転がっていたのです。

恐る恐る私はそれに近づいてよく観察します。


「!!」


それはボロボロのローブを纏った白骨死体でした。

その風化具合は昨日今日の話ではありません。

骨その物までもがボロボロと崩れそうなそのなりは何年もここに放置されていたことを示していました。


「何故こんなところに死体があるのでしょう?」


私はよく観察しようとその死体に近づきます。


「………残念ながら私の持つ知識ではこの死体がいつのものか分かりません。」


そう落胆しながらも死体を観察していると違和感に気が付きました。


「あれ?これは?」


その死体は何かを抱えるような姿勢で倒れていたのです。

私は慎重にその死体に手を出し、抱えているものを取り上げます。

それは1冊の本でした。


エイボンの書(原書)【魔導書】


「!!」


その本のタイトルを確認して私は驚きを露わにしました。

今までも何度か見てきました。

魔導書です。

それも見るからに危険とわかる魔導書でした。


「何でここに!?いえ、それよりも………。」


私はその魔導書を開き中を確認しようとしました。

しかし、生憎と私にその魔導書を読むための知識がありません。

中に書かれた文字はただただ模様のようにしか見ることができず、当然魔法の取得もすることはできませんでした。


「仕方ありません。これはエスペランサさんにお願いしましょう。」


私はそう言うとエイボンの書をインベントリにしまいました。

そして再び死体を調べようとそちらに視線を戻しました。


―ゴソ、ゴソ


死体の纏っているボロボロのローブをはぎ取り他に何もないか確認していきます。

死体あさりなんてみっともないと思いますがこれはゲームだと言い聞かせて私はその行為を止めませんでした。

その時です。

死体の懐から小石のようなものが転がりました。

それは怪しい光を放っており明らかに普通の石ではないことは明白でした。

私はそれを取り上げようと手を伸ばします。

私の指が触れたその時です。


―パキッ


<「生命の源石(欠片)」を取り込みました。>

………

<称号「全てを喰らうもの」を取得。>

<スキル【捕食】がスキル【暴食】に変化します。>

<スキル【消火】がスキル【吸収】に変化します。>

<スキル【恐怖を呼び起こすもの】が強化されます。>

<スキル【狂気を呼び起こすもの】が強化されます。>

………

<称号「神に至る可能性」の所有を確認。>

<種族進化を実行………失敗。条件を満たしていません。>

<種族進化先の拡張を実行………成功。>

<次回種族進化時に選択肢が増えます。>


奇妙な音とともに多くのシステムメッセージが目の前に表示されました。

そのメッセージに驚きつつも視線を先ほどの石に戻すとそこには何もありませんでした。

メッセージに記されている通りどうやら私が取り込んでしまったようです。


「この感じですと以前ショゴスに進化した時と同じなのでしょうか?」


私はそんなことを呟きながらそのメッセージを確認していきました。


「ここで詳細を確認するのは危機感がありませんよね?」


メッセージを閉じると再び目の前の死体に視線を向けました。

他にめぼしいものは見当たりません。

私はその部屋での探索を終えて別の場所に移動しようとしました。

その時異変に気が付きました。


―ゴポ、ゴポッ


死体が倒れ寄りかかっている壁の端から何やら泡立つような音が聞こえました。

その音を不審に思い視線を移します。

そこには黒々とした粘性の高い液体が同じく黒い煙を吹き出しながら湧き出ていました。


―ゴポッ、ゴポッ


音は続きます。

それに呼応するようにして黒々とした粘液は次々と隙間から湧き出てきているのです。

私はその異常を見てとっさに壁から距離を取ります。


「今度は何ですか!?」


黒い粘液は少しずつ形を成していきます。

その形はあらゆるところが鋭角で構成された4足歩行の獣のような姿をしていました。

悍ましいその姿に息をのみます。

だらりとだらしなく垂れ下がった長い舌は獲物を探すかのようにゆらゆらと揺れています。

地球上に存在するどの生物とも似通っていないそれを辛うじて例えるならば犬ととらえるべきなのでしょう。

私はその存在を知っていました。


「恐らくはティンダロスの猟犬。」


私がそう呟いた次の瞬間猟犬は地を蹴って私に飛びかかってきました。

私はそれを横に飛んで回避します。

私が先ほどまでいた床に深々と猟犬の爪が突き刺さります。


「見た目通り友好的な存在ではないのですね。」


私はすぐさま双剣を抜き放ち構えました。


「は!!」


そして、地面を強く蹴り猟犬に接敵します。

距離が縮んだ一瞬を見計らって短剣を振るいます。

しかし、ゴーレムとは違い俊敏な猟犬はその攻撃を容易くかわします。


「逃がしません!」


私はさらに地面を蹴って猟犬を追い続けます。

近づき短剣を振るいを続けていきますがその攻撃が猟犬の体を捕えることはありませんでした。


「くっ!!」


そんな私目掛けて猟犬は爪を振るいます。

私は短剣でその攻撃を受け止めます。

攻防は一進一退です。

私の攻撃も猟犬の攻撃も互いに有効な攻撃にはなりえませんでした。


「ふぅ、ふぅ。」


私は足を止めて息を整えます。

猟犬は私から離れたところで足を止めました。

次の瞬間………。


「っつ!!」


猟犬はその悍ましい舌を伸ばして攻撃してきたのです。

私はとっさに横に飛んで回避します。


「あ!!」


その私の動きを追うようにして猟犬の舌は曲がり飛びのいた私目掛けて飛んできます。


―ブツリ


猟犬の伸ばした舌は私の脇腹に深々と刺さりました。

ショゴス・ロードという種族の特性上痛みはありません。

しかし、その攻撃が確かに私のHPを削る感覚がありました。

それと共に何かが抜け出る感覚に襲われます。


「え!?」


私は困惑と共に膝をつきます。

猟犬はそんな私を見て不気味に微笑んでいるように見えました。


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[一言] 角から飛び出てくるワンコっぽいのキター!
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