8-10
◆ゼクス近くの鉱山
「あぅううううう。」
上層で崩落に巻き込まれ地下深くへと落ちた私は瓦礫の中でのそりと立ち上がりました。
周りを見回すと多くのゴーレムが一緒に落ちてきていました。
彼らは落下のダメージでHPを0にしたのか光の欠片となって虚空へと消えていきます。
その光によってその空間が照らされます。
そこは一見して上層と同じような岩肌に包まれた空間でした。
頭上には真っ暗な大穴が空いています。
「あそこから落ちてきたのですね。」
その暗闇の先を見通すことができません。
相当深く落ちてきたようです。
私は自身のHPを確認しました。
幸いなことにHPはまだ残っています。
ショゴス・ロードの耐久力と高いHPに感謝です。
私は持ち込んでいたHPポーションを使って回復します。
HPの回復を待ちながらもう一度周りを見回しました。
「あれは?横穴でしょうか?」
壁の一角が崩れておりそこから横に伸びる通路が出来上がっていました。
私はそこに近づき穴の奥を覗き込みました。
「そこそこ奥まで続いているみたいですね。」
通路の先は見通せません。
それほどまでに長い通路のようです。
「ここにいてもどうしようも無いですよね?それなら先に進みましょう。」
私はその横穴を潜り通路の先へと歩を進めました。
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私はその横穴を奥へ奥へと進みました。
横穴は坑道のように整備された道ではありませんでした。
所々壁は崩れ道も真横に伸びている訳では無く上に伸びたり下に伸びたりしています。
「歩きづらいですが人が通れない道というわけではありませんね。」
明らかに自然にできた洞窟だというのにその道は人1人が余裕で進めるだけの広さがありました。
「ん?」
坑道とは違いますが鉱山の内部であることに間違いありません。
それを示すかのように私の目の前には採掘ポイントが現れました。
「せっかくなので鉱石を集めていきましょう。」
私は採掘用のピッケルを取り出し採掘ポイントで鉱石を採取しました。
「おぉ。」
採掘できたのはミスリル、アダマンタイト、オリハルコンと言った上位の鉱石ばかりでした。
それも少量ではありません。
掘っても掘っても尽きぬほどに大量の鉱石が手に入ります。
溜まらず私は感嘆の声を上げます。
私は可能な限り沢山の鉱石を集めるためにそのポイントで採掘を続けました。
そんな時でした。
「!!」
黒呪鉱石という名前の鉱石が採掘することがでいたのです。
その名前は今まで聞いたこともありません。
未発見の鉱石と言うことです。
それを見つけた私は興奮を隠せませんでした。
その後もしばらくその場で鉱石の採掘を続けました。
結果として赤術鉱石、青術鉱石、緑術鉱石、白術鉱石、黒術鉱石と言った今まで見たことのない鉱石を多く手に入れることができました。
しかし、“呪”等という名前が付いた功績は黒呪鉱石だけでした。
私はひとしきり鉱石を採取し終えると再びその洞窟を先に進みました。
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どれくらいの時間がたったことでしょう。
長い長い横穴を私は歩いていました。
そんな時不意にそれは顔を出しました。
「あれここは?」
そこは先ほどまで見ていた横穴と異なり人の手が入っている坑道でした。
壁はきれいに整えられており崩落を防ぐために木組みが点々と道を示しています。
「良かったです。ようやく道に出れました。」
そこが何処かは分かりませんがようやく道に出れたことに私は安堵しました。
私はその道を見回しました。
「どちらに進みましょう?」
右を向いても左を向いても見渡す限り暗闇が続くだけです。
どちらが出口に続いているのかも定かではありません。
「こういう場合は悩んでも仕方がありませんね。」
私は意を決して右の道を進みました。
道は代わり映えがしません。
一見して普通の坑道のようなものでした。
「魔物もいないんですかね?」
しばらくその道を歩いていましたが一向に魔物と出会う様子がありません。
上層、中層、下層通りであればゴーレムがいてもいいと思うのですがその影もありません。
「まあ、この狭い道でゴーレムが出てくるとは思えませんが。」
私が進むその行動は2m程の高さしかありません。
ゴーレムが通るには少々狭いでしょう。
だからこそ魔物が出てこないのではないかと思いながら私は足を進めました。
そんなことを考えていると視界の端に動く影を見つけました。
「噂をすれば影というやつでしょうか?」
その場所は他よりも少し広い坑道になっていました。
岩陰から這い出るように影はのそりのそりと動いています。
その鈍重な動きには覚えがあります。
あれはゴーレムなのでしょう。
しかし、ここまで見たゴーレムとは明らかに違いました。
「あれはゴーレムだと思うのですが何のゴーレムなのでしょう。一見して金属のようですがアイアンでもミスリルでもないですね。」
そのゴーレムの体を構成するのは黒色の金属でした。
私の知識にそんな色のゴーレムは存在しません。
「考えても仕方ありませんね。幸いなことにゴーレムはあれ1体だけのようですし………。」
私はそう呟くと双剣を取り出し構えました。
そしてゴーレム目掛けて地面を駆けます。
ゴーレムもすぐに私の姿を捕えます。
そしてその大きな腕を振るいました。
その攻撃はアイアン、ミスリルゴーレム同様に鈍重なものでした。
そのような攻撃に当たる私ではありません。
身を屈めて懐に入ると右手の短剣を強く振るいました。
―ガチン
甲高い音が坑道に響きました。
その音が示す通りゴーレムの体は硬質なものだったのです。
ミスリルゴーレムの比ではありません。
いくら力を籠めようとも傷一つ付けられないと思えるほどに硬い体を持っていたのです。
「な!?」
私は驚きのあまり硬直してしまいます。
その一瞬を見計らってゴーレムが腕を振るいます。
―ドン!!
私の体は強く壁に打ち付けられました。
「かっ!!」
私は体中の空気を吐き出しました。
息苦しさを我慢しながら私はゴーレムを睨みつけます。
ゴーレムは再び腕を振り上げていました。
私はとっさに横に飛んでその腕を避けます。
「ふぅ、ふぅ。」
ゴーレムから距離をとり息を整えます。
そしてじっくりとゴーレムを観察するのでした。
私が先ほど切りつけた胴には薄っすらと傷が付いているのみでした。
「これは………どうしましょう?」
どのようにして目の前のゴーレムを倒しましょう。
いえ、倒すことができるのでしょうか?
私が手に持つ魔剣は今用意できる攻撃手段の中でも最も高いATKを誇ります。
この短剣で僅かな傷しかつけられないとなると今の私はこのゴーレムを倒すことができないのかもしれません。
しかし………。
「逃げるのはなんか嫌ですね。」
私はそう呟くとどのようにゴーレムを倒すか頭を悩まします。
「よし。」
思考を止めて目の前のゴーレムに視線を戻します。
そして、短剣を強く握りしめて地面を強く蹴ります。
ゴーレムは私の接近を腕を振って阻害しようとします。
その攻撃を避けると先ほどと同じように懐に入り込みます。
そして、体の一部を元の不定形のものへと変化させるとゴーレムの足を捕えて力いっぱい横に引っ張りました。
突然足を引っ張られたゴーレムはバランスを崩してあおむけに倒れてしまいます。
「ここです!!」
私は力いっぱい天井に向けて飛びました。
そして天井を蹴るとゴーレム目掛けて真っ直ぐに落ちていきます。
その勢いを生かして手に持った短剣をゴーレムの体の中心に突き立てます。
ここまで多くのゴーレムを討伐してきた結果私は直感的に理解していました。
ゴーレムの急所であるコアは体の中心およそ15cm程のところにあります。
多少誤差はありますがそこ目掛けて私は短剣を突き立てました。
「はぁああああああああああ!!」
私は気合いを込めてナイフを突き立てます。
落下の勢いをつけて突き立てられた短剣は深々とゴーレムの体を気づ付けました。
―パキッ
私のもくろむ通り短剣はゴーレムのコアを砕きました。
私はバランスを崩しながら地面に転がります。
すぐに姿勢を元に戻すとゴーレムに視線を戻しました。
ゴーレムは光の欠片へと姿を変えていました。
私の勝利です。
それを見て私は達成感を感じていました。
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