表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/115

8-7


◆ゼクス近くの鉱山


坑道を進む私の目の前に不意にそれは現れました。


「これは階段ですか?」


段々と切り出されたその岩壁はまるで巨人が使用することを想定したような階段でした。

その階段が坑道の先へと伸びています。

常闇が包む先にある物に期待を膨らましながら私はその階段をゆっくりと下っていきました。


「ここが中層なのでしょうか?」


階段を降り切ったそこは今までと変わらず石壁の続く坑道です。

話に聞いていた限りだとここからは中層になるはずです。

レアな鉱石が出やすくなる反面、出現する魔物もより強いものになります。

私は注意しながらその坑道を進んでいきます。


―カツン、カツン


私が歩く音だけが坑道の中に響き渡ります。

真っ暗闇の中でその音は不気味に聞こえたことでしょう。

ホラーが苦手な人からすればこの状況はすぐにでも逃げ出したくなるのでしょう。

しかし、私は大丈夫でした。

ホラーがそれほど苦手というわけでもありません。

そのうえ、この暗闇の中でもはっきりと坑道の様子が見ることができるのです。

それはショゴス・ロードという種族のおかげでしょう。

だからこそランタンなどの明かりなしに私は歩を進めていくことができます。


「ん?分かれ道ですか………。」


私は足を止めて地図を確認します。


「………右は行き止まり、左ですね。」


私は地図から目を離し、左の道を進みました。

坑道はまだまだ続きます。

外はそろそろ夜に差し掛かろうとしている頃でしょうか?

坑道の中では時間間隔が曖昧になってしまいます。


「そろそろどこか休める場所を見繕った方が良いかもしれませんね。」


私はそう呟きながら夫亜度地図を確認しました。


「1時間ほど行った先に大きな広場がありますね。そこで今日は休むことにしましょう。」


私はそう言うと地図をしまい行動を奥に進んでいきました。


--


―ガタッ


物陰で何かが動いた音がしました。

私はとっさに武器を手に取りその音の方に目を向けます。


―ガタン、ガタン


物陰からはゆっくりとした所作でゴーレムが這い出てきました。

その見た目は下層で見たロックゴーレムとは異なっています。

つややかに鈍色の光沢をもつそれはアイアンゴーレムと呼ばれる種でした。


「中層からはアイアンゴーレムが出現する。聞いていた通りですね。」


私は手に持つ短剣に力を込めてアイアンゴーレムの動きを注視していました。

そんな時でした。


―ガタン、ガタン


アイアンゴーレムの影からさらにゴーレムが湧き出てきました。

それも3体です。

アイアンゴーレムは1体では無く4体の群れでした。


「1体だろうと4体だろうとやることに変わりはありません。」


私はそう言うと地面を強く蹴ってアイアンゴーレム目掛けて走り始めました。

一足で1体目のアイアンゴーレムに接敵すると手に持った短剣を振るいます。


「っつ!!」


ロックゴーレムより硬いその体に阻まれて短剣がアイアンゴーレムの体の中程で止まります。


「それでも!!」


私は短剣を持つ手に力を籠めます。

一瞬遅れて短剣はアイアンゴーレムの体を両断しました。

続けざまに2撃目、3撃目と攻撃を繰り出します。

ロックゴーレムより苦戦はするものの流石は魔剣です。

アイアンゴーレムの鉄の体を両断するに十分な力を有していました。

私は1体目のアイアンゴーレムに止めを刺すと次の得物に視線を向けます。


「遅いです!!」


アイアンゴーレムは私目掛けてその大きな腕を振り下ろしてきました。

轟音が坑道に響き渡りますがその攻撃が私を捕えることはありませんでした。

私は地面を蹴って回避するとすぐさまアイアンゴーレムの懐に入り込み双剣を振るいます。

その攻撃はアイアンゴーレムのコアを両断しました。

2体目のアイアンゴーレムも光の欠片となって虚空へと消えていきます。


3体目、4体目のアイアンゴーレムが私に向かって殺到してきます。

仲間がやられても怯むことなく押し寄せてくるのはゴーレムの特性なのでしょうか?

そんなことを考えながら2体のアイアンゴーレムの攻撃を避けます。

アイアンゴーレムの攻撃はロックゴーレムと同じく鈍重です。

私のAGIをもってすれば避けるのは難しくありません。

私はその攻撃をすべて避けきると動きの止まったアイアンゴーレム目掛けて短剣を振るいます。

3体目、4体目のアイアンゴーレムも程なくしてコアに致命傷を受けて消え去ります。

私はそれを確認して武器を納めました。


「ロックゴーレムよりは硬くて戦い難かったですがそれだけですね。驟雨の双剣で切れないと言うほどではありませんでした。」


私は自分の武器を誇らしく思いながらもそう感想を口にしていました。

誰に聞かせるわけでもありませんでしたが不意に口から零れてしまいました。

私は一休みをすると再び坑道の奥に向けて足を進めました。


--


「また、採掘場ですかね?」


地図に記された大広間は上層で見た採掘場と同じような作りをしていました。

段々に掘り進められた岩肌は鉱石を採掘しやすい容易にしているのでしょう。

上層と違いをあえて見つけるならばここにはトロッコなどの採掘に使用されていたであろう道具が見当たらないことでしょう。

それほどまでに古い採掘場であることが伺えました。


そして、その採掘場を占拠する影があります。

アイアンゴーレムです。

またも群れとなってその採掘場を埋め尽くす影が見えます。

その中でひと際目立つ影があります。


「あれは普通のアイアンゴーレムではないですよね?」


その影はアイアンゴーレムの2倍以上の巨体を誇っていました。

巨体を支える足は4本ありどれも通常のアイアンゴーレムよりも太いです。

胴から延びるその腕もまた4本ありその腕は武器のようなものを握っています。


「ここで休むなら倒さないわけにはいきませんよね?」


私はそう呟くと双剣を抜きました。

そして手近なアイアンゴーレムに狙いを定めて地を蹴りました。

私のAGIは魔剣の力を使い強化されています。

それにより生み出された速度を生かして私は一瞬のうちにアイアンゴーレムに接敵しました。

双剣を振るい1体目のアイアンゴーレムを光の欠片へと変えます。

そしてその勢いを殺さぬようにさらに地面を蹴って次の得物へと接敵します。

続けざまに2体目、3体目とアイアンゴーレムを倒していきます。

私がその採掘場に足を踏み入れたことに気が付いたアイアンゴーレムが攻撃をしようと殺到してきますが誰も私の速度に追いつくことはできません。

私は縦横無尽に走り回りアイアンゴーレムたちを殺していきました。


「後はあのでかいのだけですね。」


残すゴーレムは4腕4足の異形のゴーレムだけとなりました。

私は先ほどまでと同じように地面を蹴ってそのゴーレムに接敵します。

異形のゴーレムも私の姿は見えているようです。

右手に持った大斧を振り上げて攻撃してきます。

しかし、特殊とは言えゴーレムです。

その鈍重な攻撃は私の体を捕えることはできませんでした。

私はすれ違いざまに足の1本に向けて左手の短剣を振るいます。


「切った感じですとアイアンゴーレムと同じですね。アイアンゴーレムの上位種でしょうか?」


私の持つ短剣は何の問題もなくゴーレムの足に傷を付けました。

多少硬いと感じましたが力を籠めれば切れないということはありません。

私はもう一度ゴーレムに接敵するとすぐさまその懐に入り込みました。

そして両手の双剣を振るいゴーレムに傷を付けていきます。

異形のゴーレムもその4本の腕に持つ武器で私を攻撃してきます。


「この感じならアイアンゴーレムと変わりないかな?」


どれだけ巨体を誇ろうとどれだけ力強さを誇ろうと鈍重である以上私が当たることはありません。

ゴーレムはなすすべなく傷を増やしていきます。


―ドン


私が4本の脚の内1つを両断するとゴーレムはバランスを崩して地面に膝を突きました。


「チャンスです!」


私はすぐさまゴーレムに近づき追撃を加えようとします。

その瞬間でした。


―ブオン


ゴーレムが武器を水平に持ち上半身を360°回転させました。

いえ、360°だけではありません。

何度も何度も回転させて武器を振るいます。


「っく!!」


私は攻撃を仕掛けようと近づいた瞬間だった為その攻撃を避けきることができませんでした。

ゴーレムの持つ大斧が私の体にぶつかります。

幸いなことに膨大なDEFを持つショゴス・ロードの体がそれで両断されることはありませんでした。

しかし、踏ん張りの効かない姿勢で攻撃を受けてしまったため私は大きく吹き飛ばされてしまいました。


―ドン!!


採掘場の岩壁に強く打ち付けられた私はすぐさまHPを確認します。

大丈夫です。

多少削られはしましたがまだまだ余裕があります。


「少し油断していたかもしれません。」


私はそう呟きながら立ち上がります。

そして異形のゴーレムに視線を向けます。

ゴーレムは3本の足で立ち上がり私の方を向いていました。

足一本を失っていても怯むことはありません。


「くす。」


私は久しぶりに敵らしい敵を相手にしたことを思い少し楽しくなり笑みをこぼします。

そして、次は油断しないと意気込んで強く地面を蹴ります。

ゴーレムは先ほどと同じように武器を大きく振るって私を攻撃しようとします。

しかし、わかっていれば避けれない攻撃ではありません。


「同じ手は受けません!」


私は姿勢を低くしてゴーレムの攻撃の死角に入り込むとそのままゴーレムに接敵します。

そしてゴーレムのコアを目掛けて双剣を振るいます。


「これで終わらせます!!」


先ほどのような油断や容赦は一切なしです。

この攻撃で終わらせるという意気込みを持って剣を振るいます。

私のその意気込みが届いたのかゴーレムのコアはその攻撃で致命傷を受けます。

次の瞬間には異形のゴーレムは光の欠片となって虚空へと消えていきました。

私は足を止めその光が消えていく様を見ていました。

そして、戦いが終わったことへ満足感と充実感を感じていました。


よろしければブックマーク登録と評価をお願いいたします<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] リンちゃんが多少HP削れるって、他の人なら即死級ダメージだよな。 本来ならもっと終盤の敵なのでは
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ