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彩乃はお腹が弱い──最近は大丈夫そうだったが、そっちの方も心配だ。無駄なストレスを彼女に与えてしまった事が悔やまれる。
「彩乃の事はどう思ってるん?」
「どうって、彩乃は話してるの?」
彩乃と仲良くなれたのも、突き詰めていけば安奈との人間関係である。ファミレスで相談を受け、薬を常用するほどかなり強くストレスを感じていると言っていた。だが、安奈の口ぶりだと、色々と改善されているように思えた。
「彩乃には相談に乗ってもらっててさ。何かめっちゃ距離が縮まった気がして」
「江戸やんとの事?」
「それも含めて本音で話しした。思ってる事とか」
「そうなんや」
ルカの事はさておき、彩乃と安奈は、ただ一緒にいるグループの関係ではなくなっているみたいだ。最近、彩乃とまともに話しをしていなかったから、彼女を取り巻く環境の変化に気づかなかった。
「彩乃は悩んでたよ。その歳上の女とは別に、やり直そうとしてる彼女の事とか」
「……」
彼女の気持ちがハッキリと分かった。これまでは、“友達になって”と言われたから、それ以上は考えていないかもしれないと思っていた。前の恋の傷も癒えていない状態だったから、また傷付くのが怖かったのもある。本当にぼやぼやしていたら、取り返しのつかない事になるだろう。
「彩乃がいたから乗り越えられたし、前に進めたと思う」
「そんなんいらないねん。女は」
少し強い口調で言われた。江戸やんと安奈の前で、彩乃を愛していると言うのが照れくさかった。でも、ぼやぼやしてられない。時は刻々と刻まれているのだから。
「大切やし、好きやで。いつ告白するか迷ってたら夏休みに入ってしまった」
安奈は頭を抱えていた。煮え切らない僕に苛立っている感じだ。僕自身もある意味楽になりたいし、江戸やんの幸せそうな顔を見ていると、その気持ちはより一層強くなった。
「明日、バイトかな?」
「分からんけど……何で?」
「明日、告白しに行こうかなと思って」
思わず言ってしまった。江戸やんと安奈の前で言ってしまった。勢いもあるが、これで逃げも隠れも出来ない状態になってしまった。