3ページ目
りーくんと見知らぬ駅のロータリーで会った時、安奈の昔の彼氏に江戸やんは似ていると言っていた。その事を江戸やんが知っているかは分からないが──。
「あの李が、学校でも有名なグループに入るとは……」
「オレ達って、そんな有名なの?」
「後輩とかもカッコいいとか言ってた。ていうか、浮気だけは絶対許さんから覚えといてね」
安奈は笑いながら江戸やんに話していたが、瞳の奥は笑っていないように感じた。いずれにしても、安奈が彼女なら江戸やんも余所見はしないだろう。
安奈から“後輩”の話しが出て、亜紀ちゃんの事を思い出した。彼女はここでバイトしているはずだが、今日はバイトではないのか、リーチと初めて見る20代ぐらいの男だけだ。
「お待ちどう。焼き鳥の盛り合わせと、サービスで漬け物持ってきた」
「ありがとう! 漬け物とか最高ですやん」
「お前、漬け物好きやもんな」
「うん。そうそう、亜紀ちゃんは?」
「亜紀? 今日は休みやな」
「近ちゃん、亜紀ちゃんてあの食堂合コンの?」
「そう。江戸やんは不参加やったけど」
レプと江戸やんは、ギャラリーとして我々の合コンを見学していた。
「あの娘、近ちゃんの事、『好きです』オーラ出まくってたよね」
「お話し中申し訳ないけど、昨日の正門の件やけどさ……」
待ち合わせで安奈の顔を見た瞬間から、いつその話しになるか身構えていた。飲み会の中盤ぐらいになるかと思っていたが、結構序盤でねじ込まれてきた。
「昨日、レプから連絡あってさ。近ちゃんに悪い事したかなって言ってたよ」
確かに結果的に変な誤解を招いたのは事実だが、意図的にレプが仕掛けた罠ではないから仕方のない事だ。強いて言えば、裏門で待ち合わせをしたかった──。
「歳上やんな? 糸井君の彼女って言ってたよね?」
「そう。付き合う前だけど、レプの彼女のマンションに遊びに行ったんだよ」
「ふーん。その友達が何で正門に来るの?」
僕は海にドライブに行き、その後、行きつけの喫茶店でお茶をした事を2人に話した。
「それだけ?」
「それだけ。直ぐに彩乃のバイト先に行った」
「彩乃から連絡会ったよ。かなり落ち込んでるようやったわ」