江戸やんと飲もう
夏休み初日、江戸やんと僕の地元で遊ぶ約束をしていた。夜の7時に駅前で待ち合わせ。以前、たてと一緒に行った居酒屋“うちしお”に行こうと思っている。地元の連であるリーチがバイトする店でもあるし、シンプルに焼き鳥が美味い店だから、江戸やんもきっと気に行ってくれるだろう。
「近ちゃん、お待たせ」
「おうっ! えっ!」
江戸やんの横に安奈がいた──思わず二度見してしまった。
「えっ? 何で?」
「実はさ、付き合う事になって」
安奈と良い感じになっている事は知っていたが、かなりの急展開に驚いた。
「ごめんな。無理矢理着いてきてん」
安奈が謝っている──憎まれ口しか叩かなかった彼女が、全く別人のようになっていた。
「いやいや、かまへんけど、何か調子狂うな。ほんまに安奈?」
「以前の事は忘れて。私も色々とあってさ」
江戸やんと安奈──これ以上ないぐらいにお似合いだ。安奈は憑物が取れたような顔で、とてつもなく美しい。江戸やんは相変わらず単なる白いポロシャツとデニムなのに、モデルばりにお洒落に着こなしている。僕はというと、お気に入りの迷彩の半ズボンと身体にフィットした黒のTシャツである。
「この間、たてから聞いたんだけど良い店があるらしいじゃん。連れてってよ」
「うん、そのつもりやったよ。とりあえず行こうか」
僕等は、“うちしお”まで微妙な距離感のまま向かった。
「いらっしゃい! おっ! 久しぶりやんけ」
「久しぶり。友達も連れてきたで」
相変わらずリーチは威勢が良い。男前だし、彼目当ての客も多いと聞く。今日はその辺の事も突っ込んで聞いてみようか──。
カウンターには先客がいて、3人並んでは座れなかったのでテーブル席へと案内された。
「いらっしゃい。またどえらい男前やな。お前の連れ」
「せやろ。東京からの転校生や」
江戸やんはリーチに深々と頭を下げていた。
「梅野って言います。近ちゃんには本当に色々と世話になって」
「こいつが? 中学の時、そんなタイプやったか? お前」
「高3ともなれば成長するんや。ちなみにこいつとは幼稚園から一緒やねん」
「そうなんだ。めっちゃモテそう」
「いや、おそらく、君ほどではないわ。横の娘は彼女?」