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角が少しへしゃげている写真を受け取った。全員コートを着ている。冬場に撮られた写真だろう。七恵の親友である人は、黒のコートを着ていた。とてつもなく美人で、背丈も他の3人より抜けている。だが、七恵達も負けていないと感じた。写真を見る前から、悪戯に上がっていたハードルがそんな風に思わせたのか定かではないが、いずれにしても、七恵と比べても遜色ない。寧ろ、僕的には忖度なしで七恵派だ。
「……七恵さん、勝ってませんか?」
「勝ってないやろ。私に気を使わないでいいよ」
「この状況でお世辞は逆に失礼やし、思ったままを言いました」
「……。ありがとう。ちょっとだけ救われた」
高校時代、大学時代と付き合っていた男を、彼女に尽く寝取られたそうだ。友達として紹介した時点で、男達は手の平を返したように彼女に靡いていったらしい。
「彼女というより、男がクソですね」
「そう。頭の中はヤル事しかない馬鹿男。選んだ私が悪い」
「確かに綺麗な方ですが、何かリアリティがない感じがしました」
「モデルやしな。生活感とかそんなんも子供の時から感じさせない子やった」
いくら男から言い寄ったとしても、親友の彼氏と付き合うだろうか──。
僕はある仮説を立ててみた。親友の方も七恵と同じように、親友である七恵にコンプレックスを抱いていたという仮説。
僕はその事を彼女に言った。
「まさか。あの子が私に?」
「そんな気がしましてね。似た者同士なんじゃないすかね」
「考えた事もなかった……。でも言われてみれば心当たりが山ほどある」
「山ほどあって気付かないとかどうなってんすか」
彼女は、その心当たりを僕にまるでマシンガンをぶっ放すように話した。ちゃんと息を吸っているのか不安になるぐらいに──。
「あかん。さっき海で言った事忘れて」
「何でしたっけ?」
「私とヤリたいならあの子は諦めてって言った事」
「じゃあ、ヤラせてくれるって事ですか?」
「ていうか、君とヤッたら、私、多分壊れてしまうと思うから無理やわ」
こういう会話をしている時でも、頭の片隅には彩乃がいる。別に笑っている訳でもなく、怒っている訳でもない。ただ、静かに彩乃はいる。まるで、僕の一部かのように。