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孤独からの脱出──たかだか女に振られたぐらいで、世界中の不幸を背負った気になった豆腐メンタル。その生き地獄から救ってくれたのは、紛れもなく5人組だった。劣等感を少しでも表に出せば、またあの日々に逆戻りしてしまうかもしれないという強迫観念との戦い。それだけは絶対に避けないといけない。5人組の中には、頭の切れる男“レプ”がいる。いや、人並み外れた感受性の持ち主といったほうがいいか──。彼には、すでに悟られているかもしれないが。いずれにしても、彼等と一緒にいたければ、彼等にはないもので肩を並べるしかないと考えていた。
「なかなかしんどかったんちゃう? あの中でやっていくのは」
七恵には全てお見通しだったようだ。だてに色んな人種と関わっていない。人間の汚い面、裸の心を目の当たりにしてきたはずだ。死にものぐるいで隠してきた僕の劣等感など透けて見えているんだろう。
「君は君。私にとっては君が一番魅力的」
彼女はアイスレモネードに浮かぶ薄い輪切りのレモンの真ん中に、ストローを突き刺してかき混ぜていた。その様子がとてつもなく卑猥にうつった。
「コンプレックスがありまして……」
「分かるよ。私にもあるから。死にたくなるようなほどのやつが」
「マジですか? そんな風に見えない……」
「君と一緒。全力で気を消してるよ」
彼女も似たような境遇らしい。この間、香織のマンションには来ていなかったが、もう一人、モデルの友達がいるらしい。こっちは5人組だが、彼女達は4人組だそうだ。
「そのモデルの子とは幼稚園から一緒でさ。あとは中学生の時に友達になった」
「幼稚園って、かれこれ20年ぐらいすか?」
「そうなるね。親友やねん。親友やねんけどな……」
幼稚園の頃から親友は周りからチヤホヤされていて、横にいる自分は常に影のような存在だったらしい。
「もうね、彼女がマグロの刺身なら、私はその下の大葉みたいなもん」
「まさか……。七恵さん、死ぬほど綺麗のに」
「ありがとう。あの子がいないところでは私もそこそこ輝けるけどね」
「写真とかあります?」
少し戸惑っているようだったが、財布から4人組がうつった写真を見せてくれた。
「……」
「私の右隣の子……」