25歳の女達
学校帰りに5人組のたまり場であるパインツリーでコーヒータイム。帰って勉強などする気はゼロだ。
「レプはん、話しってなんだんねん?」
「ちょっとお前らに頼み事があるんや」
電源の入っていないテーブル型のゲーム機に無理やり座った。テーブルを2つ使えばゆったり座れるのに、何故かこの窮屈な感じが落ち着く。椅子が一つ足りないから隣のテーブルの椅子を取り、たては少しはみ出して座っていた。
正直頭の中は彩乃の事でいっぱいだ──期末テストが終わればあっという間に夏休みになり、9月まで会う事はない。夏休み期間中にバイト先に行けばいいが、度々訪ねるのもちょっと怪しい。出来れば、終業式までには何とか彩乃に告白しようと思っていたが、さっきのレプやリーくんの彩乃に対しての評価を聞き、僅かにあった自信が音も立てずに崩れ去った。何故なら、彼女は選べる立場の所謂モテる女。身長も僕より8センチも高い。わざわざそんなちびっ子を選ぶはずもないだろう。長身で、男前、歳上で車持ち、なんなら全て持ち合わせている男が仮に彩乃にアプローチをかけてきたら、この僕など鼻であしらわれるにちがいない。
「どした? 近ちゃん」
「いっいや、何もないよ。ていうか安奈と何か喋ってたな? 江戸やん」
「今度、映画行くんだ」
「マジかっ!」
全員が同時にツッコんだ。見事に重なった声が僕等しかいない店内に響いた。
「偶然会ったんだよ。ステーキハウスで」
話しによると、家族で評判のステーキハウスに行ったら、安奈の家族が先に飯を食っていたらしい。そんなに広い店ではなかったみたいで、テーブルをくっつけて一緒に食事をしたそうだ。
「親の趣味が一緒みたいで、勝手に盛り上がってたから飯食って外で話してたんだ」
「まさか、江戸やんはんそこでチョメチョメとか?」
「古すぎだろ。いや、何か別人みたいだったぜ」
「江戸やんはん、手が早いから。東京でもマッハでしたやん」
「たて、その事はオフレコな。ルカにも言うんじゃないぞ」
「言いまへんて。こっちの株も下がりまんがな」
たては馬鹿である──あまり深く物事を考えない所があるから、江戸やんが心配するのも無理はない。だって、彼は本当に馬鹿なんだから。




