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彼の話しを鼻くそをほじくりながら聞いた。授業は昼休みまであと1限残っている。眠くて仕方がない。
「そういう段取りでどないでっか?」
「どないでっかて言われても」
たては窓際の列の前から1番前、ルカはその右隣の列の前から2番目、そして、僕はその隣の列の前から3番目である。
彼の言う段取りとはこうだ──授業中にルカが自分の事をチラ見した回数を数え、それを報告する。最大でどれぐらいの時間見つめていたかもついでに教えてくれと。例えるなら、交通量調査のバイトをノーギャラでやれと言われているのだ。
「できれば、“正”の字でお願いしまわ」
どうでもいい事である。何で記すかも指定ですか──。
「とりあえず、ルカが君を見ているかどうかをチェックすればいいんやな」
「はいなっ!」
「ギャラは?」
「コロッケパンとアップルジュースでどないでっか?」
食堂で売っている人気のパンである。合計で200円のバイト。クソでしかない。
「パン嫌い。タバコにしてくれ」
「はいな! 頼んまっせ!」
そういうと彼は自分の席に戻り、折りたたみの鏡で自分の顔と髪型をチェックしていた。彼には悩み事とかないのだろうか。恋や進路、みんな色々抱えているはずなのに──。
4限目は現社だ──全ての授業の中で1番睡魔に襲われる時間である。僕はたてに言われた通りルカを見ていた。僕はこの女が大嫌いである。彩乃の親友であるが、とにかくうるさいし、ケバいし、もう数えあげれば山ほど出てくる。だが、友達に頼まれた事であるから仕方がない。
授業が始まり15分が経過したが、ルカは爆睡している。したがって、まだ1度もペンを走らせてはいない。
たてが何故か僕の方を見ている。
「ん?」
よく分からないが、右手でOKサインを出している。いや、OKサインだとしたら、本当に意味が分からない。僕は、とりあえずOKサインをたてに送った。
「……」
彼はにっこりとうなずき、窓の外を見ていた。僕は、まだ貴様を見た回数はゼロであると伝えたのだが、何故微笑むのか──。
結局、ルカは授業が終わるまでずっと寝ていた。