表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平成初期型!!  作者: 稲田心楽
63/121

2ページ目

 

 保健室は一階にある。休み時間だから、渡り廊下は生徒でごった返していた。僕はそこを縫うように歩き、保健室に着いた。



「……」



 保健室の中に入ったが先生がいない。僕は白いカーテンで仕切られているベッドに勝手に入った。



「誰やっ!」



 隣のベッドから何か聞こえた。あまり品のよろしくない聞き覚えのある声だ。



「何やっ! 貴様の相手を出来るほど元気ではない」



 青柳ルカだ──カーテンを開けて、品のよろしくない顔を覗かせていた。



「うわっ! 近本や。あんた、サボりやろっ!」



 僕は、“あんた”と呼ばれる事が嫌いだ。ましてや、藤川の子飼いに言われたくはない。僕は、無礼には無礼で返す事にした。



「藤川の金魚の糞が何調子乗ってんねや? いてまうど! お前」


「はい? 意味分からん。彩乃、近本やわ。ゆっくり休まれへんで」


「彩乃て何や?」


「お腹が痛くて寝てるんや。ちょっかいかけたら殺すで」


「はいはい。こっちもしんどいから構うな」



 僕はカーテンを勢いよく閉めてルカを追い払った。



「ほならそろそろ教室戻るから。ヤバかったら早退した方がいいで」


「……うん」



 カーテンの向こうから今にも消えてしまいそうな彩乃の声が聞こえた。ルカの手前、普段通りに対応したが、心配で仕方ない。かなり調子が悪いように感じたが、この状況で僕が出来る事は何もない。



「近本、ほんまに彩乃にちょっかいかけなや」



 ルカが保健室から出ていった。ドアの閉め方も、大きな音を立てて品のない感じだ。



「……ごめんね。近本君……」



 全く悪くない彩乃が僕に謝ってきた。僕は必死に出来る事を考えたが思いつかない。



「いや、彩乃は悪くないやん。お腹痛いの大丈夫か?」


「……少し寝たら大丈夫」


「わかった。ゆっくり寝て」



 平静を装ったが、内心は張り裂けそうなほど心配だった。カーテン越しとはいえ、久々に彩乃と話しをした。この間、ファミレスでご飯を食べた時以来か──。



「……んっん…ごっごめん、近本君」



 白い天井を見ながら彩乃とファミレスデートの事を思い出していたら、ただ事ではないトーンで僕に話しかけてきた。



「どっどうした?」


「おっお腹痛い……」


「カーテン開けるぞ」


「……うん」



 僕は勢いよくカーテンを開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ