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平成初期型!!  作者: 稲田心楽
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11ぺージ目

 

「お兄さん達、カッコいいね」



 僕と江戸やんは彼女達に手を振った。



「江戸やん、東京の女は積極的やな」


「近ちゃん、俺1番右で」


「マジか。じゃあ、真ん中で」



 僕等は彼女達の前まで行き、軽薄なトークを繰り広げた。話しを聞くと、まだ高校生で同い年らしい。何処に住んでいるのと聞かれたので、正直に大阪と答えたら爆笑された。



「ほんとに? 何で渋谷にいんの?」



 本当の理由を言おうか迷ったが、江戸やんの名誉の為にやめた。



「女に振られてさ」



 江戸やんは完全な嘘泣きで彼女達に事実をぶちまけていた。



「可愛そう。私が慰めてあげる」



 1番右端の茶髪ロングちゃんは完全に落ちていた。あんな嘘泣きで目がハートになる女って一体───。



「実は僕も振られました。つい先日」


「うそっ! 君達が振られる事なんてあるの?」



 僕は真ん中に座っている茶髪ショートちゃんの横に割り込み、彼女の肩にもたれた。



「よしよし。私が慰めてあげるよ」



 ショートちゃんは、散髪したばかりの僕の頭を撫でた。お返しに、割とふくよかな胸を触るフリをした。



「触っていいよ」


「ええんかいっ!」



 僕は結構強めに突っ込んだ。



「すごいっ! 本場の突っ込み!」


「だろ? 本場のツッコミは一味ちがうんだよ」



 先程まで空を見上げて泣いていた男には見えなかった。というか、吹っ切る為に彼なりに努力をしているのだろう。あるいは、マジでその腰に手を回している女を持ち帰るつもりなのか──。持ち帰ると言っても、彼もまた我々同様ベタベタの大阪ではあるが。



「君は、関東弁だけど何で?」


「大阪に転校したんだよ。遠距離の彼女に会いに来たら他の男といたんだ。今朝の話しな」


「マジだったんだ。それは本当にかわいそう」



 何故か、彩乃の顔が浮かんだ。横にいるこの子が、彩乃だったら最高なのにと思った。彼女には失礼な話しだが、彩乃だったらこんなに気安くは出来ない。そう思えば思うほど、彩乃に会いたくなった。



「どうしたの?」


「いや、彼とおんなじさ。男の車から出てくる彼女を目撃してさ。チンチラポッポさ」


「チンチラポッポて何?」


「チンチラポッポは、“死亡”って意味さ」


「面白すぎっ!」



 東京娘は爆笑していた。江戸やんはどうだか分からないが、僕は完全にレプ、リー君、ジョセフの事を忘れていた。



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