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「お兄さん達、カッコいいね」
僕と江戸やんは彼女達に手を振った。
「江戸やん、東京の女は積極的やな」
「近ちゃん、俺1番右で」
「マジか。じゃあ、真ん中で」
僕等は彼女達の前まで行き、軽薄なトークを繰り広げた。話しを聞くと、まだ高校生で同い年らしい。何処に住んでいるのと聞かれたので、正直に大阪と答えたら爆笑された。
「ほんとに? 何で渋谷にいんの?」
本当の理由を言おうか迷ったが、江戸やんの名誉の為にやめた。
「女に振られてさ」
江戸やんは完全な嘘泣きで彼女達に事実をぶちまけていた。
「可愛そう。私が慰めてあげる」
1番右端の茶髪ロングちゃんは完全に落ちていた。あんな嘘泣きで目がハートになる女って一体───。
「実は僕も振られました。つい先日」
「うそっ! 君達が振られる事なんてあるの?」
僕は真ん中に座っている茶髪ショートちゃんの横に割り込み、彼女の肩にもたれた。
「よしよし。私が慰めてあげるよ」
ショートちゃんは、散髪したばかりの僕の頭を撫でた。お返しに、割とふくよかな胸を触るフリをした。
「触っていいよ」
「ええんかいっ!」
僕は結構強めに突っ込んだ。
「すごいっ! 本場の突っ込み!」
「だろ? 本場のツッコミは一味ちがうんだよ」
先程まで空を見上げて泣いていた男には見えなかった。というか、吹っ切る為に彼なりに努力をしているのだろう。あるいは、マジでその腰に手を回している女を持ち帰るつもりなのか──。持ち帰ると言っても、彼もまた我々同様ベタベタの大阪ではあるが。
「君は、関東弁だけど何で?」
「大阪に転校したんだよ。遠距離の彼女に会いに来たら他の男といたんだ。今朝の話しな」
「マジだったんだ。それは本当にかわいそう」
何故か、彩乃の顔が浮かんだ。横にいるこの子が、彩乃だったら最高なのにと思った。彼女には失礼な話しだが、彩乃だったらこんなに気安くは出来ない。そう思えば思うほど、彩乃に会いたくなった。
「どうしたの?」
「いや、彼とおんなじさ。男の車から出てくる彼女を目撃してさ。チンチラポッポさ」
「チンチラポッポて何?」
「チンチラポッポは、“死亡”って意味さ」
「面白すぎっ!」
東京娘は爆笑していた。江戸やんはどうだか分からないが、僕は完全にレプ、リー君、ジョセフの事を忘れていた。