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彩乃は、僕にはもったいないぐらいの女だ。顔は可愛いし、スタイルは抜群、そして何より優しい。
「江戸やん、喋った事あるん?」
「いや、2日前にまた香水の匂いがキツイとあのグループに言われてさ。後ろで彼女が頭下げて謝ってくれてるのを見て、何でこんな良い子がこいつらと連んでるんだと思ってさ」
その話しを聞いて彩乃に無償に会いたくなった。だが、彼女は僕とは友達でいたいだけだ。深入りしたら、またとんでもない地獄が待ち構えていて、今度は立ち直れる自信はない。現在も完璧に立ち直っているとはいえないのに──。
「実はさ、友達になって欲しいって言われて」
「いいね。なんか、胸がキュンとするよ」
僕は今抱えている不安を江戸やんに言った。
「……確かにな。こっちが勝手に舞い上がってる可能性もあるよな」
何度も考えた。振られた直後に偶然会って、話しを聞いてくれて、それを好きだと勘違いしているだけなんじゃないかと。実際、振られたその日に喋った事もないクラスメイトの女子に、泣きつくように話す自分もどうかと思うが、もし、他の女でも同じようにしていたんじゃないかと。彼女を好きな気持ちは、勘違いであるという理由を全力で探しては、それを否定するループにどっぷりと浸かっていた。
「俺は当分女はいいや」
「どんなに気にいっても?」
「そうだな。適当に遊んでるのが気楽だろ?」
「そうやな。いらん事悩まんでいいしな」
「そうそう。折角、気の合う仲間が4人も出来たんだ。野郎ライフを楽しむよ」
5人組のおかげで息を吸っていられる。1人でも欠けたら駄目なグループになっていた。知り合ってまだ3か月ぐらいなのに、ずっと前から仲間のような気がする。
「江戸やん、今思いついたんやけど」
「また何か面白い事か?」
「ほら、2人してかなりのロン毛やん?」
「近ちゃんも伸びたよね」
江戸やんは黒髪が肩にかかるぐらいのロン毛で、僕は茶色で、耳が全て隠れるぐらいの長さ。今流行りのスタイルでカッコいいけど、この際バッサリと切ってサッパリしようと江戸やんに言った。
「断髪式的な?」
「失恋した女子的やな」
「それな」