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東京の空は大阪とさほど変わらなかった。この間りーくんに会った駅は、とても大阪とは思えないほど遠い街に感じた。仮に一人で東京に来ていたら、3秒で飲まれていただろうが──。
僕は買ったタバコに火を付けて、江戸やんが出てくるのを待っていた。
『江戸やんもそうだろうか』
僕は一人で彼女の家の前まで行き、一人であの残酷な光景を目にした。世界中の誰よりも孤独なんじゃないかと思うほど寂しかった。誰とも会いたくない、誰とも話したくないと思う時はあるけど、あの時は誰でもいいから傍にいて欲しかった。横に誰かがいるだけで、多少は救われただろうと。
僕は江戸やんの孤独を和らげる存在になれるだろうか。経験しているだけに、なんとか彼の力になりたいと思っていた。
汗をかいたアイスココアを開けて半分ほど飲んだ。口の中がねちゃねちゃと気持ち悪かったが、僕の中では、タバコとの相性は最高だった。あっという間にそれを飲み干し、タバコも吸い終わったが、江戸やんは、まだコンビニの中にいる。
痺れを切らしてもう一度店内に入ろうとしたら、エロ本コーナーにいた大学生ぐらいの男が出てきた。僕は彼の持つビニール袋に目がいった。エロ本を買ったのかが気になったからだ。おそらく、少しでも別のどうでもいい事に気を紛らわせないと、この緊張感に耐えられそうになかった。
僕はもう一度店内を見た。江戸やんはレジで支払いをしているようだった。とりあえず、飲み干したアイスココアの缶が邪魔で、自動ドアの横にある空き缶入れに投げ入れたが入らなかった。
『横着したらあかんな』
僕は転がっていった空き缶を拾いに行った。
『えっ……』
さっきの大学生が、白いミニスカートの女の頭を撫でていた。とても綺麗な女だ。その女が、江戸やんの彼女である事にすぐ気づいた。何度か写真を見せてもらったから覚えていた。写真よりも大人びて見えるが、間違いなく江戸やんの彼女だ。僕は慌てて空き缶を捨て、コンビニの中に入った。
「おっと、どしたの? 何か買い忘れ?」
「えっ江戸やん! まっまずいって!」
「何が?」
外に出ようとする江戸やんを引き留めて、今見た事を話した。