表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平成初期型!!  作者: 稲田心楽
54/121

4ページ目

 

『ちょっと汗臭くない?』


 彼女の誕生日プレゼントに指輪を買う為、ガテン系の日雇いバイトをしていたらしい。バイト終わりに、今すぐ会いたいと言われ、飛んで行ったら開口一番にそう言われたそうだ。それ以来、自分の匂いに病的なほど敏感になり、香水等でカモフラージュするようになったと江戸やんは言っていた。別に悪気はなかったと思うが、その言葉が江戸やんを深く傷つけたのは事実だ。僕も、そんなつもりはなくても、どこかで誰かを傷つけているかもしれない──。



「彼女の家って、かなりここから近いって言ってたな」


「そう。1分ぐらい」


「マジか? もはやこの駅の構内に住んでるぐらいやないか」



 トイレを出て、東口の階段を降りる前に江戸やんは半開きの窓を全開にした。



「あれだよ」


 僕は窓から首を出した。


「あれって、あの茶色の建物?」


「うん。1分じゃね?」


「近すぎて怖い」



 階段を降りて、2つしかない改札を出た目の前のマンションを見上げた。一階はコンビニになっていて、古くもなく、新しくもない、ごくごく普通の建物だ。これだけ近いと終電や始発の音がうるさそうで、逆に住みにくそうに思える。



「何階に住んでるん?」


「2階」



 江戸やんは左手の高級そうな腕時計を見ていた。僕が付けていると、お父さんのを黙って持ってきたみたいになりそうだが、彼のその仕草は本当にカッコ良くて様になっていた。



「近ちゃん、コンビニでパンでも買わない?」


「腹減ったしな。タバコも買うわ」



 僕等は大阪にも沢山ある某コンビニに入った。店内は、大学生ぐらいのチャラチャラした客が、エロ本コーナーで立ち読みしていた。僕はそれを横目で見ながら冷蔵庫を開けた。



「江戸やん、ブラックか?」


「うん」



 すぐ横にあるトイレの鏡で、江戸やんは身だしなみをチェックしていた。どんだけ鏡見るんだと突っ込もうと思ったが、僕が彼なら一日中見ているであろう。



 僕は、ブラックの缶コーヒーと、アイスココアを取り出してレジに向かった。一瞬、エロ本コーナーの彼と目が合ったが、そのまま会計を済ませて外に出た。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ