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平成初期型!!  作者: 稲田心楽
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3ページ目

 

 朝の8時に江戸やんの地元に到着した。リーくんの車を江戸やんのお爺ちゃん家に預けて、僕等は2手に分かれた。どんな結末であろうと夕方の5時に渋谷で集合する事になった。先は読めてはいるが、男と女の事、最後まで何が起こるか分からない。




「とりあえずトイレ行かね?」


「確かに。髪型を整えたいしな」



 池袋駅から乗り換えて、2つ目の駅で降りた。池袋は流石に都会だなと思ったが、この駅は地元の駅とさほど変わらない感じだった。



「この辺は、我々の住む街と変わらないな」


「そうだな。東京でも割とローカルなエリアだと思う」



 駅のトイレも結構年季が入っているように見えた。所々タイルが剥がれていたり、壁に書かれたベタな落書き、手洗い鏡の曇り度合い等、僕がイメージしていたものとはちょっと違う気がした。



「近ちゃん、今更だけど緊張してきたよ」


「そらそうやろう。平常心でおれるかいな。こっちは謎の緊張感に包まれとるし」


「謎のとか面白すぎる」



 2つある曇った鏡で髪型を整えていた──江戸やんが久々に吹き出して笑っていた。僕はテレビドラマだったか何だったかは忘れたけど、心に残っていた台詞を思い出した。



『汚れた窓から綺麗な山々を見ても、汚れて見えるものだよ』



 トイレの鏡に映っている僕等の姿はまさにそれだと感じた。だが、恋は、“右の物を左に移す”ような簡単な事ではない。紐解けば単純なのかも知れないが、絡まった糸は、手繰り寄せれば寄せるほど硬く解けなくなってしまうものだ。



「近ちゃん、使う?」


 江戸やんは、ビンテージのジーンズのポケットからコロンを取り出した。


「いる!」



 薄紫の小瓶を受け取り、遠慮なく首筋にかけまくってしまった。江戸やんも、まるで頭からシャワーを浴びるかのようにふりかけていた。



 以前に、江戸やんから相談を受けた事があった。1日に使う香水やコロンの量についてだ。僕も身だしなみ程度に薄く香水をつけていたが、彼は出会った頃から凄まじかった。何故そんなに香水やコロンを使うのか聞こうとしたら、江戸やんから理由を教えてくれた。原因は彼女の何気ない一言だったらしい。





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