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「誰っすか?」
太すぎる金ネックレスの彼がリーくんに言った。敬語という事は歳下なのか。いや、それはあり得ない。どう見ても30歳手前である。体格も小太りのお父さんみたいだ。
「誰もくそもあるかいっ! 学校の連れのリーダーや」
「いや、リーダー補佐やから。リーダーはレプ」
「補佐とかいらんやろ!」
関わってはいけない3人衆が腹を抱えて笑っている。普通の会話を展開しているだけなのに、何故そんなにウケているのか謎だった。
「リーくん、その素敵な方々は?」
「舎弟」
「いや、お父さん混ざってますやん」
「こいつか? こいつは15歳や」
リーくんはお父さんの坊主頭を撫でながら言った。15歳という事は中3か高1という事になる。リーくんの冗談かと思ったが、おそらく本当だろう。
お父さんはリーくんにヘッドロックをされている。完全に舎弟だ。他の2人はそれを直立不動で見ていた。僕は、改めてリーくんの凄さというか、本物の暴走族の頭なんだと思った。そして、何故か誇らしく感じた。
「お前ら、近ちゃんにアイスクリーム買ってこい。2分やぞ」
「はっはい!」
彼らは改造バイクにまたがり、猛ダッシュで走り出した。
「リーくん、マジでカッコいい!」
「そうか? 世間の爪弾きもんやがな」
「そう思ってたけど。でも、カッコいい! ていうか、凄いよ!」
どんな世界でも1番になった奴を僕は無条件でリスペクトしている。自分は、一生そんな風になる事などないと思っているからだ。まだまだ人生これからだけれど、レプや、リーくんのような求心力は僕にはない。自分にないものを持っている彼等が、羨ましく、ちょっぴり妬ましかった。
「ていうか、マジでこんなとこで何してんねん?」
僕はリーくんに正直に話した。なんだかとても聞いてもらいたくなったからだ。
「高橋て、結構人気ある奴やんけ。背の高い奴やろ?」
「うん。友達になって欲しいて言われた」
「どういう事やねん。全くそんな空気なかったぞ」
「藤川にバレないようにって言われたからな」
「……。あいつな。もうちょっとマシな奴やったんやけど。色々あってな」