食堂合コン
自身の恋に終止符を打って、一週間が経った。女に振られようが、どうなろうが、明日はやってくる。普通に学校もあるし、何も変わりはしない。僕の中の小さな変化も、たった一週間では劇的にどうこうなるわけではなかった。彩乃が言っていた“日にち薬”に我が身を預けて、日々を楽しく過ごそうと思っている。
「近ちゃんはん、覚えてはりまっか?」
3限目の休み時間にたてが僕の席に来た。
「何かね。ロバート」
「ロバートて。毎回、飽きまへんな。近ちゃんはん。昨日、言いましたやん」
「忘れた。マジで」
「あんさん、ほんまに忘れてはるもんね。いやいや、合コンですやん!」
「合コン? 誰と?」
「ダメだこりゃ。わてと、リーくんとあんさんですわ」
「何処で?」
「とにかく、約束通り昼休みの食堂で」
ロバートの話しによると、この間のリーチの店で働いていた一個下の女子と、食堂で合コンをする事になっていた。リーくんは歳下が好きだがら参加するらしい。レプは逆で、歳上にしか興味ないから不参加。江戸やんはというと……。
僕は江戸やんの席に行った。運良く起きていたが、完全に顔は死んでいた。
「江戸やん、ご機嫌いかが?」
「近ちゃん、マジヤバイ。顔死んでね?」
「死んでる。復活の呪文も効かないぐらい」
「いいな。近ちゃんは前に進んでるしさ。置いてけぼりかよ」
「白黒はっきりしたらさ、ちょっとだけ楽。選択肢が前に進もうしかないから」
「羨ましい。助けてくれよ、近ちゃん」
江戸やんは、黒い長髪を茶色のゴムで束ねていた。それはそれで、めちゃくちゃカッコ良い。まさか、女の事で悩んでいるとはクラスの女子どもは絶対に信じないであろう。
「今度、創立記念日で2連休やろ?」
「学校のがいいよ。家だとマジ疲れる。鳴らない電話を待ってしまうし」
江戸やんは歌の歌詞に出てきそうな事を言った。確かにそうだ。よく電話の前で睨めっこしていた事を思い出した。
「リーくん免許取ったやん?」
「ワインレッドの高級車だろ。カッコ良かった」
「みんなでどっか行こうって言ってたからさ、東京に連れて行ってもらうのはどうかな?」
「遠くね?」
「連れて行ってもらおうぜ。頼んでみるから。江戸やん、女と話しした方が絶対いいよ」