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「彩乃、ありがとう。なんかね、ずっとモヤモヤしてたのがちょっと消えたわ」
「……。でも、納得はいかないでしょ?」
「性格的に白黒はっきりさせたいタイプなんやけど、世の中そんな簡単やないな」
彩乃の言うように納得などいかない。おそらくどんな答えであっても。だが、シンプルに前に進みたいのだ。誰の為でもない、これからの自分の為に──。
「彩乃の話しも詳しく聞きたいな」
「私? 私はもう乗り越えたから。それより凄い嫌な事があるねん」
「何? 何でも相談乗るで」
彩乃はストローが入っていた紙を丸めながら言った。
「今のグループがめっちゃストレスやねん」
「えっ? いつも一緒にいてるのに?」
話しによると、幼なじみのルカが高飛車安奈と仲良くなり、仕方なく3人で連むようになったようだ。
「安奈とは合わないって事?」
「あまり他人の悪口言う人とは一緒にいたくないねん。なんか疲れるしね」
「わかる気がする。高2の時そうやったわ。あまり合わない連れの中で愛想笑いばっかりやった」
「近本君も? そうそう! 安奈が行きたい言うたら何処にでもついて行かなあかんみたいな」
どうりで毛色が違うと思った。ルカは見た目的にチャラチャラしていて、いかにも安奈の子分ですみたいな感じだが、彩乃はどちらかと言うと孤高のイメージだ。
「あのグループでは、彩乃はちょっと違うよね。品があるというか」
「めっちゃ褒めてくれるね。近本君も群を抜いて男前やけど」
「いやいや、江戸やんには敵いません。あいつ、そのままデビュー出来るやん」
「そうかな。私は近本派かな。」
「派閥とかあるんや。彩乃はバスケット部のエースみたいな感じやな」
「あるよ。大体、近本君か梅野君やな。バスケットは中学までやっててん。右膝を怪我して辞めたけど。何故か、女子にはモテてた」
彩乃曰く、大きく近本派か、梅野派に分かれているらしい。一瞬、梅野って誰か分からなかったが、話しの流れ的に江戸やんの事だろうと思った。未だにメンバーの本名が直ぐに出てこない。
「何か、激励会みたいになってるな」
「ほんまに。近本君、お願いが一つあるねん」
「何?」
「学校で友達いてないからなってくれる?」
「いいけど、安奈がうるさいやろ」
「分からんように友達なって。安奈また怒るから」
「分かった! 今日から友達やな!」