表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平成初期型!!  作者: 稲田心楽
34/121

2ページ目

 

「お待たせ!」


 駐輪スペースの奥から高橋彩乃が出てきた。スキニータイプのジーンズに、薄手の黒のロングTシャツ、盛り上がっている胸に“ROCK TAWN”と黄色でプリントされている。



「高橋彩乃さん。お疲れ様」


「お疲れ様。何でフルネーム?」


「いや、何て呼んだらいいかわからんから」


「彩乃でいいけど……」


「それじゃ、彩乃で」


「軽っ。近本君、ご飯食べた? こんな時間だから食べたかな」


「……。昼にパン食べてから食べてない」


「よかった! 夜ご飯付き合って」



 そういうと、彼女はサイズの大きな銀色のチャリにまたがった。



 スキニータイプのジーンズのせいか、お尻が強調されていてサドル付近から目が離せなかった。



「どうしたん? 24時間でやってるところって、ファミレスぐらいかな」


「いっいや、なんでもない。ファミレスか、牛丼ぐらい?」



 ついさっき、失恋したばかりなのに、違う女のケツを見ている自分が残念でならなかった。ここ最近は、興味すら湧かなかったから。



「ファミレス行こう! 牛丼やったら食べたらすぐに出なあかんし」


「わかった! この辺りの土地勘まるでないから、道案内よろしく」


「そうなん? さっき、めっちゃびっくりしたんやから」


「声を掛けられるまで気づかんかった」



 高橋彩乃と並んでチャリを漕いでいる──夜風にほどけた茶色の髪が、やけに色っぽく見えた。



「こっちには用事で?」


「……」



 何て答えればいいかわからなかった。女にコテンパンに振られて、街を徘徊していたなんて普通ならカッコ悪くて言えないが、何故だかありのままを高橋彩乃に話していた。



「……。辛いね。気持ちわかるよ……」


「……。ありがとう」



 思わず、“ありがとう”と言ってしまった。悲しみを共有してくれた気がしたからだ。でも、彼女の目は何処か寂しそうで、まるで、遠い日に見た線香花火のようだった。



「私も、それに近い事が3か月前にあって……」


「3か月前って、春休みぐらい?」


「……。そう。振られた……」


「マジか……。一緒やん」


「あの信号曲がったらファミレスあるよ。続きはご飯食べながらでも」


「まさに、失恋レストランちゃいますか」


「近本君、ほんま面白い」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ